「不測の事態」とエゴ・レジリエンス

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

「不測の事態」という言葉は、日常生活やビジネスシーンでもよく使われる言葉の1つです。新型コロナウイルスの世界的な流行は、不測の事態という「変化への対応力」を浮き彫りにしたといえるでしょう。この「変化への対応力」の一つがエゴ・レジリエンス(エゴレジ)です。エゴレジは、状況に応じて柔軟な調整、選択ができ、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。そこで今回は、コロナ禍で実施したエゴレジ研究所の調査結果の一部をご紹介します。

働く女性のコロナ禍での影響調査

先に速報(Withコロナのセルフ・ケア「エゴ・レジエンス」2021.12)でご紹介したように、エゴレジ研では「働く女性のコロナ禍での影響」を調査しました。

調査時期:約半年ぶりに19都道府県への緊急事態宣言と8県への蔓延防止等重点措置が全面解除されることが決定した2021年9月27~29日(Web調査)
調査地域:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
調査対象:30~59歳の有子共働き(フルタイマー)女性 562名

調査の前提:
エゴ・レジリエンス(エゴレジ)
エゴレジの力を提唱したブロック先生は、エゴレジの力を
「環境の変化や不測の事態への対処能力、その状況で求められることと行動の可能性とのマッチング能力」としています。その力が内外のストレスにさらされたときに、自我egoを柔軟に調整しながら、心のバランスをとって元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。
ですから新型コロナウイルス感染症の流行の中でも、

  • 変化に応じて自分の考え方や思考を調整できる
  • 変化に対する自分のポジティブな反応とネガティブな反応をうまく処理できる
  • 変化に応じて自分の行動を調整できる

といった変化への適応に役立っていると考えられます。

災害自己効力感
災害自己効力感を測定する尺度を開発された関西大学社会安全学部の元吉忠寛先生は、「災害自己効力感とは、災害の発生時に、どの程度適切な行動を取ることができるか、また災害を生き抜くことができると思うかということに対する自信のことである」と定義されています。

自己対応力
コロナ禍のような緊急事態においても、落ち着いて行動できる
コロナ禍の混乱の中でも、比較的冷静でいられるうまく対応できる
コロナ禍の混乱の中でも、いろいろなことにうまく対応することができる
コロナ禍に遭っても、なんとか生きていく自信がある
コロナ禍が起きたときには、さまざまなことに対して柔軟に対応できる
コロナ禍で苦しみや悲劇に直面しても、それを乗り越えることができる
対資源活用力
コロナ禍に、頼りにすることができる知り合いが多い
コロナ禍には、近所の人を頼りにすることができる
コロナ禍には、自分の周りの人々と助け合うことができる
コロナ禍で困ったことがあれば、知り合いに助けてもらえる
感染して困ったことがあるときには、適切な助けを求めることができる

元吉先生が2021年3月に公表された「新型コロナウイルス感染症による人々への心理的影響」という論文では、
災害自己効力感の高い人が、心理的ストレスの抑うつ・不安、不機嫌・怒り、無気力が低く、特にそのような影響は女性において明確に確認でき、さらに
自己効力感の高い人がコーピングとして肯定的再評価をしており、コロナ禍という困難な状況の中でも、ポジティブに考える、よい部分がないかを考えるといった積極的なコーピングを取ろうとしていることが明らかになっています。
これらのことから、災害自己効力感は、新型コロナウイルス感染症の流行の中で、ポジティブな役割を果たしていた可能性が示されています。

そこで今回エゴレジ研の調査では、働く女性のコロナ禍でのエゴレジと災害自己効力感、不安と抑うつ、精神的健康度を測定しました。以下がその結果です。

コロナ禍のエゴレジと災害自己効力感

この間の働く女性の「エゴレジと災害効力感の関係」を調べた結果、災害自己効力感「自己対応力」「対資源活用力」は、エゴレジの高い群がエゴレジの低い群より統計的に有意に高得点であることがわかりました。

コロナ禍という不測の事態の中にあって、
自分自身の力によって、冷静に、柔軟に対応ができるという効力感が「自己対応能力」で、周囲の人を頼りにして事態を乗り越えることができるという効力感が「対人資源活用力」です。エゴレジの高い人ほど、自己対応力も対資源活用力も優れていると言えるようです。

日常から大きく変化した状況に適応するためには、高い状況対応力が求められます。災害自己効力感の「自己対応力」も「対資源活用力」も状況対応と強い関連があります。状況の適切な認識に基づいて臨機応変の処置ができるという点では、エゴレジと共通する傾向を示すものです。

エゴレジと不安・抑うつ、精神的健康度

感情障害のスクリーニングテストであるhospital anxiety and depression scale日本語版によって測定された「不安得点」「抑うつ得点」は、エゴレジの低い群の方がエゴレジの高い群より統計的に有意に不安も抑うつも高い得点であることがわかりました。
逆に、精神的健康度はエゴレジの高い群の方が低い群より健康的であるという結果が示されました。

コロナ禍に特有のストレス「環境の変化」「感染不安」「生活不安」に関しては、エゴレジの高群低群に差異は認められませんでした。

そのことから、同じようにコロナ禍でのストレスを認識していてもエゴレジの高い人の方が、臨床的な不安や抑うつを回避していることが読みとれます。

以上、エゴレジ研究所から、エゴレジ研究所から、働く女性のコロナ禍での影響を調査した結果の一部をご紹介しました。今回の調査から、コロナ禍のような「不測の事態」に対応する臨機応変な適応力、災害自己効力感とともにエゴレジの力が役に立っていたことが明らかになりました。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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