スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
近年、音楽とウェルビーイングの関連性を指摘する研究が増え続けています。音楽は私たちの生活に欠かせないもの。日常のBGMとして、または特別な思い出を彩る一曲として、多くの人が音楽に何らかの形で支えられています。音楽は単なる娯楽ではなく、脳科学や心理学の分野でその効果が次々と明らかになっています。そこで今回は、音楽の心理的効果についてのお話です。
音楽の心理的効果
音楽が心理に与える影響は科学的に証明されており、特にストレス軽減、感情のコントロール、生産性の向上といった側面で重要な役割を果たしています。
◆音楽とストレス軽減の関係
音楽を聴くことがストレスを和らげるという現象は、複数の研究で裏付けられています。特に、穏やかなテンポの音楽は副交感神経を活性化させ、身体がリラックスした状態へと導きます。これは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制されるためです。
たとえば、2009年の研究で、手術前の患者にリラクゼーション音楽を聴かせたところ、血圧と心拍数が低下し、不安感が減少したことが報告されています。このような生理的変化は、音楽が自律神経系に直接作用する力を示しています。現代社会においてストレス管理が必要不可欠であるため、通勤中や仕事の合間にリラックスできる音楽を取り入れるのは効果的です。
音楽のジャンルや種類も重要な要素です。一般的に、クラシック音楽や自然音を取り入れたアンビエント音楽はリラクゼーション効果が高いとされています。一方で、アップビートな音楽はストレスを軽減するというよりも、気分を前向きにする効果が強く、ストレスの影響を受けにくくする「バッファー」として作用します。
◆感情を整える音楽の力
音楽が感情を動かす力は非常に大きく、多くの人が経験として理解しているでしょう。悲しいときに穏やかな曲を聴いて気持ちが落ち着いたり、逆に明るい曲で元気をもらったりする経験は珍しくありません。この現象は、「リフレーム効果」と呼ばれています。音楽を通じて感情が新たな視点から捉えられることで、より前向きな気持ちになることができるのです。
たとえば、失恋後にバラード曲を聴いて涙を流すことで、感情を浄化する「カタルシス効果」が得られます。この現象は音楽療法の場でも活用されており、感情の抑圧を解放する手段としての音楽が注目されています。また、マイナーコードの音楽が「感傷的な気持ち」を引き起こしながらも、心を静かに整えてくれるのもこの効果の一例です。
一方で、テンポの速い音楽やメジャーコードを多用した曲は、喜びや活力を促進します。これは特に、運動中や何かを達成したいときに効果的です。気持ちを高めたいときには、ポップスやロックなどのアップテンポな曲を選ぶと良いでしょう。
◆音楽が集中力と生産性を高める理由
音楽はまた、私たちの集中力や生産性に直接的な影響を及ぼします。特に一定のテンポ(BPM:ビート・パー・ミニット)を持つ音楽は、脳波を同期させる働きがあるため、作業に没頭しやすくなります。
例えば、120BPM程度のテンポを持つインストゥルメンタル音楽は、注意力を高めるのに適しています。一方で、あまりに激しい音楽や歌詞のある曲は注意を分散させる可能性があるため、注意深い選曲が求められます。特に、コーディングやライティングといった創造的な作業では、バロック音楽のような均一なリズムを持つ曲が効果的とされています。
学習や勉強中に音楽を聴く場合、背景音として機能する音楽が効果を発揮します。ホワイトノイズや環境音は特におすすめです。これにより、外部の雑音が遮断され、心が静まるため、タスクに集中しやすくなるのです。
◆心理的効果を日常に活用する方法
音楽が持つ心理的効果を最大限に活用するためには、適切な選曲が重要です。音楽ストリーミングサービスには、気分やシチュエーションに合わせたプレイリストが豊富に用意されています。「リラックス」「モチベーションアップ」「集中」といったテーマ別のプレイリストを活用すれば、自分に合った音楽が見つけやすくなります。
また、音楽を聴く時間帯も工夫すると良いでしょう。朝のスタート時には、テンポの良い音楽でポジティブな気持ちを引き出し、夜にはスローテンポな曲でリラックスするような習慣をつけると効果的です。音楽を生活の一部に取り入れることで、その恩恵をより実感できるようになります。
運動と同レベルの健康効果
ニューサウスウェールズ大学(UNSW・豪)ほかの新たな研究により、音楽を聴いたり、演奏したり、歌うことが、メンタルヘルスにプラスの作用を与えることが示されました。
その効果はエクササイズなどで身体を動かして感じる爽快感とほぼ同じであったとのことです。研究の詳細は、2022年3月22日付で医学雑誌『JAMA Network Open』に掲載されました。
研究チームは、音楽が「健康関連クオリティ・オブ・ライフ (HRQoL)」に与える影響を調査した、26の先行研究(のべ779人を対象としている)のメタ分析を実施。
それを「非薬品的・医学的介入(エクササイズなどの運動)」の健康効果を調べたほかの研究と比較検討しました。
その結果、音楽がメンタルヘルスに与える効果は、運動や減量プログラムに参加する人々に見られるのと、ほぼ同じレベルであることが判明したのです。
音楽の選び方
音楽を選ぶ際、まず重要なのは「自分の目的や気分を明確にすること」です。
◆リラックスしたいとき
リラックスを目的とする場合、テンポがゆっくりで穏やかな音楽が最適です。クラシック音楽や自然音楽、アンビエントミュージック(環境音楽)は、心拍数や血圧を低下させ、副交感神経を活性化させる効果があります。たとえば、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」や、自然の水音や鳥のさえずりを取り入れた音楽は、ストレスを和らげるのに役立ちます。
◆活力を得たいとき
元気を出したいときや気分を盛り上げたいときには、テンポの速いポップスやロック、ダンスミュージックが効果的です。アップテンポな曲は、脳内でドーパミンの分泌を促進し、やる気を高める効果があります。たとえば、フィットネス中にはEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)やエネルギッシュなロックを聴くことで、パフォーマンスが向上することが知られています。
◆集中力を高めたいとき
集中力や作業効率を向上させるには、歌詞のないインストゥルメンタル音楽が適しています。歌詞のある音楽は、特に言語を扱うタスクにおいて注意を分散させることがあるため、控えたほうが良いでしょう。ピアノ曲や弦楽器を中心としたクラシック音楽、あるいはエレクトロニカ(例:Lo-fiヒップホップ)は、脳波を一定のリズムに整え、作業への集中をサポートします。
◆感情を安定させたいとき
感情の安定を求める場合、特定の感情に寄り添う音楽を選ぶことが効果的です。悲しいときにバラードを聴いて涙を流すことで気持ちが整理される「カタルシス効果」や、ポジティブなメロディで気分を切り替える「リフレーム効果」を活用することができます。たとえば、映画音楽やシンフォニーは、感情を豊かに揺さぶる力を持つため、精神的な整理を助けます。
以上、エゴレジ研究所から音楽の心理的効果についてご紹介しました。音楽は、メンタルヘルスを改善するための手軽で効果的なツールで、意外と短時間でも効果を得ることができます。研究によると、1日15~30分の音楽鑑賞で、ストレス軽減や集中力向上といった心理的効果を得られるとされています。これは、音楽が聴覚を通じて脳に働きかける速さに起因します。ストリーミングサービスやプレイリストを活用し、日常生活に音楽を取り入れてみましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
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代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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