代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
桜の開花やプロ野球の開幕といった春の訪れを感じるニュースが聞かれる季節になりました。柔らかな新芽が一斉に芽吹き出す3月から4月にかけては、「木の芽時」と呼ばれます。実はこの「木の芽時」は、昔からメンタル状態が悪化する人が増える要注意時期として有名です。日本の春は、気温や天候の変化に加え職場環境や人間関係など様々な変化が一気に起こる時季です。肉体的にも精神的にも変化になじもうとして、知らず知らずのうちに自律神経に負担がかかり心身の調子が崩れやすくなります。今回は、春のメンタル対策のお話です。
目次
春の不調と「自律神経」
春は「身体がだるい」「イライラする」「やる気が出ない」など心身の不調を感じる方が多いようです。自律神経の乱れが原因の場合は、症状が複数同時にあらわれることも多く、日によって症状に軽い・重いなどの違いもあります。これら症状は精神的なバランスを整える神経伝達物質であるセロトニンの低下が一因だと考えられています。自律神経の乱れには注意が必要です。
★こんな症状ありませんか?
生活リズムをつくる「朝の散歩」
自律神経の乱れの予防と対処法として「規則正しい生活をする」ということがよく言われます。生活にリズムをつくる一つの策として「朝の散歩」をおススメします。
朝の散歩は、精神科医が教える ストレスフリー超大全(ダイヤモンド社)の著者で精神科医の樺沢紫苑先生も推奨しておられる最強のモーニングルーティンです。
方法は簡単です。朝起きてから1時間以内に15~30分の散歩をするだけです。それだけで、セロトニンが活性化し、体内時計がリセットされ、「副交感神経」から「交感神経」への切り替えがうまくいき、自律神経が整えられるのです。
樺沢先生によれば、朝の散歩が効果的である科学的な理由は3つあります。
(1)セロトニンの活性化
セロトニンとは「ヤル気」に必要な様々な脳内ホルモンの働きを助ける脳内物質。
- 精神を安定させ興奮や不快感を鎮める
- 姿勢を保つ抗重力筋などの筋肉を刺激する
などの働きがあります。
セロトニンは、「朝日を浴びる」「リズム運動」「咀嚼」によって活性化します。朝の散歩は、「朝日を浴びる」「リズム運動」(ウォーキングなどの規則的なリズムを刻む運動)の 2つを兼ねているので、セロトニンを十分に活性化することができます。
(2)体内時計のリセット
人間には体内時計があり、平均24時間10分前後といいます。体内時計をリセットしないと、毎日10分ずつ寝つきの時間が遅くなり、昼夜逆転生活となってしまうのです。体内時計をもとに、睡眠、覚醒、体温、ホルモン、代謝、循環、細胞分裂などがコントロールされているので、体内時計がズレるとさまざまな病気の原因となります。
体内時計をリセットするには、太陽の光(2500ルクス以上)を5分浴びるのが効果的です。だからこそ、朝に外に出ることがいいのです。
(3)ビタミンDの生成
ビタミンDは食事から摂取もできますが、必要量の半分は自分で生成することができます。原料は「紫外線」です。皮膚に日光(紫外線)が当たると、ビタミンDが生成されます。この生成されたビタミンDには、腸管からのカルシウムの吸収を促進し、腎臓からのカルシウムの再吸収を促進し、血中カルシウム濃度を高める作用があります。カルシウムには神経の興奮を抑え、精神を安定させる働きやホルモンの分泌を調整する働きがあります。
15~30分の朝の散歩をすれば、1日に必要な量のビタミンDの生成が行われます。紫外線が気になる方も多いでしょうが、だからこそ日差しの強い昼ではなく、日光が比較的弱い朝がベストなのです。
ハードルを下げて習慣化しよう
朝の散歩をするといっても、そのために「早起きしなさい」ということはありません。「朝の調子が悪い人」「お疲れモードの人」「メンタル疾患の人」が無理して早起きをすると、逆に調子を崩す可能性があります。基本的な方法は「起床後1時間以内に、15~30分の散歩を行う」です。最初は、自分に無理のない時間に起きて、その時間から朝の散歩をすれば十分です。午前中(できれば10時まで)に行いましょう。雨の日でも効果があります。
毎日するのがベストですが、週1~2回でも、やっただけ効果があります。不定期でも、徐々に朝の目覚めがスッキリと改善していきます。
朝に時間の余裕がないという人は、家から駅まで一定の速さで歩く、少しだけ遠回りして買い物に行くなどするだけでもよいでしょう。
どうしても歩くのがしんどい場合、ベランダや庭に出て日向ぼっこをすることからはじめましょう。そこから、5分の散歩、10分の散歩、15分の散歩……と、少しずつハードルを上げていけばOKです。やればやっただけ効果が出ます。
意識せずにできる生活動線をつくろう
「光を浴びよう!」と意識しても、なかなか長続きはしません。大切なのは、何も意識しなくても脳に光が届く生活動線をつくることです。
目覚めたら、窓から1m以内に入るようにしましょう。窓から1m以内ならば、3,000ルクス程度の十分な光が得られます。窓際1m以内の場所で、新聞を読んだりスマホをチェックしたり。歯磨きやメイクなど、どんなことでもよいので、毎朝していることを、その場所で行うようにしてみましょう。目覚めた直後が最も効果的です。仕事に行く日は家を出る前に、外出する予定がない日でも、窓から1m以内に入って、1日をスタートさせましょう。
ただし、樺沢先生は「健康な人の場合は、室内でも日光の入る明るい部屋にいれば、ある程度体内時計はリセットされます。しかし、体調の悪い人、メンタル不調の人は室内では不十分ですので、起床後、1時間以内に屋外に出るべきです」と注意を促しています。
以上、エゴレジ研究所から春のメンタル対策「朝の散歩」についてご紹介しました。いかがでしたか?
朝の散歩ではウォーキングによって下半身に多い遅筋をよく動かします。遅筋は身体のバランスや動きをコントロールする多くの神経とつながっているため、歩くことにより脳は活性化されます。また、視界にとびこんでくる風景や、風、気温といった感触による刺激も脳を刺激し活性化させます。道々風景を見ながら歩けば気分転換にもなるでしょう。
また日の光を浴びるとセロトニンの分泌させる作用、カルシウムを体内に吸収させる作用があります。ビタミンDが活性化されるのに必要な日光照射時間は15~20分という研究結果も出ているので、日中イライラしたときちょっと外に出て日光浴をしながらひと息つくのもよいでしょう。
季節による心身への影響は避けられないので、日常にちょっとした工夫を取り入れ、春を気持ちよく過ごしましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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