スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
ある程度の年齢になると、若いころと比べて身体のいたるところに衰えを感じるようになってきます。加齢に伴う「老化」です。そして私たちの体内では「テロメア」なるものが、その老化のカギとなっているということが研究で明らかになっています。そこで今回は、老化予防とテロメアについてのお話です。
テロメアとテロメラーゼ
老化を制御する重要な因子のひとつが「テロメア」です。
生物の遺伝情報が収納されている染色体DNAの両端はテロメアと呼ばれ、染色体を保護する役割を担っています。その本体は「TTAGGG」という単位(塩基配列)の繰り返しです。細胞が分裂するたびにテロメアは少しずつ短くなります。これに伴って細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなます。これが細胞の老化。
細胞老化がおきると、細胞はそれ以上分裂することができなくなります。その結果、生体機能を正常な状態に維持することが困難になり、ヒトとしての老化が始まるのです。
細胞は分裂するたびにテロメアが1単位ずつ切り取られ、短くなっていきます。ですから細胞分裂の回数をカウントしている物質とも言えます。
細胞分裂の回数には限りがあるため、テロメアは「命の回数券」「細胞分裂の回数券」などとも呼ばれています。
テロメアの短縮は、がんや動脈硬化、心筋梗塞、認知症などの病気と関係があることが分かってきました。細胞に酸化ストレスや有害物質が作用するとテロメアが短くなり、こうした病気にかかりやすくなるのです。
一方、生物はテロメアを再生する働きも備えています。テロメラーゼという酵素が作用することで、テロメアが作り出され伸長します。皮膚や血管、血液など細胞の種類によって条件は異なりますが、細胞分裂による「引き算」とテロメラーゼの働きによる「足し算」でテロメアの長さが決まるようです。
ヒトの体細胞には残念ながらテロメラーゼ活性はありませんが、何らかの方法で活性を高めてやれば、細胞分裂の回数を多くしてヒトの寿命を延ばすことが期待されています。
このことは実験室レベルではすでに確認されていて、1997年にアメリカで行われた実験では、テロメラーゼを与えられた細胞が、老化したテロメアを修復・再生することが観察されました。
※出典:日本経済新聞夕刊2017年6月8日付
テロメラーゼは、胎児の発育時や幹細胞に発現しており、細胞の老化を回避する重要な役割を果たしています。このテロメラーゼの働きによって、私たちの体は細胞の老化を一部防いでいるのです。
しかし、その一方でテロメラーゼはがん細胞でも活性化しており、がん細胞が無限に分裂できる要因となっています。研究者たちはテロメラーゼをがん治療のターゲットとして研究しており、新しい治療法の開発に期待されています。
生活習慣とテロメアの関係
テロメア研究の業績で2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士らが、生活習慣とテロメアの関係についての研究成果をまとめた本「細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム」(2017,NHK出版;テロメアの自己診断テストや今日からできる実践プログラム付)を出版し、この分野への関心が高まりました。
ブラックバーン博士らが紹介しているのは
✔心理ストレスにさらされていないか
✔睡眠を十分にとっているか
✔適度な運動をしているか
✔健全な食事をとっているか
といったこととテロメアの状態についての研究成果で。
特に強調されているのは、ストレスとの関係。ストレスを除くのにマインドフルネスと呼ばれる瞑想が注目されていますが、この瞑想をしたグループは、テロメアが伸びたという研究結果が紹介されています。
睡眠に関しては、毎日5~6時間しか眠っていない高齢者のテロメアは短い傾向があり、7時間以上睡眠をとっている高齢者の場合は、中年の人と同じかそれ以上の長さだったとのこと。運動については、過去10年間、運動習慣のある人は、そうでない人と比べてテロメアが長かったと報告されています。
特に、心理的なストレスはテロメアを急速に短くしてしまう原因とアメリカの最新の研究によって報告されています。この研究では強いストレスを感じるタイプ、つまり悲観的な人のテロメアが短いことが分かりました(カルフォルニア大学・エリッサ・エベル教授)。
年代に関係なく悲観的であるほどテロメアが短いのです。
適度な運動や適切な食生活、良質な睡眠、ストレスをためないことなどはいずれも健康習慣として繰り返し推奨されてきたことです。結局は従来の健康に良いとされてきた生活習慣が、本当に老化を防いで健康寿命を長くするという科学的な裏付けが取れたといえるでしょう。
時間栄養学からみたテルメア
人が生きている(細胞分裂している)限り、テロメアの減少を止めることはできません。しかし、その減少を抑えることは可能です。
50歳前後の男女10人を集め、採血して白血球のテロメアを調べるという実験が行われました。テロメアの長い人では35歳相当で、短い人は83歳相当という結果が出ました。
つまりこれは、人によってもともとのテロメアの長さや、減り具合に差があるということです。
香川靖雄先生(女子栄養大学副学長/自治医科大学名誉教授/栄養科学研究所所長)は次のように話されています。(以下、香川先生)
朝食を食べずに過ごす影響は、若いうちはなかなか気づきにくいもの。すぐに太るわけでもないし、一気に血圧が上がるわけでもなく、自覚しづらいのですが、50代になってからその影響がはっきりと現れるようになり、気がつけば生活習慣病への道をまっしぐら、ということになりかねません。
「テロメア」は「時計遺伝子」とともに、時間栄養学の発展を支えているもう1つの時計です。ただし、「時計遺伝子」のように周期ごとに繰り返し刻む時計ではなく、やがて終わりがくる命の砂時計のようなもの。暴飲暴食、喫煙、肥満、不規則な生活をおくるたびに、命の回数券「テロメア」を無駄づかいしてしまう、と考えれば、おのずと改善したくなるのではないでしょうか。
「テロメア」にとって何が良くて、何がいけないか、注意点をまとめておきましょう。
「テロメア」に良い食べ物、悪い食べ物
「テロメア」を長持ちさせる栄養素として、葉酸、食物繊維、ビタミンEなどが挙げられます。特に葉酸は、遺伝子に直接必要なビタミンの1つです。これらがたくさん摂れるのは全粒穀物や野菜、果物、豆類など。毎日、意識して摂るようにしましょう。
一方、「テロメア」を縮めてしまう栄養素はリノール酸、飽和脂肪酸、脂肪分を調整していない全脂肪など。最近の研究では、加工度の高いジャンクフードを定期的に摂取することが、テロメアを縮める要因であることもわかっています。
睡眠不足、肥満、ストレスは大敵
睡眠不足は「テロメア」にとって大敵。1日およそ7時間、良質の睡眠がとれるよう心がけましょう。また、肥満も「テロメア」を短くする要因なので、適度な運動習慣を身につけることが大切です。そして、過剰なストレスは「テロメア」の短縮を加速させます。気分転換、リフレッシュの時間をとり、ストレスをため込まないよう心がけましょう。
以上、エゴレジ研究所から老化予防とテロメアについてご紹介しました。ストレスを感じているか、リラックスしているか、悲しんでいるか、幸せかにテロメアは反応し、それが脳の状態や気分、老化の速度などに影響をおよぼすということです。体に優しい生活スタイルへ改善していくことがテロメアの短小化を防ぎます。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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