スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
女性は男性よりも、食事によりメンタル面の影響を受けやすいことが、米ニューヨーク州立大学の新しい研究で明らかになったそうです。もしかすると、メンタル不調の原因には、日頃の食生活が関係しているかもしれません。そこで今回は、食生活とメンタルの関係についてのお話です。
食生活とメンタルの関係
◆ニューヨーク州立大学の研究
ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の健康・ウェルネス研究学部のリナ・バーダッチ助教授らは、食事内容と気分障害は関連があり、質の良い食事がメンタルヘルスを改善する可能性があるという研究を発表しました。
この研究は「食生活と精神的健康」に関する大規模な研究の一環として30歳以上の成人(男性329名、女性880名の計1,209名)を対象に行われました。
調査では、食品群と精神的健康に関連する部分を「フードムード調査」と呼び、脳の働きに影響を与えることが知られている食品群の1週間の摂取量を調べました。
これらの食品群には、全粒穀物、果物、葉物野菜、肉、豆類、ナッツ類、乳製品、魚、そして血糖値を急激に上昇させる高GI値の食品が含まれています。
また、朝食の頻度、運動の頻度、マルチビタミンや魚油のサプリメントを利用しているかどうか、ファーストフードの消費量、カフェインの摂取量などの生活習慣についても調査しました。
この調査での「運動」とは、20分以上の運動を意味しています。これは過去の研究で、1日20分の運動が精神的な幸福度を高めることがわかっているからです。
結果は、食事と運動の両方が参加者の精神的な幸福度に影響を与えており、特に女性の場合はその傾向が顕著でした。具体的には以下のとおりです。
✓女性では、ファーストフードの摂取が精神的苦痛と関連していた。 ✓カフェインと高脂肪食品は精神的苦痛と関連していたが、ファーストフードに比べると関連性は低かった。 ✓果物、色の濃い葉物野菜、魚を含む朝食を規則的に食べることは精神的苦痛を軽減し、精神的幸福度の向上につながった。 ✓運動は、ファーストフード、カフェイン、高脂肪食品が女性の精神的苦痛に与える悪影響を軽減し、健康的な食習慣が与えるプラスの影響を高めた。 |
こうした結果に対し、リナ・バーダッチ助教授は、
「健康的な食事、健康的な食生活、運動と精神的な幸福の間には、一般的な関係があることがわかった」と述べています。
また、このデータは、女性が男性よりも不健康な食事をしやすいことを示唆していると言います。
「ファーストフード、朝食抜き、カフェイン、血糖値を上げやすい食事は、いずれも成人女性の精神的苦痛と関連しています。不健康な食事パターンを続けていると、精神的苦痛のレベルは女性の方が男性よりも上昇することが分かりました。女性は男性よりも、不健康な食事の影響を受けやすいと考えられます」とリナ・バーダッチ助教授は解説されています。
さらに、「果物と色の濃い葉物野菜の摂取は、精神的な幸福感につながります。また、この研究から得られた追加情報として、運動は高GI食品とファーストフードによる精神的苦痛との負の関連性を大幅に減少させました」ということです。
キャベツやレタス、ケールなどの新鮮な葉物野菜を食べたり、果物を食べるといった健康的な食事スタイルが、女性のメンタルヘルスを向上するために役立つことが示されたと言えます。
さらに、ウォーキングなどの運動を習慣として行うことは、ファストフードや高GIの食品の食べ過ぎと精神的苦痛との負の連鎖を大幅に緩和することも示されました。
◆北米更年期障害学会(NAMS)の研究
北米更年期障害学会(NAMS)が 5,800人以上の女性を対象とした研究でも、閉経前の女性のメンタルヘルスは食事と関連が強いことが示されています。
この研究では、野菜、果物、全粒穀物、大豆類、豆類などの食品から食物繊維を十分に摂っている女性は、うつ病の頻度が少ないことが分かったそうです。
女性ホルモンであるエストロゲンは、腸内細菌叢からも影響を受けています。食物繊維を十分に摂り腸内細菌のバランスが良くなると、エストロゲンの分泌も改善する可能性が指摘されています。エストロゲンが減少している閉経後の女性では、こうした関連はみられなかったとのこと。脳と腸が身体にはりめぐらされたネットワークを通して相互に影響しているという「脳腸相関」は、閉経前の女性ではとくに重要である可能性が示されたと言えるでしょう。
食事の時間とメンタル不調
国内の調査では、食事を取るタイミングが不規則な人はメンタルヘルス状態が良くないという、食事のタイミングとメンタルヘルスの関連性を示唆する研究が報告されています。
この研究は、日本人労働者を対象に、ライオン株式会社がWebアンケートを行い、その結果を早稲田大学理工学術院の田原優先生らが解析したものです。
Webアンケートは2020年12月19~25日に、20~69歳の日本人労働者を対象に実施され、北海道から沖縄に居住する8,720人が回答し、うち適格条件を満たさない(年齢が20歳未満または70歳以上、無職、回答内容が不十分など)回答を除外し、4,490人を解析対象としています。詳細は「Nutrients」に2021年8月13日掲載されました。
データ解析の結果、食事時刻が不規則な人は、そうでない人に比較して
✓年齢が若く(45.36対48.06歳)、
✓夜間労働者の割合が高く(28.4対11.4%)、
✓主観的幸福感が低い(SWLSという35点満点のスコアで16.35対17.52点)
という点に違いが見られ、男女比やBMIには差がなかったようです。
また食事時刻が不規則な人は、
✓神経症傾向と正の相関(=不規則なほど神経症傾向が高くなる)
✓誠実性とは負の相関(=不規則なほど誠実性は低くくなる)があり、
✓身体活動の頻度や主観的健康感が低く、
✓睡眠障害のスコアは高く、
✓メンタルヘルス状態が不良
相関係数を比較すると、
主観的健康感の低さよりもメンタルヘルス状態が良くないことの方が、食事時刻の不規則性との相関が強かったようです。
食習慣との関連では、食事時刻が不規則な人は、噛む回数や野菜摂取量が少なく、食事に充てる時間が短く、朝食の欠食や外食頻度が高く、食後から睡眠までの時間が短く、塩辛い物をよく食べるといった傾向が明らかになりました。
さらに、食事時刻が不規則であることは、身体的な健康の悪化を介せず、直接的にメンタルヘルスの悪化につながる可能性が考えられたとのことです。
著者らは、「食事のタイミングが不規則なことは、主観的なメンタルヘルスが不良であることの良いマーカーであることが示唆される」と結論付けています。
以上、エゴレジ研究所から、食生活とメンタルの関係についてご紹介しました。食事と運動などのライフスタイル要素をそれぞれに合ったよいものにすることで、メンタル面の改善につながると研究グループは指摘しています。食事と運動は、女性のメンタル面の健康を守るうえでいちばんの予防策になる——食事の影響を受けやすい女性は一考の余地があるでしょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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