「しなやかな心」≠メンタルが強い

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

まじめで努力家な方ほど、ストレスやプレッシャーを抱え込みがちです。誰にも相談できずにいると、心の疲れが慢性化してしまいます。たとえそうでなくても、コロナ禍のような世の中の変化は誰にも否応なくやってきて、それに適応していく力がわたしたちには必要です。そういう適応する力「しなやかな心」は、厳しい世界を生き抜く力でもあるのです。今回は、誰もが内面に備えているエゴ・レジリエンスのキーワード「柔軟性」「しなやかさ」についてのお話です。

エゴ・レジリエンスと「しなやかな心」

エゴ・レジリエンス(エゴレジ)は、日々のストレスに直面してメゲたり落ち込んだりしたとき、自我egoを柔軟に調整しながら、心のバランスをとって元の元気な自分に戻ろうとする力です。

エゴレジ力を高めることは、状況に応じて、柔軟な調整ができる、柔軟な選択ができる力=「しなやかな心」を身につけていくことです。

エゴレジ研の代表である小野寺は、エゴレジを理解してもらうために、エゴレジを「エアコンの自動制御モード」に例えています。環境に応じて自分が最適だと感じる温度の自動制御モードのようなコントロール機能、調整機能がエゴレジなのです。それゆえ、エゴレジ力をつけることが「しなやかな心」をつくることになるのです。

「メンタルが強い」とか「メンタルが弱い」とかいいますが、それは「しなやかな心」とは同じではありません。『鋼のメンタル』といわれるように、少し前まではどんな逆境にあっても強いメンタルで跳ね返すという考え方が注目されていました。しかし、どんなに強い金属でも強い圧力をかけ続ければ折れてしまうように、人の心も強さだけで乗り越えようとすると、ある日突然ボキッと折れてしまうリスクがあります。

「しなやかな心」と同義に「折れない心」があります。米国防総省(通称:ペンタゴン)キャリアであるカイゾン・コーテ氏は、その著書の中で「折れない心」の定義を示しています。

『折れない心とは、『自分の弱点や弱みを素直に直視することでそれを受容すること、そしていかなる変化にも対応可能な柔軟性を持ち、たとえ困難に陥り失敗するようなことがあっても、そこからしなやかに回復できるタフさ』のことを意味する』(ペンタゴン式ハードワークでも折れない心のつくり方:KADOKAWA)。

ただし、タフな精神といっても、鋼鉄のごとく何があっても全く痛みさえ受けない、超人のような強靭な心をもつことではありません。むしろしなやかに「しなる」ことができ、どんなプレッシャーや負荷がかかっても、変化に柔軟に対応しながら、常に「自分自身」に戻ることができる「竹のような心」といったほうが正しいイメージだそうです。

竹が大きくしなっても元に戻るように「しなやかな心」とは、凹んでも落ち込んでも元に戻るイメージです。

「しなやかな心」のポイント

臨床心理士・吉田美智子さんは以下のように解説されています。

1.先入観を持たないこと
事前情報や周辺情報をうのみにすると物の見方・考え方が偏ってしまいがちです。そうした情報はワン‐オブ‐ゼム【one of them】。それだけで決めつけないで、そのとき、その場で得た情報や自分の感覚を臨機応変に働かせながら対応することが「しなやかさ」を高めます。

2.自分自身をオープンに保つこと
忙しいとついつい自分の予定に沿って、限られた資源(自分の思考)で対応してしまいがちです。想定外の意見やアイディアに対して、開かれた態度=聞く耳を持つことは、心の「しなやかさ」を高めてくれます。ちなみにその開かれた態度は想定外のものを無条件に受け入れるということではありません。あくまで聞く姿勢でいることです。

3.好奇心を持つこと
好奇心があると、楽しい気持ちで新しいこと、多様な価値を受け入れることができます。これはなんだろう、どうなっているんだろうと興味を持つことで、新しい知識や様々な状況・出会いがあり、それに対応していくことが「しなやかさ」を高めます。

4.失敗を怖がらないこと
失敗=ダメではなく、試行錯誤(次につながる学び)と考えると良いと思います。最初から失敗を恐れていては、好奇心を抱くことも活かすこともできませんし、自分をオープンな状態に保つことも難しくなります。

感情の老化予防と「しなやかさ」

加齢とともに「しなやかさ」は失われやすく、だんだんと意固地になりがちです。それは、感情の老化のせいにほかなりません。感情の老化、前頭葉の老化予防には「しなやかさ」が必要です。

和田 秀樹教授(国際医療福祉大学大学院)は、40代から始まる感情の老化の原因のひとつである前頭葉の老化を防ぐために、次のようなアドバイスをされています。

1.ルーティンを避ける
日常生活におけるルーティンをなるべく避けることです。たとえば仕事からの帰り道、会社から自宅までの道順を時々変えて、普段はあまり通らないルートをあえて選んで家まで帰ってみる。ランチもいつも決まった店に行くのではなく、話題のお店や行ったことのないお店を試したり、新規開店のお店にも挑戦してみる。自分で料理をする人なら、これまであまり扱ったことのない外国食材を使ったメニューに挑戦してみることなどもいいでしょう。

2.「決めつけ」型の思考から抜け出そう
具体的には、「目的Aを達成するにはBという方法しかない」「自分のこの考え方が絶対に正しい」といった「決めつけ」型の思考から抜け出し、世の中には自分が「正しい」と思っている方法や理論以外にも「いい方法」や「いい意見」が存在する可能性を常に意識する。そうした思考パターンを日常生活の基本にするのです。

たとえば、職場の若手社員などから出される意見に対しても、頭ごなしに否定するのではなく、「もしかしたら、彼らの言うことが“よりよい”ものである可能性もあるな」というくらいに受け止めてみるのです。

3.「あれもこれも思考」のすすめ
これはなにも、人の言うことを全面的に認めましょうという話ではありません。自分では「自分の意見が正しい」と思っていても、それが「100%正しい」と決めつけるのをやめよう、ということです。

相手にも何%か何十%かの正しさがあり、双方の正しさがせめぎ合う中で議論が成立しているんだ、という思考パターンを意識する。あるいは、どちらかが正しくてどちらかが間違っているのではなく、両者が正しい可能性があることを留保する。そして、1つの問いに対して複数の回答が用意できるようになる。私はこれを、「あれもこれも思考」と呼んでいますが、こうした姿勢は、前頭葉を老化させないためのいい習慣です。

常に心をニュートラルにとどめておくクセをつける、決めつけない、固くならない、そうして心を「しなやか」にしておけば折れることもなく、感情の老化も予防できます。

以上、エゴレジ研究所から、エゴ・レジリエンスのキーワード「柔軟性」「しなやかさ」についてご紹介しました。誰もが内面に備えている「エゴ・レジリエンス」。しなやかさを意識的に磨くことで、さらに高められるでしょう。様々なストレスにも「しなやかに」たわむ力を磨いてみませんか。心を「しなやか」にしておけば折れることもないのです。それは困難な時代を生き抜く力となるはずです。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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