冬こそ「セロトニン」対策!

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

冬になってから気持ちが落ち込みがち、なぜかやる気も起きない、という人はいませんか。寒い季節に気分が落ち込んだり、不安になったり、やる気が起こらなくなったりする気うつ症状には「ウィンター・ブルー(冬季うつ)」という名前がついています。ウィンター・ブルーは『季節性うつ病』のひとつで、寒くなり始める頃に発症し、3月頃になると自然と解消するというパターンを毎年繰り返すものです。ウィンター・ブルーは、日照時間の減少などによるセロトニンの分泌不足が関係しているといわれ、冬は健常人でもセロトニン分泌量が減ることがわかっています。そこで今回は、寒い冬のメンタルケアに大切なセロトニンについてのお話です。

季節によって変わるセロトニン分泌量

脳内の神経伝達物質であるセロトニンは、ほかの神経伝達物質のドーパミン(喜び、快楽に関係)や、ノルアドレナリン(恐れ、驚きに関係)などの情報をコントロールして、精神を安定させています。
若い人でもセロトニンが一時的に減ると、うつ症状が出ることがあります。意欲低下、イライラ、体中がどこかしら痛いなどと訴えるなど、さまざまな不調が現われるのです。

冬になるとセロトニンの分泌が減少しやすいことにはいくつかの理由があります。

1)日照時間が短い
日本では夏場に最も日照時間が長く、冬場の冬至付近が一年のうちで最も日照時間が短くなります。日照時間や日照量はセロトニンの増減には密接な関係があります。

セロトニン神経がセロトニンを活発に生合成する条件のひとつが、太陽光の刺激です。網膜から太陽光の刺激が脳に届くことで、セロトニン神経が活性化し、セロトニンの分泌を促進します。しかし、日照時間が短くなる冬場は、太陽光の刺激が夏場に比べて少なくなりやすいため、その分セロトニン神経の働きが鈍くなりやすく、セロトニンの生合成も減少してしまうのです。

2)活動量が落ちる
寒い冬場は、どうしても他の季節に比べると運動する機会が減少してしまうため、一日の活動量そのものが落ちやすくなります。
セロトニンは、呼吸や脈拍、目の瞬き、姿勢の維持、腸の活動など、日頃は無意識のうちに行っている、不随意運動を支えています。なかでも、呼吸や脈拍のように一定のリズムで繰り返す運動は、脳のセロトニン神経を活性化させる運動だということがわかっています。
普段何気なく行っている運動の中にも様々なリズム運動があり、こうした運動をすることがセロトニン神経を活性化するのに役立っているのですが、活動量が落ちる冬は、リズム運動を行う機会が減ってしまい、その分セロトニン神経が弱りやすいのです。

3)自律神経系が乱れやすい
室内外の寒暖差が激しい冬の時期。特に現代では、室内ではエアコンが効いていて、冬場でも暖かく、外に出ると一気に真冬の気温になるため、気温が乱高下し、それに合わせて自律神経系が体調の調節を行うためにフル活動します。こうした激しい気温変化の中で過ごすと、それに合わせて体調を調節する自律神経系がだんだんと弱っていきます。

自律神経系は、セロトニンの働きに大きな影響を持つ神経系であるため、自律神経系が乱れるとセロトニンも正常に分泌されなくなり、気分が落ち込む、頭痛が起こる、耳鳴りがする、イライラ、憂うつなど、様々な症状が起こる原因となります。

一般的なうつとウィンター・ブルーの違い

ウィンター・ブルーは女性や若年者に比較的多いとされ、我が国の一般人口を対象に行なった調査では、2.1%に疑いがあったと報告されています。またうつ病の人の10-20%がウィンター・ブルーを経験するともいわれています。ウィンター・ブルーの特徴は、「過食」、「過眠」そして「体重増加」。食欲不振や不眠になることが多い一般のうつとの大きな違いです。

コロナ禍で出かける機会が減った人は、少しでも屋外に出る機会を作りましょう。人混みや密を避けながら、1日に一度は外に出て、20分程度歩くだけで驚くほど効果があります。日光を浴びることに加え、からだを動かすことでホルモンや自律神経のバランスが整ってきます。

冬のセロトニン対策「トリプトファン」

冬のセロトニン不足の対策は、
●積極的に光を浴びる
●規則正しい生活をする
●運動をする
などのほか、食材から補うことができます。

●トリプトファンを多く含む食材を摂る
セロトニンの生成に必要な必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」で、肉、魚、大豆などのタンパク質に多く含まれています。

食物から摂取されたトリプトファンは血液で脳まで運ばれます。トリプトファンが血管内から脳内にどれだけたどり着けるかは、血管壁を乗り越える時の競争相手であるその他のアミノ酸(チロシンやロイシンなど)との濃度比に大きく左右されます。専門的な説明は割愛しますが、炭水化物を摂取すると膵臓から分泌されるインスリンの影響で血中のトリプトファンの比率が高まり、脳内にたどり着く割合が増加することが明らかになっています。簡単にいうと、甘い物を食べると脳内のセロトニン濃度が高まるのです。

セロトニンはすべて腸で作られています。トリプトファンが腸の働きによって5-ヒドロキシトリプトファンという物質が作られ、これが脳内に行くことでセロトニンとして利用されます。ただ、腸内環境が良くないと5-ヒドロキシトリプトファンがきちんと合成されないので、必然的に脳内のセロトニン量も不足してしまいます。
逆に、腸内環境を良い状態に保つことで、5-ヒドロキシトリプトファンがしっかりと合成されるので、セロトニンの量も十分に供給できるというわけです。
大切なのは、トリプトファンを体内にきちんと摂り入れること、腸内環境を良好な状態に保つことです。

トリプトファンは、肉、魚、大豆食品、乳製品、穀類などに含まれているのですが、セロトニンを作るのに必要な栄養素はトリプトファン以外にも、ビタミンB6、炭水化物も必要です。

セロトニンアップに「朝バナナ」

バナナにはトリプトファンも含まれていますが、実はそれほど多いわけではありません。それよりも注目すべきは、ビタミンB6の含有量。その他の果物に比べてもダントツに高く、100gあたり約0.4mgのビタミンB6を含みます。バナナはどこでも安価に手に入るため、気軽に摂取しやすい点でもセロトニンアップにおすすめの食材といえるでしょう。

トリプトファンは次から次へとセロトニンを合成するのに使われるため、在庫をため込むことはできません。毎日の朝食にバナナを取り入れてみませんか。バナナを食べる量の目安は、1日に1~2本がいいそうです。

セロトニンの分泌までには時間がかかります。そのため、朝食べておくことが大切になります。バナナは朝食の定番であるヨーグルトやシリアル、パンとも相性が良く無理なく取り入れることができます。最近はスムージーやジュースにするスタイルも増えています。

以上、エゴレジ研究所から、寒い冬のメンタルケアに大切なセロトニンについてのお話をご紹介しました。この冬も長引くコロナ禍による在宅勤務や活動自粛などで、こもりがちな日々が続いています。人との直接的なつながりも薄れてしまいがちです。ウィンター・ブルーはどんな人でも陥る可能性があります。特にコロナ禍の冬こそ意識して「セロトニン」対策を取り入れるようににしましょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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