ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
人間の脳を構成するニューロン(神経細胞)は、電気信号を発して情報をやり取りすることで認知・運動・感情・記憶・学習といった高度な情報処理が可能にしています。この神経細胞は脳内に何千億個も存在すると言われており、「大人になると神経細胞は減り続ける一方」と考えられていました。これは俗説/都市伝説のようなもので間違った情報なのだそうです。
🔴3歳以降「神経細胞」は一定!
脳研究者で薬剤師でもある東京大学の池谷 裕二教授によると、神経細胞の数は確かに新生児が多く、高齢者では少ないけれども、これは徐々に減った結果ではないということです。生まれ持った神経細胞の約70%は3歳の頃までに間引きされ、それ以降ほとんど神経細胞は死なないそうです。3歳までに生き残った30%の神経細胞を一生使い続けるわけで、100歳に至っても目立った減少は見られないのです。
もちろん、アルツハイマーなどの認知症では、神経細胞は脱落しますが、これは病気です。認知症を発症しない人の脳に生じることではない、「3歳以降、神経細胞は一定である」ということを知っておく必要があります。
そして、その例外もあり「海馬」の神経細胞は増えるそうです。脳の海馬体の中の「歯状回」と呼ばれる場所でのみ起こる現象だそうです。
🔴神経新生という現象
「大人になってからも脳内で新たな神経細胞が生まれる神経新生という現象が起きており、これは人間の行いでコントロールすることも可能です」と指摘されているのは、キングス・カレッジ・ロンドンの神経科学者であるサンドリン・チュレ博士です。チュレ博士がTAD talkで解説されている、「神経新生」のメカニズムを紹介します。
医師でも「大人になると神経細胞が生成されなくなる」と思い込んでいることがあるわけですが、実際には大人の脳内でも新たな神経細胞が誕生しています。これは、Neurogenesis(神経新生)と呼ばれる現象です。この「神経新生」というのは、脳の海馬と深い関わりを持っています。以下の画像のグレーの部分が脳の海馬で、学習・記憶・気分・感情などと深い関わりを持った部位として知られています。この海馬は「成人の脳内で独特な機構として働き、新しい神経細胞を作り出す」働きを持っていることが最近の研究で明らかになったわけです。
海馬をスライスして拡大すると以下のようになっており、青色の線が大人になってから「神経新生」により誕生した神経細胞だそうです。
チュレ博士の知人でカロリンスカ研究所で働くヨナス・フライセン氏は、「人間は1日当たり700個の新しい神経細胞を海馬で生成している」と推測しています。人間の神経細胞の数は脳細胞が何百、何千億個とも言われているため「そんなに多くないな」と思うかもしれません。しかし、50歳になれば、脳の神経細胞は生まれたときに持っていたものから成人してから生み出されたものに全て取り替えられる、とのこと。
ところで「なぜ新しい神経細胞が重要なのか?そもそも神経細胞はどういった機能を持ち合わせているのか?」という疑問があります。神経細胞が「学習」と「記憶」において重要な役割を果たすことはよく知られています。また、チュレ博士は研究で「海馬が新しい神経細胞を生成できないように機能をブロックすると、一定の記憶も同様に遮断されてしまうこと」を発見したそうです。
チュレ博士は「我々は現在も神経細胞について研究を進めていますが、記憶容量だけでなく記憶の質においても神経細胞は深く関わっていることが判明しています。また、神経細胞は記憶を維持する時間や似たような記憶を区別することにも有用です」と述べており、例えば、どこも似たような見た目の駐輪場で「自分の自転車が置かれている場所」を見つけ出すことができるのは、神経細胞が空間認識においても重要な役割を担っているから、としています。
また「神経新生はコントロール可能か?」という疑問について。その回答は「イエス」で、人為的に神経新生をコントロールすることは可能であるとのことです。実際、学習・セックス・ランニングは神経新生を活性化し、反対にストレス・睡眠不足・老化は神経新生を不活性化することが研究により明らかになっています。
しかし、神経新生と関係性のある事柄は運動だけではありません。「何を食べるか」も神経新生に強い効果を与えることができます。
以下の文字群は白色で囲まれた文字が「神経新生を活性化するもの」で、囲まれていない方が「神経新生を不活性化するもの」です。例えば、「20~30%程度のカロリー制限」や「食事を一定間隔にすること」「ダークチョコレートなどに含まれるフラボノイドを摂取すること」「青魚や緑黄色野菜、豆類などから摂取できるオメガ3脂肪酸を摂取すること」は神経新生を活性化し、反対に、「飽和脂肪酸を大量に摂取すること」「エタノールを摂取すること」は神経新生を不活性化する模様。なお、ブドウやブルーベリー・クランベリーなどのベリー類、ワインなどに含まれる抗ガン性物質の「レスベラトロル」は新しく生まれた神経細胞の生存期間を長くする効果があるそうです。
他にも、日本の研究グループが食べ物の食感と神経新生の関わりを調べたところ、「やわらかい食事」は神経新生を不活性化し、「咀嚼」を求めるような食事やバリバリした食べ物は神経新生を促進することが明らかになっています。
なお、現在のところランニングが神経新生に効果的であることは明らかですが、他にどのような運動が効果的なのかははっきりと言えない模様。ただし、運動により血液が脳に渡ることが影響していると考えられています。
一般的に、楽観的なニューよりも悲観的なニュースのほうが人は敏感に反応し、よく広まると言います。でも、間違った情報でマイナス方向に自己暗示をかけてしまうことは健全ではありません。脳細胞の間違った情報を修正してください。エゴレジさんは「加齢に伴う・・」を言い訳にせず、運動や食事を見直し、チャレンジすることが大切です。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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