スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
今年は梅雨入り前の5月から、全国各地で最高気温が30度を上回る真夏日が続出し、35℃を超える猛暑日も続いています。体の不調はもちろんのこと「頭がボーッとしてやる気が起きない」「気分が沈みがち。夏バテなのかな…」など心の変化を感じている方も少なくありません。特にここ数年は記録的な暑さが続き、メンタルヘルスへの影響が深刻化しやすい傾向にあります。そこで今回は、猛暑によるストレスとメンタルケアについてのお話です。
気候変動と健康
気候変動が私たちの健康に影響をおよぼす経路は、大きく分けて3つのパターンがあります。
1.気温上昇などによる「直接的な影響」
気温や気象の変化が、私たちの体に直接ダメージを与えるケースです。
例えば、記録的な猛暑によって熱中症になったり、熱波が心臓や血管に負担をかけたりするのがこれにあたります。もっともイメージしやすい影響と言えるかもしれません。
2.生態系や環境の変化を介した「間接的な影響」
気候変動が自然環境を変え、その結果として健康リスクが生まれるパターンです。
例えば、温暖化で蚊の生息域が広がり、これまで安全だった地域でデング熱のような感染症のリスクが高まるケースなどがあります。
また、地球温暖化の影響で植物の生育期が長くなった結果、花粉の飛散量が増え、アレルギー症状が悪化するのもこの一種です。
3.自然災害に伴う「メンタルヘルスへの影響」
台風の巨大化やゲリラ豪雨など、激甚化する自然災害は、私たちの心にも大きな傷跡を残します。
災害で家や仕事を失ったり、避難生活を余儀なくされたりといった過酷な経験は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病、不安障害などを引き起こすことがあります。
このように、気候変動の影響はさまざまな形で私たちの健康につながっています。
猛暑とメンタルヘルス
2022年にアメリカで発表された研究では、猛暑になるとメンタルヘルスの治療で救急外来を訪れる人が増加すると伝えられています。(米国医師会が発行する月刊医学雑誌「JAMA Psychiatry」2022年)
また、月の平均気温が1℃上がるにつれて自殺率が0.7~2%(アメリカ/メキシコ)高くなるとの報告もあります。(気候変動に関する最先端の研究論文を掲載する月刊誌『Nature Climate Change』2018年)
日本でも同様の傾向が見られ、猛暑とメンタルヘルスは私たちが想像している以上に複雑で密接な関係があるようなのです。
猛暑では汗を大量にかくことで体温を下げようとしますが、これに自律神経がフル稼働します。特に高温多湿の環境では、うまく体温調節ができず、常に身体が緊張状態になってしまいます。
また、外は猛暑で室内は冷房でキンキン。10度近い温度差にさらされると、身体は気温差に対応しようと自律神経を酷使します。
さらに、どうやらメンタルヘルスと深く関わりのあるドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどという神経伝達物質は、体温調節の一翼も担っているようなのです。本当のところはまだまだ謎が多いようですが、このバランスが崩れることが猛暑とメンタルヘルスの変化に大いに関係ありそうです。
気分や感情をコントロールし心の安定を保つホルモンであるセロトニンを脳内でつくるためには、トリプトファンという必須アミノ酸が必要なのですが、これは体内では生成できず食べ物から摂取しなければなりません。なので、暑くて食欲が出ず、口当たりのよいものばかりの食事が続くとトリプトファンが不足してしまいます。
このトリプトファン、日中は脳内でセロトニンに、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化する重要な役割があり、不足すると不眠や睡眠の質の低下の原因にもなってしまうのです。
✔立ちくらみ
✔イライラや不安感
✔集中力や記憶力の低下
✔消化不良
✔食欲不振
✔頭痛や肩こり
✔不眠、寝つきの悪さ
✔動悸、息切れ など
猛暑による自律神経の乱れは、「なんとなく不調」という形で現れる「猛暑ストレス」症状といえるでしょう。
手軽にできるセルフケア
日常の中で手軽にできるクールダウン&リフレッシュ法を紹介します。
方法 | 内容 | ポイント |
冷却 | タオル、冷えピタ、アイスバッグなど首筋やワキに当てて冷やす | 日中や帰宅直後のタイミングで実施 |
水分・ミネラル補給 | スポーツドリンク・経口補水液をこまめに摂り適切な塩分バランスを維持 | 1回あたり150~200mlずつ |
呼吸法・瞑想 | 深呼吸やアプリ瞑想を1日数回行う | 1回5分程度 |
休憩 | 短時間(10~15分程度)の仮眠や休憩でリラックスする | 涼しく静かな場所で |
加えて、習慣化したいメンタルケアをあげておきます。
睡眠環境の見直し
○寝具にひんやりシーツや冷感マットを導入
○室温は26℃前後、湿度50〜60%を目安に
食事バランス
○ビタミンB群やマグネシウムを含む食材(ナッツ、緑黄色野菜)
○消化に負担がかからない、夏野菜中心のメニュー
軽い運動
○朝や夕方の涼しい時間帯にストレッチやウォーキング
○冷えすぎないようウェア選びに注意
ソーシャルサポート
○家族や友人と連絡を取り合い、悩みを共有
○オンラインコミュニティや相談窓口の活用
こうしたセルフケアを2週間以上続けても改善がない、日常生活に支障をきたすほどの不安やイライラが続く、睡眠障害や体調不良が深刻化しているなどの場合は、産業医・心療内科・メンタルヘルス相談窓口など専門家への相談を検討しましょう。
以上、エゴレジ研究所から猛暑によるストレスとメンタルケアについてご紹介しました。猛暑のピークは過ぎても、高温多湿の環境は続きます。こまめなケアと生活習慣の見直しで、心身のバランスを整えていきましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
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代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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