スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
ビタミンDは、体内でカルシウムの吸収を助けるだけでなく、脳の機能やメンタルヘルスにも影響を与える重要な栄養素です。ビタミンD欠乏症でうつ病リスクが8~14%増加するとする報告もあるようです。そこで今回は、ビタミンDとメンタルケアについてのお話です。
ビタミンDとは
国立環境研究所のサイトでは「ビタミンD」は次のように説明されています。
天然由来のビタミンDは、キノコなど植物由来のビタミンD2と、魚類の肝臓や魚肉、卵黄由来のビタミンD3に分類されます。ビタミンD2とビタミンD3は構造の一部が異なる同族体ですが、通常まとめてビタミンDとして扱います。
またビタミンD3は、体内においてコレステロール生合成の最終中間体である7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)から生成されます。
皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールが紫外線(UV)を受けるとステロイド骨格B環が開いて、プレビタミンD3となります。プレビタミンD3は体温で構造が変化し、ビタミンD3となります。
ビタミンDは、肝臓で水酸化され、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)へと変化し、ビタミンD結合タンパク質(DBP, GC-グロブリン)と結合し、血液中を長期間安定的に循環します。25(OH)Dはさらに腎臓で水酸化されることで1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH)2D)となり、全身に運ばれ様々な生体効果を発現します。
1,25(OH)2Dは、腸、骨、腎臓、副甲状腺の細胞でビタミンD受容体に結合し、特定の遺伝子の働きを介して、血中のカルシウムとリン酸濃度を調整し、骨密度の維持を司っています。図に、ビタミンDの体内での代謝の様子を示します。
ビタミンDと心の安定
研究によると、ビタミンDの不足はセロトニン(幸せホルモン)の生成に影響を与え、心の安定を損なう可能性があります。このため、ビタミンDを十分に摂取することが、気分を改善し、ストレスを軽減する助けとなります。
ビタミンDは、セロトニンの脳内おける濃度を上げて、その働きをサポートします。
①セロトニン合成酵素(トリプトファンヒドロキシラーゼ)を「誘導」して
セロトニン産生↑
②セロトニン再取り込み輸送体SERTと、分解酵素MAO-A(モノアミンオキシダーゼ-A)の「抑制」を介して
シナプス間のセロトニン↑
セロトニンは、食欲、エネルギー消費、睡眠、体温、意欲や気分、満足感、、社会的認知の制御など脳内の重要な機能に欠かせないものです。したがって、日常的にビタミンDを適切に摂取することは、身体だけでなく精神的な健康を維持する上でも重要です。
ビタミンDは、骨の健康を支える栄養素として発見されましたが、近年は脳を含む多くの組織でその受容体が見つかり、免疫機能や遺伝子発現に影響を及ぼすことがわかっています。
うつ病に関しては、ビタミンDが季節性情動障害(SAD;seasonal affected disease)や 肥満患者のうつ症状を軽減 する可能性が示唆されており、最新のメタ分析でも低ビタミンDレベルがうつ病と関連することが示されています。
98%の日本人がビタミンD不足
大学ジャーナルオンライン編集部のサイトに次のような記事が掲載されています。
東京慈恵会医科大学の越智小枝教授・斎藤充教授らは、2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施し、98%がビタミンD不足に該当していたことを明らかにした。
研究グループは、島津製作所と新開発の完全自動化された液体クロマトグラフィー・質量分析法システムを使用し、日本で初めて血清中25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]の基準濃度を計算。
血清25-ヒドロキシビタミンD(25-OH-D) ビタミンD代謝物の中で最も濃度が高く、ビタミン補充状態を反映する指標です。 判定基準は以下の通り。 30 ng/ml以上:ビタミンD充足状態 30 ng/ml未満:ビタミンD非充足状態 20 ng/ml以上30 ng/ml未満:ビタミンD不足 20 ng/ml未満:ビタミンD欠乏 |
その結果、女性7–30 ng/mL、男性5–27 ng/mL(全体6–29 ng/mL)と、調査対象5,518人のうち98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD不足(<30 ng/mL)に該当することが判明した。
測定されたビタミンDのほとんどが動物あるいは日光由来のビタミンD3であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2はほぼ検出されなかった。
また、年齢が低いほどビタミンD不足の割合が高かった。
今回の研究結果から、日本人の食生活の変化によって、特に植物由来のビタミンDが摂取されなくなったと推察している。
一見健康そうに見える人々の間でビタミンD不足の有病率が高いのは、屋外にいる時間が短い、行き過ぎた紫外線対策、伝統的な食品の摂取量が少ない生活習慣の変化など、日本の都市部に住む人々のライフスタイルの特徴に起因していると指摘されています。
また奥平智之先生(山口病院 副院長)は、著書「血液栄養解析を活用! うつぬけ食事術」(KKベストセラーズ)の中で、
“”ビタミンDの血中濃度(=25-ヒドロキシビタミンD)は、
20ng/mL未満が「欠乏」 30ng/mL未満が「不足」 の状態です。
この50歳以上の日本人女性を対象とした試験では、5割の人が欠乏。9割の人が不足という結果でした。ビタミンDの血中濃度、ほとんどの人が血液検査でチェックしていないので、多くの人が「隠れビタミンD不足」を見逃されています“”と指摘されています。
ビタミンD の摂取法
メンタルヘルスを維持するために、栄養バランスの良い食事プランが重要です。
特に、ビタミンDが不足すると、気分の低下や不安感が増す可能性があります。
食事からのビタミンDの摂取方法としては、いくつかの選択肢があります。
まず、青魚、特にサバやイワシはビタミンDが豊富です。また、肝油や卵黄も良い源となります。これらの食品を意識的に食卓に取り入れると良いでしょう。
さらに、ビタミンDが添加された強化食品も利用できます。
例えば、牛乳やヨーグルト、シリアルにビタミンDが添加されている商品がありますので、選ぶ際にラベルを確認することをお勧めします。
最後に、太陽光に当たることもビタミンDの生成に役立ちますが、食事と組み合わせることでより効果的に摂取できます。
日常生活の中でできる、最もシンプルなビタミンDを補う方法は、日光浴をするということです。1日15〜20分程度のウォーキングなどで紫外線を浴びることにより、ビタミンDが生成されます。しかし、近年は美白・美肌を気にして紫外線を避ける傾向が強く、日光を浴びない方も多いようです。UV対策には適度に行いつつ、日光に当たることもカラダには必要だと覚えておきましょう。
以上、エゴレジ研究所からビタミンDとメンタルケアについてについてご紹介しました。ビタミンDがメンタルヘルスに与える影響は多岐にわたります。特に秋季・冬季や日照時間が短い地域では、ビタミンD不足になりやすく、それがメンタルヘルスの問題を引き起こす可能性があります。したがって、適切な食事や日光浴を通じてビタミンDを補うことが重要です。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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