スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
精神的ストレスが健康へのリスク要因として顕著になってきていることが、厚生労働白書の調査で明らかになりました。新型コロナウイルスの影響で多くの人の健康に対する考えが変化し、それ以前からも健康に対して関心を持つ人が増えています。そこで今回は、最新の健康意識についてのお話です。
健康へのリスク要因 厚労白書
政府が月内にもまとめる2024年版厚生労働白書の概要が8月10日、判明しました。白書案は大串正樹厚労部会長一任で了承され、近く閣議決定される見通しです。
2024年版厚生労働白書のポイントは、
- 精神疾患の増加
- 年間自殺者数の高止まり
- ストレス要因の多様性
- 介護世帯の増加と家族の高齢化
ストレス要因の多様性では、現代社会のストレス要因を以下の観点で分析しています。
- ライフイベント:就職、結婚、出産、介護、死別など
- 日常生活の出来事:人間関係のトラブル、長時間労働など
- 社会として容認できないリスク:いじめ、配偶者からの暴力など
注目したいのは、健康にとって最もリスクとなる要因を「精神的なストレス」と答えた人の割合が、20年前と比べ約3倍に増えたとする厚労省の調査で、「こころの健康と向き合う視点が、ライフステージ全般を通じて重要だ」と分析しています。
うつ病や適応障害、摂食障害などの精神疾患を抱える外来患者数は、20年時点で約586万人。白書は、就職や子育て、介護に加え、インターネット上の誹謗中傷などストレス要因が多様化していると説明しています。
その上で、厚労省が24年に数千人規模で実施した心身の健康などに関する意識調査の結果を掲載。健康状態への最大のリスクについて、最も多かったのは「生活習慣病を引き起こす生活習慣」(36.4%)でした。一方、「精神病を引き起こすようなストレス」と答えた人は15.6%。その割合は04年の5.0%から約3倍に増え、生活習慣の次に多かったのです。
また、「こころの健康に良い影響を与えている人」についても尋ねたところ、最多は「同居の家族」の36.5%。単身者の場合は、信頼関係を構築している友人・知人の存在が精神面に良い影響を及ぼしている可能性があるとしています。
健康意識調査
CCCMKホールディングス株式会社(東京都渋谷区)は、全国20~69歳の男女1,798名を対象に、インターネット上での意識調査「Tアンケート」によって、『2024年健康意識調査』を実施しています。※調査期間:2024年2月6日~2月13日
調査結果では、自身の健康について「とても気を付けている」から「まったく気を付けていない」までの7段階で回答してもらったところ、全体の約1割の方が「とても気を付けている」と回答しました。また「気を付けている」(「とても気を付けている」~「まあ気を付けている」)と回答した方の合計は全体の7割を超えました。
また「健康を維持するためにどんなことが重要と考えられているか」について、「健康的な生活習慣の維持」が全体の31.8%と最も高くなりましたが、性別・年代別で見てみると傾向が異なるようです。
性別では、男性で「体力の維持・向上」が女性の同年代と比較するといずれも高くなっており、女性は「健康的な生活習慣の維持」が男性の同年代と比較すると高くなっています。
年代に着目すると、「病気や不調の早期発見」は男女とも40代以上で増加傾向、「ストレスやメンタルヘルスの管理」は比較的若い年代で高い傾向が見られます。
年代によって健康の捉え方が異なっているようです。
次に「健康を維持するために意識的に取り組んでいること」について、各取り組みに対し「常に意識的に取り組んでいる」「やや意識的に取り組んでいる」と回答したスコアを分析したところ、「十分な水分摂取」「1人の時間を持つ」「バランスの取れた食事を摂る」「十分な睡眠をとる」など、普段の生活の中で取り組みやすい方法が上位にあげられました。
下のグラフでは、各取り組みに対し「常に意識的に取り組んでいる」「やや意識的に取り組んでいる」と回答したスコアを表示しています。
上位になったのは「十分な水分摂取」「1人の時間を持つ」「バランスの取れた食事を摂る」「十分な睡眠をとる」など、普段の生活の中で取り組みやすい方法でした。
また、食事や睡眠以外にも「一人の時間を持つ」が上位にあるように、環境を用意することも健康維持の一つとして捉えられているようです。
一方で、「健康に関する最新情報をチェックする」や「健康を維持するためのツール(筋トレグッズ、サプリメント)への投資」は3割台にとどまりました。
健康維持のためにあえて時間やお金をかけるのではなく、生活の中で無理せずできることを意識して行っている方が多いようです。
「意識から行動へ」
「意識から行動へ」というフレーズは、行動心理学や哲学の文脈でよく使われます。これは、意識的な思考や意図から、具体的な行動に移る過程を指し、自己認識や目標設定、意識的な選択が私たちの行動に影響を及ぼします。
例えば、意識的にストレスを軽減する方法を探すことで、ストレス対処の方法が変わるかもしれません。
マンチェスター大学のウェッブ、トーマスとシーラン、パスカルの研究は、この意識が行動を起こしてくれるのかという問題について調べています。
この研究は意識と行動の直接の因果関係を調べることを目的とし、意識を高める介入行動が、(a) 本当に意識を高めてくれるのか、(b) 行動まで高めてくれるのか を調べています。分析の手法はメタ分析で合計47の実験結果のデータをまとめています。
結果から分かったことは、
●介入行動によって意識は高まっていた(効果量d=0.66)
●介入行動によって行動も変わった(効果量d=0.36)
●介入行動によって意識が大きく高まるほど、行動も大きく変わった
効果量dの値は「0.2は小、0.5は中、0.8は大」ということなので、効果量的には意識はそこそこ変わって、行動は少し変わることが分かったということです。
行動は効果量的に少し変わる程度だということでしたが、これは全ての実験の平均的な値です。効果には実験によってばらつきがあるので、介入行動の方法などによっては行動を大きく高めることができたものもあります。
そこで、効果的に行動を変えることができた介入行動の種類を効果順に上から10個を並べると次の表のとおりです。
内容 | 効果量 |
行動の変化や行動を続けることに報酬をつける | 0.58 |
周りの人のサポートや、周囲のプレッシャーをつける | 0.54 |
行動に関する知識や行動したときの成果に関する情報を与える | 0.32 |
特定の目標を決める | 0.31 |
質問をする | 0.30 |
説得するようなコミュニケーションをとる | 0.29 |
成功のモデルとなる他者を見せる | 0.28 |
環境を変える | 0.27 |
スキルを向上させる | 0.27 |
個人メッセージを送る | 0.26 |
上の2つは効果量が0.5を超えていて比較的高めとなっているので有効そうです。他のものも効果量は少し下がりますが有効ではあるので、自分の好みのものを選んでみるのも良いと思います。
さらに、もう一つこの研究からわかったのが、
●意識を高めても時間が経つほど行動は減ってしまう
ということ。これは直感的にも分かるもので、最初は高かったモチベーションがだんだん薄れてしまうことはあります。なので、常に意識を高めて置けるように、こまめに上記のような介入行動を挟むことが大事になるようです。
以上、エゴレジ研究所から最新の健康意識についてご紹介しました。健康に対して関心を持つ人が増え、食生活に対しての意識、運動に対しての意識、働き方、睡眠に対する意識も高くなっているようです。それは、精神的ストレスの増加と無関係ではないでしょう。ストレスで心身の調子を崩さないよう、「自分にとって最適なストレス解消法」を知っておくことが大切です。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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