代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
桜の開花前線が話題になってきました。3月~4月は年度変わりでもあり「職場が変わった」「引っ越しをした」など環境や生活サイクルの変化からストレスがかかりやすい時季です。さらにこの時季は、季節の変わり目で温度や湿度や気圧が不安定で、変化が大きい傾向にあります。私たちの体はそうした変化に臨機応変に合わせようとして、自律神経の働きが追いついていけずにバランスを崩してしまいがちです。自律神経のバランスが崩れると、疲れがとれない、やる気が出ない、食欲不振、不眠、情緒不安定など様々な症状が出てきます。そこで今回は、ストレスと食欲についてのお話です。
ストレスと自律神経
ストレスに関わる神経は自律神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は私たちの身体を戦闘状態にします。副交感神経は身体や心をリラックスさせます。
マーケティング&リサーチ会社である株式会社シタシオンジャパン(所在地:東京都中央区、代表取締役会長兼社長:小出紘道)の実施した調査【実施期間:2014年3月25日~27日、調査対象者:ダイエット経験のある20~40代女性300名】では、約9割の女性がストレスや季節の変化などによって食欲が増進すると感じており、ストレスと季節変化は食欲に関連があることが明らかになりました。
中でも食欲が増す理由として、「ストレス」が82.7%であり、ストレスが食欲コントロールの障壁となっていることが分かりました。
ストレスと食欲調節
急性ストレス(環境の変化などによって急に襲い掛かるストレス)では交感神経が働き、食欲を抑えます。
たとえば重要な会議でプレゼンテーションをするとき、あなたはどうなりますか?「心臓はドキドキ、顔は紅潮、手に汗握る。のどはカラカラ、胃がキュッとなる」のは交感神経のなせる技です。このような状態では、食欲はなくなり、のんびりと物を食べることは考えられません。プレゼンが終わった後は、げっそりと痩せたように感じるでしょう。これが急性のストレスを抱え込んだときの状態です。でもしばらくすると、副交感神経の働きによってホッとし、無性にお腹が空いてきます。このようなバランスにより、ストレスに適切に対応しているのです。
一方、慢性ストレスで(じわじわと数ヶ月も数年も続くストレス)はストレスホルモンにより脂肪が貯め込まれるため肥満(いわゆるストレス太り)になりやすいのです。(※)ただ中には逆に痩せる人もいます。
たとえば職場の上司にいつも怒られてばかりで、ビクビクしながら仕事をしている場合はどうなるでしょうか?慢性のストレスです。身も心も次のストレス(上司の怒り)に備えて、警戒体制を取り続けます。脳からホルモン系へ命令が出されてストレスホルモンが放出され、戦いに備えて脂肪が貯め込まれます。これに見合うほどの身体を動かすことのない場合においては、有り余るエネルギーは腹回りにつくことになるのです。
ストレスによって食欲が増すだけでなく、ケーキやチョコレートのように甘い食べ物や、油っこい食べ物が食べたくなる方も多いようです。これは、脳がブドウ糖を必要とするからです。コレステロールにも精神を落ち着かせるアミノ酸が含まれているので、油ものが食べたくなります。
「食べる」という行為は、副交感神経の活動を高めます。胃腸は副交感神経によって支配されているため、食べて胃腸が刺激されると副交感神経が活性化されるのです。
ストレスで交感神経の活動が強くなると、食べ物を「食べる」ことで胃腸を刺激して、副交感神経の活動を高めて自律神経のバランスを整えようとします。その結果として、食欲が強くなるのです。
他にも、ストレスは脳の幸福感を下げます。幸福感を高める「セロトニン」と呼ばれるホルモンの分泌を悪くするためです。しかし、脳は常に幸福感を求めています。そこで、脳に幸福感を与える「食べる」という行為で代償しようとして、食欲を強めるようです。
ストレスと食欲不振
一方、ストレスが加わると、食欲がわかない、食べられないといった「食欲不振」になる人もいます。
ストレスを感じている時、体内では「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。一般的な成人のコルチゾールの分泌量は1日約20mgですが、長期的なストレスや大きなストレスがかかると、分泌量は1日200〜300mgにまで増加すると言われています。そして、このコルチゾールは食欲を増進させる働きがあると同時に、血糖値を上げる作用もあります。
通常「お腹減ったな」と空腹感を感じる時は、血糖値が下がっている時なのですが、コルチゾールによって血糖値が上がると食事をしていないのに「お腹がいっぱい」状態になってしまいます。つまり、コルチゾールの増加で血糖値が上がることによって、空腹感を感じなくなり、食欲不振へとつながるということです。
そのほか、ストレスによるホルモンバランスの乱れが満腹中枢の誤作動を引き起こすことも食欲不振の原因です。
ストレスによる食欲増加や食欲不振を抑える方法
◆自分の心や体の不調に耳を傾ける
まずは、ストレスを感じている自分に気づいてあげることが大切です。イライラや不安などの心の声、頭痛や肩こりなどの身体の声に耳を傾けてみましょう。
すぐに解決しようとするのではなく、「しんどい」「辛い」という気持ちを無視しないことがストレスと上手に付き合うための第一歩です。
◆セルフケア
ストレスが蓄積されて症状が出てくる前の、「ちょっと疲れたかな?」「なんか最近気分が乗らないな」という時に早めに対処することが大切です。また、対処のコツを覚えてくるとセルフケアもしやすくなります。
体の緊張をほぐすようなマッサージなどを受けたり、自分でストレッチやヨガをやることも緊張をほぐすのに効果があります。また、リラックスできる香りをかいだり、ゆったりした音楽を聴いたりという、五感を使うことはリラクセーションにつながり、ストレス状態からの切り替えを容易にしてくれます。日ごろから自分自身にあったリラクセーション方法、バランスをとる方法を見つけておくと、大事に至る前に自分のケアをすることができます。
◆睡眠や入浴など生活リズムを整える
生活リズムが乱れると、心と身体が弱り、ストレスの影響を受けやすくなります。十分に睡眠を取り、ゆっくりと入浴するなど、身体をリラックスさせ回復する時間を作ることで、ストレスから身を守るためのエネルギーを蓄えることができます。
◆栄養のあるものを美味しく食べる
ストレスによる過食や食欲不振には、栄養のあるものを美味しく食べることが大切です。やけ食いは安くて量があればいいと思いがちですが、栄養があって美味しいものをしっかり食べる方が身体も満たされますし、食べすぎた罪悪感も軽減されます。また、食欲不振の場合でも、少量でも栄養があって美味しいものを食べた方が身体も回復し、食べることの喜びも感じることができます。
以上、エゴレジ研究所から、ストレスと食欲についてご紹介しました。環境や生活サイクルの変化からストレスがかかりやすい時季であり、季節変化による自律神経バランスの乱れもおこりやすくなっています。自律神経ははっきりと目に見えるものではありませんが、体の調子を整える大切な役割があります。「ストレスが溜まってるかな」と感じたときは、まずは正しい食事の取り方を意識してみましょう。食欲不振・増進時の食事のポイントは、少しずつゆっくり食べることです。少しずつ食べることで副交感神経が働き、自律神経のバランスが取れます。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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