フランスの不動産市場と不動産投資について

皆様こんにちは。 昨年秋から二度目のフランス在住のコンヴェール昌子(しょうこ)です。 現在パリ郊外の仮住まいで、家業の不動産関連事業を営む夫からフランスの不動産を勉強中です。

さてノエル(クリスマス)は過ぎましたが、カトリックのフランスでは1月6日の公現祭までがノエルのお祭りなので、それまで街にも家の中にも引き続きツリーやイルミネーションが残っていて華やかです。

そんな華やかな雰囲気は、フランス好きの方やメディアがたくさん伝えているので、今日は少し珍しい話題として、フランスの不動産市場や不動産投資についてお話ししようと思います。 というのは先日パリ市内に新居を購入し、以前一度目の在住で購入した時との違いや日本の不動産との違いを色々発見して興味深かったからです。

まず日本とフランスの不動産で決定的に違うのが、フランスの物件の築年数が新築から数百年と非常に幅広いこと。 そして住宅用物件の種類もペニッシュというセーヌ河岸などに停泊して停泊する自治体に住所を置く船物件、町工場を改装したロフトから、かつて貴族や領主の住まいであったお城まで実に様々であることです。

『オスマニアン様式』の建物の外観。
1850〜1930年頃(多くが1900年前後)の建築です

フランス全土には最初の建築が13世紀などというとてつもなく古いものから、18世紀建築の新しいものまで1万以上のお城が現存しているそうで、不動産市場にはお城の売り物件がたくさん出回っています。 買うのは億万長者かと思いきや、実はお城は高額な維持費がかかることから価格はパリ市内の高級アパルトマンより安いことも多く、改装して自分達も住みながら宿泊施設(いわゆる民泊)にしようと計画する一般の人の購入もよくあります。 その経過を追いかけるリアリティー番組まで毎日放映されていて、経費節約のため自身や家族、友人を駆り出して行う桁違いの改装工事に四苦八苦する様子が面白いです。

そしてパリに話を戻すと、パリ市内の住宅は大多数がいわゆる『旧建築』、1930年代以前に建てられたもので、東京と違い戦争の被害を受けていないため、たまに築300年近くという映画のセットかと思うような物件もあったりします。
今回購入したアパルトマンは1900年ちょうどの建築で、前回と同じく『オスマニアン様式』の建物。 窓が大きく天井高が3メートル前後で、『大きなミラーと一体の暖炉』 『フレンチヘリンボーンのフローリング』『天井や壁のモールディング装飾』の三つがこの様式の特徴です。 これらは建築時の美しいままを残すことに価値があるのに対し、電気や配管などの設備関係はもちろん新しい方が良いということで、何十年かごとに持ち主が変わる際などに大規模工事で入れ替えています。

ところで価格はというと、このような築100年以上経った物件でも新築と変わりません。 理由は建築、建材の質が良いからで、2010年以前に建てられ10年以上経った『新建築』物件より高いです。 つまり、パリで物件を買うなら旧建築を買った方が、将来価値が下がらないということです。
地震被害のリスクがゼロであるのに加え、建物の価値が100年以上経っても下がらないなら、不動産投資としては、パリの物件は絶対に『買い』ですよね。 確かに以前はそうでした。

パリは面積が山手線の内側と同じくらいで慢性的な住宅不足のため、賃貸に出せばオーナーは入居希望者を選べるほどの貸し手市場(ただし人種差別などは厳禁)。 世界一の観光都市なので民泊としても高収益が確実。 東京と違い小規模の更地が出ることはほぼないので、最近日本で問題となっているワンルームマンション投資のように、供給過多で空室続きから自己破産などということも起こらず、エレベーターなしの7階屋根裏部屋10m2でさえ必ず借り手が見つかる。

そんな夢のような不動産市場でしたが、最近は様子が変わってきました。 まず不動産価格の変化は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京の4都市はほぼ連動するので、ここ数年パリも東京同様高止まり。 普通の人が到底買えないレベルまで高騰するも家賃はそれほど上がっていないため、投資としては全く良くない状況です。

そしてパリでは賃貸よりずっと高収益のエアビーの増加でフランス人の住宅難が更に悪化したため、宿泊日数が年120日に制限。 固定資産税の高騰(パリでは2023年に60%の値上げ)。 更に、地域ごとに物件面積当たりの標準賃料を定め、高過ぎると家主に値下げ請求する権利『家賃制限』を導入する自治体が増えてきていることが主な理由です。 これにより、例えばエッフェル塔ビューが売り物だった高額物件(当然購入価格も高かった)が、その辺の安い物件と同じ家賃にされてしまうことも出てきます。

他にも日本ではありえない、空室に不法侵入者が居座った場合、48時間以内に警察に通報するなどして追い出さないと侵入者に居座る権利が与えられるなどという、とんでもない『人権重視』の法律があったりします。 家主は家賃収入ゼロになった上に物件をリフォームが必要になるほど荒らされ、追い出すための裁判費用も負担する状況に陥り、自己破産することも。 これに家賃滞納者が何年も払わないまま居座るケースも含めると、現在フランス全土で13万件もの訴訟が進行中だそうです。

人権重視というか人権偏重、借り手偏重というべき家主泣かせの法律は、驚くことに他にもいくつかありますが、長くなるのでまたいつか機会があればお話ししたいと思います。

日本であれフランスであれ、人口動態の変化や自然災害、政治的、地政学的リスクなど、不動産投資にはそれぞれの国特有の状況やリスクがあります。 それでも明らかに安全で有利な優良物件というのも市場にたくさん隠れているのが不動産投資の面白いところ。 金融投資とは違うドキドキ感と面白さがあるので、向いているかも?!と思う方は是非挑戦してみて下さいね。

<書いてくれたのはパリ在住のコンヴェール昌子(しょうこ)さんです>
神楽坂女子俱楽部のランチ交流会でお会いした方も多いのでは。。

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