必要保障額の計算を具体的に進めてみたいのですが、5つのリスクそれぞれに社会保障制度の柱が立っていますので、計算もそれぞれに行う必要があります。今回は死亡時の保障額を計算してみます。(山田家:夫35歳会社員・妻34歳専業主婦・子6・4・2歳。計算期間:夫65歳、30年間)
〇収入
死亡時の公的年金は遺族年金でしたね。こちらは子が18歳を迎えるごとに減っていくのがポイントでした。夫は会社員なので厚生年金です。
妻の年齢/34歳~:約177万円(約14万円@月)
47歳~:約170万円(約14万円@月)
49歳~:約147万円(約12万円@月)
51歳~:約105万円(約8万円@月) 計4,300万円
次に妻の収入ですが、奥様は現在専業主婦なのと、計算を簡単にするためにまずは「夫の死後も働かない設定」で0円とします。
〇支出
支出項目は、生活費、教育費、住居費(賃借料または住宅ローン)の3つに大きく分けます。
生活費:8,316万円
教育費:3,044万円
住居費:0円 計1憶1,360万円
生活費は東京都の4人家族の平均が月27万円、1人暮らしだと月14万円となっていますので、今回はこれを流用します。ですので末子独立(大卒となる22歳)までは27万円、独立後は14万円で計算します。教育費は幼稚園から高校までは公立、大学は私立文系で計算しています(お稽古や塾の費用も平均値で入れてありますよ)。住居費ですが、山田さんちは住宅ローン持ちのご一家で団信加入を前提としますので、夫が亡くなれば住宅ローンもなくなります。
〇必要保障額
さて収入と支出が計算出来たら、下記の計算で必要保障額が求まります。
(支出)-(収入)=(1億1,360万)-(4,300万)=(7,560万)
つまり、山田家の死亡時必要保障額は、7,560万円となります。年金額にすると、
(7,560万)÷(計算期間の30年)=(252万)
さらに月割にすると
(252万)÷(12カ月)=(21万)
つまり公的年金だけを収入源とすると、月平均21万円が30年間不足し続ける、という事になります。もちろん実際は毎月21万円が「必ず不足し続ける」わけではありません。子が全員独立すれば、余る計算です。なので、公的年金とは別に月21万円が確保できて、余った分は貯めておけば、30年間とりあえず無事にやり過ごせるね、と考えるのです。また必要保障額は何度でも計算し直せます。例えば今回、教育費に学資保険は入れていません。もし準備があるのだとすれば、満期時の金額を算入すればよいですし、今現在の貯蓄額を必要保障額そのものから控除するのも勿論アリです。
ここで「7,560万円の死亡保障なんて、高くて無理よ!」と考えるのはまだ早い。保険はあくまでリスクヘッジの一手段です。すぐ保険に飛びつく前に、他の手段も考えてみるのがおススメです(私は保険屋なんですけどね)。そこら辺は必要保障額が出揃ってからで十分。次回は就労不能時の必要保障額を計算します。
水原 曜(みずはら ひかる)
2014年 住友生命保険相互会社東京本社入社。
「人生最後の転職先に保険会社を選んでしまう」という大ポカを犯してしまうもどうにか乗り越え、2017年4月より指導職に。部下に踊らされる毎日。
個人、法人問わず、フローとストックのバランスを重視した中長期的「無理しない」リスク対策のコンサルティングが最も得意です。
この記事へのコメントはありません。