《健康》コロナで「HSP」は生きづらい?

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

米国の心理学者、エレイン・N・アーロン博士が発見したHSPは、High Sensitive Personの頭文字を取ったもので、日本では「敏感すぎる人」や「とても繊細な人」と訳されています。アーロン博士の研究によって、HSPの気質を持った人は、人口の15%~20%とも言われていますので、約8割の鈍感な人に囲まれて暮らしていると考えれば、そのツラさを少し想像できるかもしれません。人の気持ちを感じ取りすぎるがゆえに疲れやすく、自分の気持ちと他人の気持ちに境界線をうまく引くことができない。みんなが気にしていないことが、気になってしまい疎外感がある—その繊細な気質は性格や環境によるものではなく生まれ持った気質と言われています。感受性が強く、人が受けた痛みを自分が受けた痛みとして捉えてしまう人も多く、暴力的な映像や映画を見るのを好まないのもHSPの特徴の1つと言えます。HSPの人のなかには特に体の症状がなくても、自分が感染しているのではと常に不安を感じてしまう人、コロナウィルスによって死んでしまうのではないかと思いつめてしまう人もいるそうです。新型コロナウィルス騒動で精神的に疲弊してしまっている人も多くいるのではないでしょうか。

今回は、そういう「敏感すぎる人」「とても繊細な人」についてのお話です。

🔴HSPチェックリスト

自分がHSPなのかどうかを客観的に判断することは難しいものです。新宿ストレスクリニックの医師、渡邊真也先生による簡易的なHSPチェックリストによると、以下5項目のうち3項目以上該当すればHSPの傾向があるようです。

(1) 周囲の人の反応が気になり、なかなか自分の意見が言えない。
(2) 周囲で誰かが怒られていたら、心がとても痛む。
(3) 友人の一言が悪気なく言ったことは分かっていても、なかなか頭から離れない。
(4) 小さな物音でも気になり、なかなか眠れないことがある。
(5) 相手のことを思い、なかなか注意しにくい。

渡邊真也先生によれば、もしやHSPかも?と思っても、HSP自体は病気ではありませんから治療の必要はありません。ただストレスを抱えやすい気質であることは間違いないので、HSPであること(あるいはHPS傾向があること)を自覚し、普段からストレスをうまく発散させるよう心がけることが重要です。

一方そんなHSP気質の人が周囲にいた場合、「普通に接することが大事」と渡邊先生は指摘されています。過剰な配慮は、余計にストレスをかけてしまうからです。「ただ、HSPの人の周囲では特に、乱暴な言葉遣いや態度は大きなストレスを与えることになります。相手がHSPかどうかは分かりにくいことも多いので、普段から誰に対しても穏やかで優しい対応をしていくことが肝要」とのことです。

🔴HSPの6つの共通点

産業カウンセリング協会の「働く人の心のラボ」に掲載された精神科医である長沼睦雄先生の『敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本』によれば、HSPに共通する特徴は以下の6つです。

1.心の〝境界線〟が 薄い
この性格のために他人の考えや気持ちが自身の心に流れ込んでしまうことがあるようです。

2.疲れやすい
人の気持ちに共感や同調しやすく、気を遣うことが多いため神経が高ぶりやすく、日常生活を送るだけでもヘトヘトになってしまうそうです。

3.刺激に敏感
五感はもちろん感情や雰囲気などにも敏感です。

4.人の影響を受けやすい
「心の〝境界線〟が薄い」とも関連しますが、小さなシグナルから相手の気持ちを察するので、他人の影響を受けやすくなりがちです。

5.自己否定が強い
「自分の責任かも」と考える傾向が強いようです。

6.直観力がある
小さなことに気付くことも多いため、未来への予兆を発見することも多いようです。

🔴無理して克服する必要はない!

長沼先生は「無理して自分の気質を克服する必要はありません。HSPだとしても、それに合わせた生き方を見つけましょうとおっしゃっています。では、「合わせた生き方」とはどのようなものでしょうか?さまざまな方法が提唱されていますが、ときに生きづらさの原因となるHSPの良い面に着目するのも一つの方法でしょう。

「そんなこと言っても……」と反論したくなる人もいるかもしれませんが、逆のタイプ「鈍感すぎる人」について考えてみましょう。鈍感すぎれば、それこそ「空気が読めない」と敬遠されることもあるかもしれません。

『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(イルセ・サン 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を参考に、HSPの強みがまとめらえていますので参考にしてみてください。

🔴HPS6つの強み

  1. 微細な情報が心の奥まで届く
    HSPのセンサーはあらゆる情報を拾ってきます。そして、そうした情報は心の奥深くまで届きます。だからツライと感じることも多いのですが、適度に制限された情報を心から味わえる感覚を持っています。芸術や壮大な自然は鈍感な人にはない深みを持って心に迫ってきます。刺激多すぎて、あるいはマイナス刺激でツライと感じることもある一方で、HSPだけにしか感じられない細やかな刺激を味わうことができるのです。舌が繊細な人だけ感じられるワインの味わいといったものを想像してもらえれば、HSPへの「ギフト」が理解できるかもしれません。
  2. 音やにおいなどの微細な違いを察知できる
    HSPはカフェなどの音楽が不調の原因になることもあるようです。ただ違いを認識できるからこそ、できることも少なくありません。職人芸と言わるような技術の多くは、違いのわかる繊細な感覚に支えられています。ときに鈍感な人にはわかりづらい微細な違いこそが、最高の商品を生み出すからです。違いを見極められる力を、どうやって活用できるのかを考えるのも面白いかもしれません。
  3. 深く多角的に考えられる
    HSPの人たちは、たくさんの観点から物事を捉えることができます。時間こそかかりますが、結果的に独創的な発言や行動ができるのです。ビジネスの現場では、とにかく早く決断を下すことを求められがちですが、じっくりと慎重に検討した結果が求められるケースも少なくありません。慎重さが求められる場は、HSPにとって有利に働く可能性が高いといえるでしょう。
  4. 危機管理能力が高い
    慎重に状況を観察し、高い察知能力で危機を回避するHSPが、鈍感な人から慎重すぎると見られることもあるかもしれません。しかし、絶対に失敗が許されない場面では、HSPの能力が必要となるのではないでしょうか
  5. 共感力が高く、気配り上手
    他の人に感情移入しがちなHSPですが、それだけに相手の気持ちを汲み取ることができます。相手の苦しみを自分のことのように感じてしまうのはツライことだと思いますが、そうやって共感してくれる人に、多くの人が好意をいだくでしょう。プライベートはもちろん仕事でも人間関係は大きなウェイトを占めます。相手の気持ちを読み取って対応できる力は、大きな武器にもなるでしょう。
  6. 想像力が豊かで、内的世界が充実している
    多くのHSPの人が豊かな空想力を持っていると、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』には書いてあります。それは芸術となって表現されることもあるようです。また、そうしたインスピレーションにより一人でいることも退屈することがないそうです。これらも大きな武器でしょう。もし日々インスピレーションがわき起こるなら、絵画や小説をつくったり、楽器を演奏したりというチャレンジも良いかもしれません。
    一面ではプラスに働き、別のシチュエーションではマイナスに働くことは少なくありません。HSPの特徴も強みに変えていける部分も数多くあるようです。大事なことは自分の傾向を知ることです。
    「HSPだから生きづらい」と良く聞きますが、敏感で繊細な感性を持っていることが必ずしも生きづらさと直結するとは限りません。HSPの気質を持つ人たちは周りの環境の刺激にとても敏感ですが、その一方で、日常の小さな変化に気付き、幸せを感じる力も強いのです。たとえ今あなたがHSPで生きづらさを抱えているとしても、HSPに対する考え方を変えることで、繊細さはあなたの日常を彩る味方になり得るのです。

🔴WithコロナのHPS

多くの人がパーソナルスペースを気にするようになったソーシャルディスタンスの普及はHSPの気質を持つ人にとって、感染防止の側面以上にメリットをもたらしているかもしれません。また「テレワーク」やオンライン会議システムも一般的になりました。オンライン会議やYoutubeでのライブ配信など、対象物と自分との間に一線を引いてくれるオンラインの活用事例はHSPの気質を持つ人たちにとって、大きな一歩となったと思います。

「コロナブルー」で多くの人の不安感が増している今だからこそ、HSPについての正しい知識を念頭に置きつつ、自分だけでなく誰に対しても穏やかに接するよう心がけたいものです。誰もが持っているストレスにうまく対処できる力、エゴレジを発揮してください。

つぎの参考文献も活用ください。
『敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本』(長沼睦雄 著/永岡書店)/『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(イルセ・サン 著//ディスカヴァー・トゥエンティワン)/『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン、一万年堂出版/『HSPの教科書』上戸えりな、クローバー出版/『「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本』

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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