《健康》脳疲労のリセット術!

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

いっぱい休んだはずなのに…なんとなく朝からアタマが重い―そんな人は、身体ではなく脳が疲労しています。たいていの人は、疲れをとるのは、「休息=身体を休めること」だと思い込んでいます。たっぷり睡眠をとったり、リゾート地でゆったり過ごしたり、温泉にじっくりつかったり……もちろん、そうやって身体を休めることも大切です。しかし、それだけでは回復しない疲労があります。それが脳の疲れ「脳疲労」です。今回は脳科学の専門家で医学博士の久賀谷亮先生のお話と、簡単にできるリセット術を紹介します。

🔴「何もしない」でも消耗する

「何も考えずにぼーっとすれば、脳は休まる」と考える人もいることでしょう。久賀谷亮先生のお話では、残念ながらどれだけ無為な時間を過ごしても、それだけではあなたの頭は休まりません。むしろ、どんどんエネルギーを消耗し続ける可能性すらあります。脳は体重の2%ほどの大きさにもかかわらず、身体が消費する全エネルギーの20%を使います。さらに、この脳の消費エネルギーの大半は、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という脳回路に使われています。

DMNとは、内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉などから構成される脳内ネットワークで、脳が意識的な活動をしていないときに働くベースライン活動です。自動車の「アイドリング」をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。このDMNは、脳の消費エネルギーのなんと6080%を占めていると言われています。

つまり、ぼーっとしていても、このDMNが過剰に働き続ける限り、脳はどんどん疲れていくわけです。

🔴簡単リセット術

仕事や勉強が捗らないときは、脳の疲労をとったり、やる気が出るように刺激したりといった “リセット術” が有効です。

1分間セルフ・アイマスク

長時間座りっぱなしで、パソコンやテキストとにらめっこ。そのせいでどんどん生産性が落ちている……。それは、目の疲れによって脳疲労を起こしているからかもしれません

コミュニケーション・アナリストの上野陽子氏によれば、人間は情報の80%を視覚から得るため、脳の疲れの原因は眼精疲労からくるものが多いそうです。根本原因である目の疲れをとるために、眼球周辺を温めて血行を促し、疲労物質を取り除きましょう。目を蒸気で温めるアイケアグッズももちろんよいですが、医学博士の福田千晶氏は「セルフ・アイマスク」もすすめています。手順は以下のとおり。

  1. 椅子に座り、体の前で両手をこすって温める
  2. 目を軽く閉じ、手を目の上に30秒置く
    (ここまでの動作をもう一度繰り返す)
  3. 目を開き、手をゆっくり下ろす
  4. 手を目の上に置く時間は合計1分、手を温める時間を含めても数分です。

目の疲れを取って脳疲労を緩和させましょう。

2分間バタフライハグ

「頑張って資料をつくっても上司にダメ出しされるだろう……」「試験を受けてもどうせ合格できっこない……」など、心のどこかに諦めやネガティブ思考があるせいで作業が捗らないケースもあります。そんなときは「バタフライハグ」をするのがよいと、医学博士の吉田たかよし先生はいいます。手順は以下のとおり。

  1. 両腕をクロスさせ、自分を抱きしめる
  2. 左右交互にトントンとリズミカルにたたく

この動作を2分間続けるだけです。バタフライハグはもともと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療をひとりでも安全にできるようにと生まれた方法です。右脳と左脳のバランスを整えて、ネガティブな思考を軽減する働きがあるのだそうです。右手で左肩を叩くと、右手の運動神経と左肩の感覚神経が同時に刺激を受けます。一方、左手で右肩を叩くと、左右正反対の刺激が加わります。実践している姿を正面から見ると蝶のように見えることが、この名称の由来なのだとか。

5分間ガムを噛む

「咀嚼と脳の研究所」設立者・久保金弥氏によれば、咀嚼にはストレスホルモンの分泌を抑える効果があるのだそうです。マウスを使った実験では、木の棒を噛ませたマウスと噛ませなかったマウスでは、前者のほうがストレスホルモンの分泌量が減少することが判明しました。そして、ストレスの軽減は、記憶をつかさどる脳の海馬にもよい影響をもたらし、記憶力アップにも有効とのこと。ストレス解消によって、細胞新生を阻害されるリスクが減るためです。

自然科学研究機構生理学研究所による研究では、5分間、無味無臭のチューインガムを噛むことで、脳の短期的な活性化が認められたのだそうです。

光や風、緑に触れる

東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生によれば、オフィスビル内のように温度や湿度が一定で変化のない環境ほど、脳が疲れやすい。一方、木漏れ日、そよ風、せせらぎといった「自然のゆらぎ」のある環境は、脳にリラックス効果をもたらし、脳疲労を軽減します。「時々窓を開けて風を入れたり、昼は外に出て緑を眺めたり鳥の声を聞いたりするなど、“ゆらぎのある環境”を意識して取り入れて脳の疲れを癒やしましょう。

「3時間に1回15分の休憩を取るより、1時間ごとに5分の休憩を取るほうが、脳の情報処理能力の低下を防げます。飽きたら小休止してトイレに立ったり、別の作業をしたりするほうが、仕事の効率が上がります。仕事や勉強がなかなか捗らないときは、数分だけ作業を中断し、脳をリセットさせましょう!

好奇心旺盛でエネルギッシュなエゴレジさんは、仕事中でも家でも、メールやSNSなどから、私たちの脳には毎日大量の情報が入ってきます。脳がそれを処理しきれないと、考える力だけでなく、やる気も低下してしまいます。平日のすき間時間や休日に、意識してひとりの過ごし方を変えてみましょう。疲れた脳が元気になる簡単リフレッシュ術も参考にしてみてください。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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