ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
やるべきことがあるのに先延ばしにしてしまう…って誰にも覚えがあることです。先延ばし( procrastination)とは、するべき行動を遅らせる態度、振る舞いのことで、「どちらかといえば「ダメなもの」で、「克服する」ための情報が多いようです。
ところがそんな中に「先延ばし」の心理と効用についての面白い研究があったのでご紹介したいと思います。
目次
🔴頭のいい人は「先延ばし」を賢く活用!
高校生を対象にしたインテル主催の科学コンテスト「Intel Science Talent Search(STS)」で入賞した特に頭のいい人を対象にした調査によると、賢い人々は先延ばしのテクニックを活用し生産性を上げていることが判明しました。
例えば、やるべきことをわざとやらないでおき、物事を先に進めるための刺激としてほどよいレベルのストレスをかけるといった方法です。あるいは、先延ばしを「考えを寝かせておく方法」と捉えている人もいました。答えを見つけ出す前に十分にその問題を「消化」するために、あえて決断を下すまでに時間をかけるのです。これは誰もが経験しているのではないでしょうか。アイデア出なかった課題も、一度課題から離れてみると、意外と簡単な出口が見つかったりするものです。
さらにこの研究によると、STS入賞者たちは課題をいったん棚上げにした時間を用いてほかの用事をこなしているそうです。先延ばしした時間で課題以外のやらなくてはならない用事を効率よく片付けているわけです。
🔴「先延ばしグセ=時間管理が不得意」ではない!
先延ばし現象を専門に研究しているデポール大学のフェラーリ教授によると、先延ばしがちな人は時間管理が苦手と思われる傾向がありますが、そんな単純な話ではないそうです。先延ばしはその人の性格や主観的な時間感覚と大きく関わっているそうです。先延ばしにも2つのタイプがあり、それは、決めるまで時間がかかる人と、行動に移すまで時間がかかる人です。
決められないタイプは他人への依存心が強く、決断を下す時に人に頼りがち。人の言いなりになりやすく、決めたことがうまく行かないと責任をほかの人に転嫁したがります。
一方、腰が重いタイプは、自己評価が低い人が多いとのこと。自分で決めるところまではできるのですが、実際の行動が伴いません。
もちろん、両方のタイプに当てはまる人も多いのですが、フェラーリ教授の研究成果は人が物事を先延ばしにする心理をある程度解き明かしてくれているのではないでしょうか。
フェラーリ教授やオクラホマ州立大学の研究によると、ある人が物事を先延ばしにしたがるかどうかには、その人が過去・現在・未来をどう捉え、解釈しているかを示す「時間的展望」の要素が関わっているそうです。
例えば、過去に起きた悪いことにばかり目を向けがちな人は、恨み辛みを抱きがちだそうです。自分の時間的展望を改めることも可能ですが、基本的にはその人の性格に深く根ざしていると考えられています。先延ばしグセもその一部です。
一方、先延ばしには育った環境も関わっている、という研究成果もあります。例えばアメリカ心理学会(APA)では、先延ばしのクセは学生時代につくケースが多いと指摘しています。例えば学校のカリキュラムに厳しさが足りず、宿題の締め切りを過ぎても特に叱られないような学習環境で育った人は、時間をムダ使いする悪い習慣がつきやすいそうです。
🔴先延ばししがちな人は同類に厳しい
また、物事を先延ばしにしたがる人たちは、同類の人に対して辛口になりがちという結果が出たそうです。この傾向は特に女性において顕著なのだそうです。同じ職場で働く物事を先延ばしにしがちな人のダメっぷりについて評価してもらうと、先延ばしグセがない人と比べて、自分にもその傾向がある人の方が厳しい点をつけたようです。
🔴先延ばしの傾向に気づくには?
先延ばしグセのある人を前もって見分けたいと考えるなら、心理学誌「Current Psychology」に掲載されたRitu Gupta氏らによる研究が参考になります。この研究によると、何らかのかたちで「ネガティブ」に運命を信じている人たち、例えば「自分の手に負えない」と考えがちな人は、神経質で心配性の傾向が強く、物事を先延ばしにしがちだということです。
一方でこの研究では、先延ばしグセのある人には、人生について比較的健康的な見方をしているタイプも多いことがわかりました。過去を美化し、ノスタルジックに捉える人も、先延ばしの傾向が強いそうなのです。これはかなり意外な結果と言えます。この発見は、これまでの研究とは真逆の内容です。直感に反するようにも思われるこの結果については、科学者たちもまだきちんとした説明ができていません。科学的な検証は日々行われているものの、まだ具体的な結論は出ていないのです。
フェラーリ教授を含む教授陣は「成人の約20%が自分を“先延ばしの常習犯”だと認めている」という調査結果を発表しています。しかし、一概に先延ばしが「悪い」わけではないことがわかりました。心理学者のニール・フィオーレ氏は「先延ばしは、鍛え直したら治るような『なまけ病』ではありません。先延ばしとは、タスクや決断に関する不安に対処するための心理メカニズムです」と語っています。つまり、先延ばしは人間であれば誰でもやってしまうものです。よって、それ自体は苦しむ必要はなく、そのメカニズムを理解し、自分なりの適切な先延ばしの対処法を探すことをお勧めします。エゴレジさんならバランスをとりつつ、うまくやっていけるでしょう。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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