ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
朝起きたときに、「今日はいい日になるぞ」と思うと、実際にそのとおりになった、とか逆に「最近ツイてないし、仕事行くの嫌だなぁ」と思うと、踏切や信号に引っかかったり、仕事でポカをしたりと良くない一日になってしまった…というような経験はありませんか。こうした現象を「自己充足的予言」と言います。
実際のところ、どんな一日でも良いこともあれば悪いこともあります。これは、脳の働きと関連しており、今回はこの自己充足的予言について、ご紹介します。
目次
🔴自己充足的予言
もともとは、米国の社会学者トーマス(Thomas,W.I.)の提唱した状況定義論「人がある状況がほんとうにあると定義すると、結果としてその状況が現実に存在するものになる」を発展させたもので、同じ社会学者マートン(Merton,R.K.)が、自己充足的予言(self-fulfilling prophecy)と名づけました。すなわち、このようになるのではないかといった予期が、無意識のうちに予期に適合した行動に人を向かわせ、結果として予言された状況を現実につくってしまうプロセスを指します。無意識に情報をフィルタリングした結果というわけです。
🔴スコトーマ(心理的盲点)のしわざ
本来、脳の機能はとても優秀で、RAS(reticular activating system:ラス)という網様体賦活系で無意識のレベルで情報を判別しています。このRASという機能があるために、普段の生活において「脳が必要だと思う情報だけ」をピックアップしているのです。どのように判別するかといえば、過去の経験に基づいて重要度を判断しています。過去の経験で、自分が重要だと判断した結果を結び付けて、いま目の前の出来事を瞬間的に判断しているのです。無意識のレベルで取捨選択しています。その中で自分が不要だと思っている情報は遮断されています。それがスコトーマ、つまり心理的盲点として見えてこないわけです。
つまり、これは何を意味するかと言うと、『本来、自分の目標達成の為に必要な情報を見落としてしまっている』ということです。
何故、本来必要である情報を見落としてしまうのでしょうか?何故、スコトーマ(心理的盲点)が発生するのでしょうか?それは、「人間が変化を嫌う生き物」だからです。では、何故「人間が変化を嫌う生き物」なのでしょうか?それは、「脳が変化を嫌う」つまり「大量のエネルギーを余分に使うのを嫌がる」からです。
だから、習慣化というものは、中々崩す事ができないですし、新しい事を習慣化させるのは大変なのです。意思の弱さ、モチベーションなどが原因ではないのです。
自己充足的予言として「いい日になる!」とすると、その日の悪いことに対してスコトーマ(心理的盲点)が出来て見えなくなってしまうのです。反対に、「悪い日になる!」と自己充足的予言をするとその日の良いことに対してスコトーマが出来て見えなくなってしまうのです。実際のところ、一日の中には、良いこともあれば悪いこともあります。しかし、この自己充足的予言をすることによって、脳の認識する情報がガラッと変わってしまうというわけです。
🔴ロックオンとロックアウトの法則
これは脳の機能そのもので、脳は求めるものを集めるわけです。 米国ウィスコンシン大学とペンシルベニア大学の研究者らが実験によってその効果を明らかにした「ロックオンとロックアウトの法則」によっても説明されています。この法則は、「重要だと判断したモノをロックオンして、それ以外をロックアウトして認識しなくなる」という脳の機能を説明したものです。
その実験を簡単に説明すると、
まず、探すものを指示して被験者たちに無言で見つけ出してもらう。
次に、探している対象物の名前を言いながらもう一度探し物をしてもらう。例えば、指示された物が鍵ならば、「カギ、カギ、カギ……」とつぶやきながら探す。
そして、それぞれの場合で見つけ出すまでにかかった時間を比較する。非常にシンプルな方法です。
結果、対象物の名前をつぶやきながら探した時のほうが、被験者たちはより早く見つけ出すことができたといいます。しかも、つぶやくのは一度や二度ではなく、繰り返し言い続けたほうが早く見つけられる傾向があったそうです。
🔴自己充足的予言の活用
このように、自己充足的予言は、歴史的にも多くの学者達によって研究が行われ、現在では常識的と言っていいほど当たり前の理論となっています。ですから、これまでこの理論を知らなかったあなたも、今からすぐにでも利用しましょう!
この理論は、先程の朝起きてからの例のようにその日、一日だけのものではありません。人生の長いスパンにおいても同じです。つまり、良いことを常に考えている人には、良いことがよく見え、良いことを集めることになりますが、悪いことばかり考えたり、悪いことばかり気になる人には、悪いことばかりが目につき、悪いことばかり集めてしまうことになります。
物事の良いことが立て続けに起こるカラクリであり、とても重要なことですから、是非とも習慣化したいものです。もちろん、ゴール設定すれば、ゴールに関係のあることばかりが目についてくるカラクリも同じです。
🔴アファメーションをプラス!
朝一番にアファメーションをやると効果的です。アファメーション(肯定的な言葉を自分の内側に語りかけるスキル)とは、なりたい自分になるための言葉による思い込みづくりのことで、「肯定的な自己暗示」「肯定的な自己説得」「肯定的な自己宣言」とも言われます。簡単にお伝えすると、なりたい自分にふさわしい文言をつくって、何度も言ったり、見たり、聞いたりすることで、自分自身に健全な「思い込み」をつくることです。これを効果的に活用することによって、あなたの可能性や手にする結果を一気に高めることができます。
それと、とても良い睡眠に欠かせないのは、寝るときの状態です。 寝るときにも、しっかりと良いことを思い浮かべることが良い睡眠に繋がります。
人のレム催眠中には短期記憶を海馬と扁桃体で振り分ける作業をしますが、寝るときに「良いこと」や「ゴールに関係すること」を思い浮かべることはとても理にかなっています。ですから、寝るときには今日あった良い出来事とか、ゴールに関係する事柄、もちろんアファメーションを実践すると効果絶大です。毎日のことですから、やる人とやらない人との差は大きくなってくるはずです。
自己充足的予言の面白いところは、自身がそう思い込むことによって、そうではない情報をスコトーマという形でシャットアウトしてくれることです。仕事にせよ、夢にせよ、自身で思い込むことによって設定したゴール(自己充足的予言のことです)に向かうには、それを邪魔するものは見えていない方が効率が良いようです。
ちょっとした習慣を積み重ねることによって、数ヶ月、数年後には大きな差となって効果が現れてきます。「継続は力なり」です。ぜひ、あなたの毎日の習慣の中に、この『自己充足的予言』をとり入れてみてはいかがですか。エゴレジ力のアップにも繋がります。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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