避難所生活で気を付ける睡眠環境と自治体の段ボールベッド活用

はじめに

近年では地震だけでなく気象災害も増え、避難所生活を余儀なくされる確率が増えてきたのではないでしょうか?
避難所生活が長くなると心身の健康を保つのに最も重要になると考えられるのが、トイレ・キッチン・ベッドであるといわれます。
災害関連死を防ぐためにも実は寝床はとても重要なのです。
残念ながら、私たち日本の国・自治体としての災害対策のインフラは災害対策先進国のイタリアと比べると全く不十分です。問題点は様々あるのでしょうが、日本においては、自分の身は自分で守る避難所生活の睡眠対策が必要です。

熊本・能登半島地震の報告から考える避難所睡眠の工夫

避難所というと代表的なのは学校の体育館。不眠を訴える人も当然多くなります。
東日本大震災では災害関連死の33%は避難所の環境が原因と考えられ(復興庁2012)ました。高齢者では、3日以上の床に直接寝る避難所生活でエコノミークラス症候群発症リスクが一般人の250倍ともいわれます。
特に避難所の温熱環境が命を守ることにつながります。
そして温熱環境保持にかかわる一つが寝具です。

能登半島地震において、能登町では、迅速に段ボールベッドが導入されました。その結果、災害関連死を含む健康被害が3分の1になったといわれます。
ところが同じ能登半島地震でも、自治体によっては段ボールベッドの早期設置が上手く機能しなかった地域もあります。
これは、災害時対策が全国統一ではなくそれぞれの自治体任せな面もあるからかもしれません。縦割りの改善と対策の整備は今後の国や自治体などの課題でしょう。
とはいえ現状では、体育館の床にごろ寝、配られるのは毛布一枚かもしれません。

特に寒い時期を想定した16℃の環境で、床に毛布一枚で昼寝をした実験では、足もとの寝床内温度(布団と体の間の温度)が低下することが変わりました。
通常の冬の布団は、全身を均一に温めてくれるのに対し、毛布一枚では足元は冷えてしまうのです。

では、服をとにかく着込めば温度は確保できるのか?
5枚以上の重ね着では空気の層ができないため、逆に保温効果は落ちてしまうこともわかっています。

では実際にどんなことが避難所の不眠の原因としてあげられたかというと、
全身の冷え・足の冷え・寝具(床)の硬さ・腰の痛み・周囲の騒音が主でした。

<段ボールベッドの効果>
メリット:床に直接ごろ寝に比べ、段ボールベッドでは寝床内温度が高く保たれるため優位に暖かく、硬さも改善され睡眠しやすいことが分かっています。
デメリット:夏場は暑さ・蒸れが生じる。

<個人でできる避難所へ持ち込む荷物の工夫例>
◇冬場の避難時には、足元を温める工夫が必要。厚手の靴下などを非難袋に。
◇冬場の避難時には、着ている服の他に空気の層を作れる服を追加。
◇硬さ・床からの冷たさ軽減のために、寝袋やヨガマットなどアンダーマットを非難荷物として準備しておく。

もちろん、緊急避難で何も持ち出せないこともあるでしょう。しかし、若干の余裕のある避難や念のための避難もあります。
できる範囲で備えをしておくことは、これからますます重要となるのではないでしょうか?

まとめ

まずは命を守るために逃げること。そして逃げた先にある避難生活においては、心身の健康を保ち復活するためには睡眠が重要であるということ。それを念頭に置いて、この記事を読んだカグジョ世代の皆様、避難の備えを見直してみてください。

それでは、今夜も良い眠りを・・・☆

プロフィール

Sleep Performance Company (スリープ パフォーマンス カンパニー)
代表:小林 瑞穂 (こばやし みずほ)
薬剤師/睡眠改善インストラクター(H29年現在)薬科大学卒業後、営業職に従事。その後メンタル専門の薬剤師となり、延べ5万人以上の「眠りの悩み」に関わる。2011年独立。睡眠活用の専門家として、社会人が今よりもっと輝くための『ハイパフォーマンス睡眠法』や『生産性向上のためのセルフリーダーシップ睡眠研修』など、セミナーや講演、企業研修を実施。体感型ワークを多く取り入れた講座は、「すぐに実践できる」「スッキリ起きられるようになった」「仕事の効率化が計れた」「働き方改革に繋がった」など、好評を博している。
スリープ・パフォーマンス カンパニー https://sleep-perform.com/
快眠サロン水月~mizuki~   https://mizuki-kaimin.com/
新聞コラム連載・各種メディアでのコラム執筆や、TV出演等も行っている。
*著書:『できる大人の9割がやっている 得する睡眠法』(宝島社)

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