こころ「ときめき」するもの

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

最近「ときめき」を感じたことはありますか? 「ときめき」は、枕草子にも「こころときめきするもの」とあるように平安時代から使われていた歴史の古い言葉です。「ときめき」は単なる感情だけでなく、私たちの心身の健康に多くのメリットをもたらします。そこで今回は「ときめき」についてのお話です。

「ときめき」対象

枕草子・第27段の「こころときめきするもの」を現代語訳すれば・・・
胸がどきどきするもの。 スズメの子を飼う。 赤ちゃんを遊ばせているところの前を通る。 良いお香を焚いて一人で寝ている時。 唐の鏡で、少し暗いのを見た時。 貴公子が牛車を止めて、何かを尋ねている。 髪を洗い化粧をして、良い香りを染み込ま着物を着る。 特に見る人がいなくても、とても良い気持ち。 人を待っている夜。 雨の音や風が吹き荒ぶのも、驚いてしまう。 【意訳】

20~60代の女性を対象に、「ときめき」という心理現象の実態把握を試みた長崎ら(2009)の研究では、全体の88%が「ときめき経験」ありと回答しており、その具体的対象の集計結果は次表のとおりでした。年代別にみると、50代以降に「男性」の割合が減少する一方で、「ライフイベント」や「風景/空間」の割合が増加していました。

また、ときめき経験時に生起した感情の自由記述からは、「ポジティブ」に分類されたものが93%、「ポジティブとネガティブの混在」が5%、分類保留が2%で「ネガティブ」のみの生起はなかったと報告されています。

「ときめき」の感情成分

ときめきについては、化粧品メーカーによって様々な研究が行われています。例えば、日本メナード化粧品は「ときめき」尺度を開発しています。これによると、
ときめきは「不満」、「平穏」、「動揺」、「幸福」、「強気」の5つの感情で説明できることが示されています(浅井ら, 2019)。この研究は、20代~60代の幅広い世代で共通の5因子構造が確認され、感情構造自体は年齢差に左右されないことが裏付けられました。

また、高級化粧品を眺めたり、手に塗布したりすると、「動揺」、「幸福」、「強気」が増加し、「平穏」が減少すること(浅井ら, 2019a)、性格別でみた場合、呑気な人ほど、ときめきが弱く、神経質な人ほどときめきが強くなることも報告されています(久世ら, 2019年)。このように「ときめき」は、ポジティブな感情とネガティブな感情が入り混じった複雑な感情で、性格による個人差もあるようです。

そして、このときめき感はその対象により変わるようです。例えば、異性に対するときめきと化粧品に対するときめきを比べた実験(上図)では、異性へのときめきの方が、「動揺」が大きく「強気」が小さいことが示されています(浅井ら, 2019b)。

 

「ときめき」の脳科学

ときめいている時には脳活動も変化します。日本メナード化粧品によって行われた研究では、化粧品がときめき感と脳活動にあたえる影響について調べています。

この研究では、女性16名を対象に、様々な化粧品の画像を見た時の脳の活動状態として、脳血流量と脳波を計測し、あわせてその化粧品にどれくらい「ときめき」を感じたかも調査し、「ときめき」の程度と脳の活動状態の関連性について検証しています。

その結果、「ときめき」を感じる画像を見た時、脳の左前頭前野が活性化していることがわかりました。さらに、後頭部において、脳波のα波とβ波の比率(β/α)が高まることがわかりました。これらの脳活動の変化は「ときめき」を感じた時に特徴的に生じる脳の活動だと考えられました。

「ときめき」の効果

ときめきは心と脳に様々な変化を引き起こします。この効果を利用して認知症患者やうつ病患者の治療に役立てようという「化粧療法」が注目を集めています。

カネボウ化粧品が行った研究では、中年女性に化粧を行わせた際の脳血流量の変化をfNIRSで調べています。活気が高い女性と低い女性を比較したところ、活気が低い女性では化粧によって前頭前野の血流量が大きく増加したことが示されています(Ikeuchiら, 2014)。これは、抑うつ症状によって前頭前野の活動量が低下している場合、化粧によって引き起こされる変化がより大きいためではないかと考えられています。加齢に伴う感受性の低下がある中高年層でも、ときめき誘発刺激としての化粧介入は有効であることを示唆していると言えるでしょう。

また、更年期女性にウェディングドレスを着用してもらい、その前後での変化を調べた研究もあます。身体面での変化は少なかったものの、心理検査では怒りが減少し、活気が高まったことが報告されています(長谷部と齋藤, 2009)。さらに、認知症患者に美容ケアを行うことで、問題行動が軽減し、日常生活能力が向上し、ストレスホルモンが低下することも明らかにされています(岩田, 2013)。

心のドキドキを検知する「ときめきセンサー」

CEATEC JAPAN 2015(CEATEC 2015)に光センサーの検出技術を応用した「ときめきセンサー」が出展されていました。半導体メーカーのローム株式会社と、クリエイティブ全般の企画・開発をする企業・株式会社TECHMACがコラボして開発したドキドキする心理状態を検知する「ときめきセンサー」は「光学式脈波センサー」というセンサーを利用しています。このセンサーは、発光ダイオード(LED)光を指先などに当てて光の吸収量などを検知し、脈波と呼ばれる血管の収縮の度合いを測ることで使用者の感情の気分の高揚を調べるという仕組みになっているそうです。

医療分野や健康分野での活用が想定されており、自律神経活動や血中酸素飽和度を測定するウェアラブルセンサーなどへの応用に向けた研究開発が進められているとのこと。
ちなみに同システムはもともと、2015年4月1日のエイプリールフールの際に「ウソ」として同社Facebookページに投稿した企画。冗談ながらもコンセプトが話題を呼んだことから、CEATEC開催に合わせ、TECHMACと共同開発で出展が実現した模様。
「光センサーの検出技術は目新しいものではないが、『モノづくりで夢を与える』という出展目的に沿って展示を企画した」(ローム コーポレート・コミュニケーション本部 メディア企画部 広告宣伝課 イベントグループ 小西茉友氏)。
「“ときめき”を数値化することは難しいが、ときめきを生む仕掛けを作り、楽しみながら技術を体験できる展示を目指した」(TECHMAC CEO 北口真氏)。

その後の展開としては、体験者の声をもとに改善を重ね、さらに多様な“ときめき”を生み出すアイデアも検討されていたようです。世界中から注目されたテーマだけに、今後も何らかの形で再登場する可能性はあるかもしれません。
こういう遊び心のある技術って、日常にちょっとしたワクワクをもたらしてくれます。

以上、エゴレジ研究所から「ときめき」についてご紹介しました。ときめきは、心に刺激を与えるだけでなく、生活全体に新鮮さや活力をもたらします。「ときめき」は必ずしも恋愛に限ったものではなく、日常の中に小さな輝きや刺激を取り入れることでも得られます。例えば、新しい趣味に挑戦したり、五感を意識してみたり、周囲との関係を大切にすることで、心が弾むような瞬間を増やせるのです。ときめく瞬間が増えると、私たちの脳は再びドーパミンを分泌し、「幸福感」を感じやすくなります。さらに、心がときめいていると、自分の外見や健康にも気を使うようになり、周囲との関係にもポジティブな影響を及ぼすでしょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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