スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
メンタルヘルスとの関連が指摘されている栄養素には、ビタミン、鉄や亜鉛などのミネラル、必須アミノ酸、EPA、DHAなどが挙げられていますが、食生活がメンタルヘルスに与える影響については比較的新しい研究です。そこで今回は、果物とメンタルヘルスに関する最新の研究をご紹介します。
果物とメンタルヘルスに関する研究
1.英国の英アストン大学の研究
科学誌『British Journal of Nutrition』(2022)に掲載されたアストン大学の研究グループの研究では、果物を食べる回数が多い人は、そうでない人よりも心理的な健康状態は良好で、抑うつの症状は少ないことが明らかになりました。反対に、ポテトチップスなどのスナックを多く食べる人は不安感が強い傾向が示されました。
調査は、食事や生活習慣、心理的な健康、また注意力や記憶力などの認知機能に関する質問票に記入して行っています。食事は、果物、野菜、ビスケットやケーキ、チョコレートなどの甘いお菓子、ポテトチップスや塩味のスナックについて、摂取頻度と摂取量を尋ね、摂取量は約80グラムを1皿として計算しています。
オンライン調査の解析対象は、英国の健康な成人428人、女性が53%、平均年齢は39.7歳(18~60歳)。結果、果物と野菜の摂取は週に4~6回、甘いお菓子や塩味のスナックは週に2~3回で、果物は平均して1日当たり1.9皿、野菜は2.3皿でした。参加者の10%はベジタリアン(菜食主義者)かビーガン(完全菜食主義者)でした。心理的な健康スコアの平均は英国の一般集団と同程度だったとされています。
食事の摂取頻度と心理的な健康との関係を調べたところ、果物を頻回に摂取することは、抑うつスコアの減少と良好な心理的な健康と関連していることが示されました。
果物の摂取頻度が1単位増えるごとに(たとえば週4~6回から1日1~2回に増加)、抑うつスコアは0.188減少し、心理的な健康スコアは0.916増加していました。
一方、スナックを頻回に食べることは、不安の増大と関連した。スナックの摂取頻度が1単位増えるごとに(たとえば週に2~3回から週に4~6回に増加)、不安スコアは0.362増加していました。さらにスナックの頻回な摂取は認知機能の低下と関連していました。認知機能の低下は抑うつ、ストレス、不安スコアの増加、心理的な健康スコアの減少と関連していました。
これらの結果から、果物の摂取頻度を増やすこと、スナックの摂取頻度を減らすことが心理的な健康を改善することになるとしています。
なおこの調査では野菜の摂取と心理的な健康との関連性は示されなかったようです。研究者らは、「調理済みの形で提供されることが多い野菜とは違って、果物は抗酸化物質や食物繊維、ミネラルが豊富に含まれており、生で食べられる点が心理的な健康に影響した可能性がある」と述べています。
2.ワルシャワ生命科学大学の研究
2020年にワルシャワ生命科学大学の研究者らは「メンタルヘルスに効果的な果物と野菜はあるのか?」という点について系統的レビュー(61件の研究をまとめて調査分析)を行っています。
対象は健康な人から精神疾患の患者まで幅広く、測定項目は、うつ病、不安や人生満足度、ストレス、睡眠の質、QoL(人生の質)、自殺願望、自己効力感などを測定するものも含まれていたようです。
レビューの結果
✓果物や野菜の摂取量が多い人は前向きで自己効力感も高く、心理的なストレス度も低かった
✓メンタルヘルス改善効果はベリー系、柑橘系、葉物野菜で特に高かった
✓他にもがんによる死亡やうつ症状リスクも低かった
このレビューにはヨーロッパ、アジア、北アメリカなど幅広い国の研究が含まれており、対象者の年齢も若者から高齢者まで網羅されています。この点ではかなり一般化できる内容と言えるでしょう。
3.日本の研究
日本では、国立がん研究センターと国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが、中年期における野菜と果物、特にフラボノイドが豊富な果物の摂取と、後年の大うつ病性障害(MDD)との関連を評価しています。研究成果は、「Translational Psychiatry」(2022)に掲載されました。
この研究では、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答し、2014~2015年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204人を対象に調査。
※ただし、認知症によって引き起こされたうつ症状と区別するため、認知症を合併している人は除外されました。
2回のアンケートから、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量の平均値を計算し、それぞれについて人数が均等になるよう5グループに分け、摂取量がもっとも少ないグループを基準とし、他のグループのうつ病発症リスクとの関連を調べました。
その結果、1,204人のうち93人がうつ病と診断されましたが、果物の摂取量がもっとも少ないグループと比較して、摂取量がもっとも多いグループでは、うつ病の発症は0.34倍(95%信頼区間 0.15~0.77)となり、果物をよく食べているとうつ病の発症が少ないことが示されました。
また、フラボノイドの豊富な果物の摂取量がもっとも少ないグループと比較して、摂取量がもっとも多いグループでは、うつ病の発症は0.44倍(95%信頼区間 0.20~0.97)となり、やはりうつ病の発症が少ないことが示されました。
果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方をもっとも多く摂取したグループで、うつ病の発症リスクが低かったことから、フラボノイド固有のメカニズムだけでなく、果物全体に含まれる天然由来成分のもつ抗酸化作用などの生物学的作用も、うつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられると考察されています。
一方、野菜ならびに関連栄養素の摂取量と、うつ病との間には関連がみられませんでした。
「本研究では、調査開始時点でのうつ病の情報を得られていないために、調査開始時点のうつ状態が野菜果物の摂取量に影響を受けていた可能性が除外しきれないこと、中高年における研究結果であるため若年者などにも当てはまる結果であるとは言えないことなどが限界点です」と、研究グループでは述べています。
果物の効果的な食べ方
果物は、糖質が多く含まれるものもあるため、とくに糖質を制限していると、食べるのを控えているという人は少なくないでしょう。それでも、糖質が比較的低めの果物もあります。たとえば、100gあたりの単糖量は、イチゴは6.1g、ブルーベリーは8.6g、ラズベリーは5.6g、オレンジは8.3g、グレープフルーツは7.5g、ナシは8.3g、アンズは4.8gとなっています。
海外の研究では、果物を1日100g以内食べていると、血糖、中性脂肪の値が改善し、体重も増加しないことが示されています。
果物や緑黄色野菜には、ビタミンA(βカロテン)やビタミンC、カリウムなどのミネラル、フラボノイドなどが多く含まれます。これらには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する効果を期待できます。もちろん、個人差はありますが、
▼1日に100gを目安にして食べる、
▼糖質が多い甘い果物の食べ過ぎは避ける など、工夫をしながら食べれば、果物による健康効果を期待できそうです。
※注意!
手軽なフルーツジュースや野菜ジュースをとり入れることで、同じような効果を期待できるでしょうか?
残念ながら野菜や果物は加工する段階で不溶性の食物繊維の多くが除かれてしまっています。なので、野菜や果物のジュースを飲んだところで、野菜や果物そのものを食べた時とまったく同じような健康上のメリットは期待できません。
しかも果物に関しては、そのまま食べたときは糖尿病リスクを下げることができるのに対し、ジュースで飲むと果糖のみを摂取していることになるので、血糖値が上がり糖尿病リスクが上昇すると考えられていますので、注意してください。
以上、エゴレジ研究所から果物とメンタルヘルスに関する最新の研究をご紹介しました。研究で果物をよく食べる人のメンタルが安定していた以上、フルーツ習慣を始めてみる価値はあるといえます。実りの秋、ちょうど果物が美味しい季節です。今日は、出始めたりんごや早生みかんなどはいかがでしょうか。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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