「心がツラい」から抜け出すセルフケア

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

親の死や介護、子供の巣立ち、更年期、体の衰え。様々なアンケートから判明したのは、環境や体の大きな変化が、50歳前後の世代の心をツラくさせているという現実。そのツラさから抜け出す科学的な解決方法が提案されています。今回は、神経の観点から「ツラい」から抜け出すセルフケアについてご紹介します。

自律神経に関する「ポリヴェーガル理論」

「ポリヴェーガル理論」は、神経科学者のスティーブン・ポージャス博士が1995年に提唱した自律神経に関する理論です。
これまでの自律神経の捉え方は、交感神経と副交感神経の2つの働きに分けて考えるものでした。ポリヴェーガルは「ポリ=複数の」、「ヴェーガル=迷走神経」に由来する言葉で、「背側迷走神経」と「腹側迷走神経」の説明がこれまでよりも新しく、2チャンネルモードとされてきた自律神経を3チャンネルで説明しています。

《交感神経》
日中や活動中のほか、ストレスや危険を感じたときにも活性化し、不安や怒り、イライラを誘発することも。血管の収縮や胃腸の働きの抑制、瞳孔の散大などの作用がある。

《背側迷走神経》
腸や腎臓などの働きに携わり、ひとりで休息したり、リラックスする際に活性化。過剰に働くと、動物の“死んだふり”状態になり、うつやひきこもりにつながる場合も。

《腹側迷走神経》
顔、のど、耳、心臓、肺の筋肉を支配。他者との関係性の構築や社会的な交流の際に働くため、この神経が上手に働かないと、人と会うのが怖くなったり、気疲れしやすくなる。

自律神経を整える対症療法ワーク

この理論を受け、神経セラピストの浅井咲子さんは、”神経に働きかける方法を提案されています。(以下「 」は対症療法ワークとしてエクラに紹介された浅井さん)

私たちは、一日の間で、交感神経、背側迷走神経、腹側迷走神経のいずれかが優位であるという状況を繰り返しながら、生活しています。そして、これら3つの神経がバランスよく切り替わることで、心身の健康は成り立っているのです」

「その不調を改善するのに役立つのが、ここで取り上げるワーク。『あっ、きた!』と思ったときの対症療法として行うほか、ツラい状況に陥る予感がある際に、予防策としても活用してください」と、浅井さんは提案されています。

 1.トイレでぎゅーっと“酸っぱい顔”
人に会うことがストレスになりやすい人は、顔の筋肉を総動員して腹側迷走神経のスイッチをオンに。「梅干しを口に入れたときのような酸っぱい顔をイメージし、目と唇を顔の中心に寄せるように力を入れ、3秒間キープを。気が重い相手に会う前の予防策として有効です。周囲に人がいるとやりづらいかもしれないので、トイレなどを利用するのもおすすめ」

2.重さのあるものをすねにのせる
「睡眠トラブルの対症療法におすすめなのが、両脚のすねに重さをかけること。誰かにすねを押してもらうのがベストですが、むずかしければ、米袋やそば殻の枕など、2kgくらいの重さで、すねにまんべんなく接するようなものをのせてください。10分もすれば交感神経が落ち着き、眠くなってくると思います」

3.背骨をサポートする
長時間立ったまま&座ったままだと背骨に負担がかかり、交感神経が優位に。「そんなときは、背骨を休め、背側迷走神経の活性化を。あおむけになり、丸めたタオルなどを、背骨のS字カーブと床の間にできたすき間に横向きに入れましょう。背骨全体を支えるように縦向きに入れてもOK。座って行う場合、背もたれと首や腰とのすき間にクッションなどをはさんで」。

4.遠くの音に耳を傾ける
「ふだんはスルーしている、学校のチャイムのような遠くから聞こえる小さな音に、意識的に耳を澄ませてみましょう。『何かを聞こう』という姿勢は、環境とつながる行為そのもの。腹側迷走神経が刺激されます」。不安や疲れなどを感じ、防衛モードに入っていると思ったらトライを。

5.腸の動きに意識を集中する
腸と脳は、自律神経などを介して互いに影響し合っている。「人と会うと気疲れしたり、光や音、匂いなどに過敏に反応してしまうときは、腸の動きに意識を集中してみましょう。腸に手を当て、均一なリズムで呼吸すると、気持ちが穏やかになり、安心できると思います。腸の状態が整うと、環境や人に対する過敏さが抑えられるようになるのです」

6.電車でキョロキョロする
心がツラくなったら、周囲を見渡し、見えたものを3つ、心の中で唱えて。電車の中ならば、「広告、サラリーマン、学生」といったぐあい。自分が、そうしたまわりの環境とつながっていることを意識でき、腹側迷走神経が優位に。「ただし、具体的な人物を思い描き、相手が自分をどう思っているかなどと考えるのは、交感神経が刺激されるので逆効果」

7.ほっぺたに温度刺激を加える
「疲れて、ひと息入れたいと思ったとき、無意識に頰杖をついていませんか? それは、頰に刺激を与えると、腹側迷走神経が優位になり、心が落ち着くからなのです」。イチ押しは、心地よい温度刺激。自販機の飲み物などを利用し、暑い日は冷たいもの、寒い日は温かいものを頰に当てるように。

8.「べー」っと舌を出す
「過度なストレスがかかると、のどがつかえるような症状が起こることも。これは、背側迷走神経が過剰に働き、休息を通り越して低エネルギー状態になりつつあるサイン。思いきり舌を出し、舌咽(ぜついん)神経と顔面神経を刺激し、腹側迷走神経を優位に」

9.「馬の呼吸」を使う
「馬は呼吸するとき、口のまわりをブルブルと震わせます。実はこれ、腹側迷走神経を育むのに最適なのです」。口または鼻から大きく息を吸い、唇を軽く閉じたまま、息を思いきり吐き出す。すると、唇がぶるぶると震え、口輪筋という口まわりの筋肉が活発に動く。顔面神経が働き、腹側迷走神経への刺激になります。

10.夕日を眺める
日中は交感神経が優位で、夕方以降は副交感神経が優位になるもの。けれど、忙しすぎて、夜になっても交感神経優位なままというケースも。「夕日を眺めることで、『そろそろ交感神経を切り替える時間だ』と意識しましょう。部屋を暗くし、ろうそくの火を見つめるのもよいです」

 11.望遠鏡をのぞくふりをする
腹側迷走神経を育てるには、目のまわりの筋肉をまんべんなく動かすのも有効。とはいえ、パソコンやスマホなど至近距離のものを見る機会が多く、使われる筋肉が限定されているのが現実。「実際に遠くを見るのがむずかしければ、両手で筒をつくって目に当て、『望遠鏡で遠くを見ている』と想像しましょう。それだけでも、ふだんとは違う筋肉が刺激されます」

12.「ぼぉーーーーー」「ぶぅーーーーー」と声を出す
船の汽笛をまね、「ぼぉーーーーー」などと声を出すと、のどが振動するはず。咽頭や喉頭、心臓によい刺激が加わり、そこを通っている腹側迷走神経を鍛えることに。「耳の中にも腹側迷走神経が通っているため、自分が発した声を聞くことで、気持ちが落ち着くという効果も得られます。朝、出勤前の習慣にすると、日中活動的に過ごせると思います。

「順番としては、背側迷走神経を活性化させるワークから行うのがおすすめ。ひとりで過ごす時間を満ち足りたものに感じ、リラックスできるだけでも、心のツラさは、かなり軽減するはずです。ただし、これはあくまでも目安。習慣として取り入れやすいもの、やってみて、心地よいと感じたものを選んでもかまいません。2~3カ月続けるうちに、変化が感じられるようになると思います」

以上、エゴレジ研究所から、神経の観点から「ツラい」から抜け出すセルフケアについてご紹介しました。「ツラい」から抜け出すには、自律神経にアプローチするのが効果的。とはいえ、自律神経は私達の意志とは関係なく働いています。そのため、自律神経とうまく付き合うには少しのコツがいります。そのコツを知り、習慣化し安心を少しずつ育むことができれば、調子が悪くなった時や問題が起こってしまった時も、気楽な状態を保つことができ、逆境や挑戦にも対応が可能になります。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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