代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
「読書」「スポーツ」「芸術」と並び、「食欲」も盛り上がる秋。本来「食欲の秋」は、収穫の時期を迎え、自然の恵みを享受する喜びを表現した言葉ですが、実は秋には過食に陥る要因が潜んでいます。今回は、この時季に何かと話題になる「食欲」についてのお話です。
目次
なぜ「秋」に食欲が増すのか?
昔から「食欲の秋」と言われますが、実際、夏が終わり涼しくなってくると 「食べたい」欲求が増して食べる量が増え、体重増加につながってしまう人が多いようです。
なぜ「秋」に食欲が増すのでしょうか? 食欲に影響のある要因は様々あり、それぞれが複合的に絡んでいるので単純には言えませんが、これまで研究結果として出てきていることの中からある程度根拠と裏付けのあるものをいくつか挙げてみます。
1.日照時間減少・照度低下との関係(セロトニン分泌低下)
夏から秋になると、日照時間が減少して明るさが低下しますが、精神の安定化を保つ作用のある脳内の神経伝達物質で、食欲の調整にも深く関わっているセロトニンは、日光にあたった時間によって分泌量が調整されることがわかってきました。つまり、
日を浴びることが少ない秋には、夏に比べセロトニン分泌量は減少してしまうのです。秋になると食欲が増すのは、たくさん食べたり眠ったりすることでセロトニンを増やし、精神の安定を保とうとするからではないかと言われています。
上図に初夏から初秋にかけての東京の平均日照時間と日射量(面積当たりの日の光の強さ)を比較しました。9月~10月にかけて、日照時間・日射量ともにガクンと落ちています。
確かに9月以降は暗くなる時間が早い!と感じます。この流れで、身体はだんだんと冬モードに切り替わって行くものなのですが、近年は猛暑の影響などもあり、身体はまだまだ夏モードを引きずっている状態。上手に冬モードにスイッチできないことがストレスの原因になり、過食を招いてしまうことがあるそうです。
抜けない疲労感や、気分の落ち込みがある、あるいは過度に甘い物が食べたくなるなど、体が発するサインがある場合、「この食欲は、ストレスからくる過食かも?」と疑ってみてください。
ストレスの影響でだるさを感じると、日常生活における非運動性身体活動(家事や日動動作としての立ったり座ったり、階段の上り下りの他、会社での仕事など、日常の運動とは言えない活動の中で産まれるエネルギー代謝全般)が減少しがち。そうするとエネルギー代謝のバランスが悪くなり、睡眠の質を下げてしまったり、体重が増量してしまう…ということを招いてしまいます。
だるいなぁ〜と感じるときこそ、15分程度のウォーキングをしてみると、案外すっきりと気分良くなり、秋のストレス対策にも効果的です。
これからどんどん日が落ちるのが早くなりますが、食欲の調整のためにも、晴れた日には外に出て、軽い運動で気分転換することを心がけた方が良さそうです。
2.気温変化とからだの反応
もうひとつよく言われているのが気温の低下による基礎代謝の変化です。気温が下がると、体温保持のためからだの熱産生が高まり、基礎代謝が上がることは良く知られています。
過去の文献では、夏に低下した基礎代謝が秋から冬にかけて上昇することが示されています。基礎代謝が上がれば、それだけエネルギーを多く使ってしまうため、その分を補給しようとお腹がすくことも頷けます。
しかし、近年ではエアコン等空調機能の発達で、季節変化による基礎代謝への影響はほとんど考慮しなくても良いのではないかと言われています。
3.その他の要因
その他にも、
「夏バテ気味で低下していた食欲が、涼しくなって回復する」
「秋は美味しくなる旬の物が多いので、食べたくなるのは自然なこと」
「食べ物が捕れなくなる冬に向けて秋のうちに食べて身体に蓄えておくという、生き物の自然の摂理」など、
とにかく「食欲の秋」の出所を探ろうとするといろいろな話があり、「ナルホド、そうかもしれない」と、納得のいく説がたくさんあります。
秋になり食欲がアップするのは、こうした様々な要因が影響しあい、相互作用しあって「食欲の秋」へとつながっているのだと思います。
秋の食べ過ぎを防ぐ
とはいえ、納得してばかりもいられません。食べ過ぎてしまうと、まずは体重増加が目に見える変化として表れます。摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうと、消費できなかったエネルギーが身体に貯蓄され、脂肪へと変わるためです。また、食べ過ぎは胃への負担も大きいです。どんどん胃へ食材を流し込むと、胃の消化が追いつかず、消化不良を起こしてしまいます。いうまでもありませんが、食べ過ぎは体に良いとはいえません。そこで、秋の食べ過ぎを防ぐ方法をいくつかご紹介します。
◆腹八分目を心がける
食べ過ぎを防ぐためには、普段の食事を腹八分目でとどめておくことが重要です。「もう少し食べたいな」と思うところでやめておく習慣をつけることで、体重増加や胃への負担を減らせます。
◆低カロリーなものを食べる
少量のご飯で満足できない人は、低カロリーなものを食べると良いでしょう。多少たくさん食べてしまっても、カロリーが低いためお腹も満足しつつ、健康にも良いですよ。
例えば、きのこ類は低カロリーなうえ、秋が旬の食べ物なのでおすすめです。
◆美味しいものを少量食べる
人には、風味によってもたらされる感覚特異的満腹感というものがあります。感覚特異的満腹感とは、「もうお腹がいっぱい」と脳に感じさせる信号のことです。
この感覚特異的満腹感をうまく活用すると、少量の食事でも満腹感を得られやすいです。
「美味しい料理なら、たくさん食べなくても満足した」という経験がある人もいるでしょう。
◆軽い運動で脂肪が燃焼しやすい体に
運動不足は、脂肪の蓄積を助長する要因の一つです。脂肪へと変化してしまうエネルギーを効率よく燃焼させるために有効的なのは、軽いジョギングやウォーキングなどの有酸素運動です。体脂肪を効率よく燃やすには、血液に含まれているエネルギーを消費することが有効なので、無酸素運動よりも有酸素運動の方が、ダイエットに向いているということになります。運動時間の目安は特にありませんが、重要なのは毎日続けることです。1日10分など無理のない時間を設定し、継続することを心がけましょう。
◆良質な睡眠で痩せやすい体をつくる
睡眠不足に陥ると、自律神経やホルモンバランスを乱し、太りやすくなります。また、食欲を抑える働きのあるセロトニン不足も招きます。良質な睡眠を十分にとって痩せやすい体をつくりましょう。
質の良い睡眠を手に入れるためには、リラックスして神経を落ち着かせることが大切です。おすすめは、夜ゆっくりと湯船に浸かること。自律神経が整えられ心が落ち着きます。また、ストレッチなどを行うと血流の流れが良くなりリラックスした状態になるため、快適な睡眠につながります。
以上、エゴレジ研究所から、この時季に何かと話題になる「食欲」についてご紹介しました。食欲の秋も毎日の食生活や生活習慣を見直し、ちょっとしたコツを身につけるだけでも太らない体づくりをすることができます。いろいろな食材が天候などの関係で値段が高くなっていますが、食べ過ぎに注意しながら、秋の実りを楽しみましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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