代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
日々ストレス社会の中で働いていると、どうしても心がすり減ってしまいやすいものです。休みでも疲れが取れた気がしない。いつもイライラとして気持ちに余裕がない。そんな自覚がある場合には要注意です。心身の不調に敏感で適切な対処ができる人はいいのですが、気をつけたいのが、メンタルが弱っていることに気づかず無理をしてしまう人。そこで今回は、心が弱っているときのサインについてのお話です。
無理をする人・無理をしてしまう人
無理には2つあります。意識してやっている無理と、自分では気がつかないうちに無意識にしている無理です。
たとえば、今やっている仕事が好きな人は、自分の体のことは後回しにして、ついつい無理して仕事を優先させてしまいます。意識して無理しているツケが、自律神経のバランスの乱れとなってさまざまな症状をつくってしまうのです。
一方、無意識にやっている無理は、なかなか気がつきません。以下のようなことに思い当れば、知らず知らずに無理をしているのです。
✓ 強がってしまう
✓ 1人で物事を解決しようとし、助けを求めない
✓ 完璧主義(サボらない)
✓ 体調が悪くても何かしている
✓ 気丈に振る舞う
✓ 責任感が強く、自己犠牲の精神が強い
✓ 頼られやすい
✓ 嫌な誘いや依頼を断れない
✓ 我慢している
無理をする人、無理をしてしまう人は我慢する機会が非常に多くなりやすく、余計なことを考えすぎてしまうこともあり疲労体質になってしまいやすいのです。
無理をしなければいけない場面は時には必要ですが、無理する人は「これは嫌だ」と表現することが苦手なので我慢をしてしまう機会が多く、疲れてしまうのです。少しづつ積み重なった無理が「うつ症状」につながらないようにするためには、まず、自分の心が弱っていることに気づくことです。疲れていることにすら気がついていないのが一番危険です。
気づかないうちに「うつ症状」に
NPO法人メンタルレスキュー協会理事長である下園壮太(しもぞの・そうた)さんは次のように警告されています。
「つい無理をしてしまう人」は見方を変えれば、「無理をしないことができない人」と言えるかもしれません。このように、オーバーワーク気味になる方にはいろいろな理由があるのですが、なかでも多いのが、「無理をする自分」が好きというケースです。「頑張っている自分」が好きなのです。
ここで注意してほしいのは、そういう方は、無自覚のうちにうつ症状が進行しているケースも多いということ。
私は無理をすることによるうつ症状の進行を3段階で考えています。第1段階は健康な状態。でも、第2段階、第3段階と進むうち、心身にはさまざまな症状が表れます。そして、第2段階になれば感じる疲労は2倍、第3段階になれば3倍になるという特徴もあります。
【無理によるうつ症状の変化】
ビジネスパーソンのなかで第2段階にある人は全体の20%ほどに上ると考えています。しかも、大けがをしたなどわかりやすい症状があるわけではありませんから、休まず、病院に行かず、栄養ドリンクを飲んで無理を続ける。私から見ると、多くのビジネスパーソンがそんな危うい状況で仕事を頑張り続けているのです。
心が弱っているときのサイン
心と体は密接に関連しています。心に不調をきたすと、だるさや肩こり、頭痛、吐き気、痛みなど体にも不調が出てきます。逆に、日常生活で疲れがたまったり体の不調があったりすると、気分まで落ち込むなど精神的にも不安定になるものです。
心が疲れたり弱っているときというのは、どんなサインが出るものなのでしょうか?
「別に心に不調なんて感じていない」と思われている方も、以下に当てはまったら要注意です。
◆心のSOS
心が疲れて弱っている時には、ストレスを感じやすい心の状態になっています。自分では気付かなくても、様々なサインや症状であらわれます。
▷ 些細なことでイライラしてしまう(怒りっぽくなる)
▷ 好きなことでもテンションが上がらない
▷ 常に不安感に苛まれる(気がはりつめている、落ち着かない、すぐに不安になる)
▷ 物事に集中できない
▷ わけもなく悲しくなる
▷ ど忘れが増える
▷ 寝つきが悪い
感情の変化は、心の健康状態をチェックできる大切なバロメーター。いつもなら平気でスルーできることにも、やたらとイライラしてしまう時は、心が弱っているサイン。「イライラ」サインは比較的早い段階から出始め、さらに怒りの感情が伴う場合は自分でも割合気づきやすいサインです。ただ「イライラは心が追いつめられているサイン」ということを知らない方も多いので、「最近イライラしやすい」と気づいたら、ちょっと立ち止まって心を休ませることを考えましょう。
最も高いストレスレベルで確認されているのが、やる気の喪失や集中力の減退などのサイン。「ちょっと前はあれだけやる気があったのに、最近、どうもやる気が出ないし、仕事の能率も下がっている」ときなどは気づきやすいサインです。
◆身体が訴えるサイン
明らかな原因を特定できない腰痛や虫歯もないのに歯が痛むなどは、心因性である場合が多いのです。ほかにも心が弱っているときには、次のようなサインが出やすいものです。
▷ 頭痛やめまいがする
▷ 首や肩のコリ、腰痛がある
▷ 目が疲れる
▷ 動悸や息切れがする
▷ 食欲がない、または過食気味である
▷ 便秘や下痢等、胃腸の具合が悪い
▷ よく眠れない(寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚める、または逆に眠り過ぎる)
痛みをはじめとした身体の不調は「自分が自覚しているよりも、心が弱っている」と気づかせてくれるサインでもあると認識しましょう。
こうしたサインに気づいたら、原因が何なのか追求してみるのも良いですが、それよりも心が弱っている自分の状況を素直に受け入れて、休ませてあげましょう。まずは自分をいたわり、無理をしないで十分な休養をとること。特に、十分な睡眠をとることは一番重要です。休みの日は無理して予定を入れずに家でのんびりと過ごしたり、自分の好きなことをしてリフレッシュしたり、できることでストレス発散を心がけましょう。忙し過ぎて、ゆっくりできる時間が作れないのであれば、隙間時間にストレッチやエクササイズなどをするだけでも、気分をリフレッシュできます。
そして、エステやマッサージ、整体、ゆっくり入浴してリラックスする、軽い運動など、体の外側からケアしていくことも大事です。自分を守れるのは、自分の行動しかありません。我慢し続けるのではなく、違った目線で物事をとらえられる人に相談するところからスタートしてみましょう。それでも症状が続くようでしたら、早めに医療機関を受診しましょう。
以上、エゴレジ研究所から、心が弱っているときのサインについてご紹介しました。ちょっと自分の心の声を聞いてあげると、自分の「したくないこと」「無理していること」が分かってきます。大人の女性として振る舞うことに疲れてしまわないよう、時には自分に甘く自分を労わり、自分を大切にしてください。心身ともに疲れを溜めないよう適度に解消し、明日からまた頑張っていきましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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