代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
日々同じような生活を送っていると、何となくつまらない。何か面白いことは無いかなぁ、と考えてしまうことがあります。確かに平凡な毎日というのは飽きやすいものです。では「面白いこと」とはなんでしょう。「面白い」って何が面白いのが、その事象を一般化した概念にまで、論理的に考えたことがある人はいないと思います。そこで今回は、「面白い」に注目したお話です。
「面白い」を学術的に著した論文
社会学者のマレー・デイヴィスが書いた論文“That’s Interesting ”(1971)では、「面白い」ということは、それまで常識として考えられてきたことを覆したり、あるいは今まで考えていたいたことと異なる意見が提示されること、としています。「面白い」ということを生真面目に論じていいます。ちなみに、ここでいう「面白い」は、Funny(滑稽)な面白さではなく、知的好奇心を刺激するような Interesting (興味深い)な面白さです。
講演ヤセミナーなどで、自分の知っていることばかり語られても、面白いとは思いません。自分の知らなかったことや、定石ではない考え方が語られると、「ん?何々?」と、知的好奇心が刺激され、興奮すら感じます。論理的であるかどうかは微妙ですが、「自分の知見に裏切られること」が面白い、ようです。
12通りの「面白い」のパターン
「Interesting」の「面白い」に関して、12通りのパターンがあると指摘したデイヴィスの論文を、神戸大学大学院経営学研究科准教授の服部泰宏先生が解説されているので引用します(Business Insider Japan,”未来を変える”プロジェクト,2019)。
(1)普遍性 Generalization
ある特定の分野にしか当てはまらないとみなしているものが普遍的だった、あるいは普遍的なものと思われるものが局地的な分野にしか当てはまらないと、面白い(例:非効率とみなされていた官僚制組織が、ある条件のもとではイノベーションの要因になる)。
(2)組織性 Organization
無秩序だと思われていたものに秩序を見いだす、あるいは秩序の中に無秩序を見いだすと、面白い(例:渡り鳥の群れは一見して無秩序だが、一羽一羽の行動メカニズムは極めてシンプルに保たれている)。
(3)因果 Causation
原因だと思っていたことが実は結果だった、あるいは結果だと思っていたことが実は原因だと、面白い(例:強い組織や強い職場は、強い個人によって支えられているが、一方で強い組織や職場からこそ、強い個人が生まれる可能性がある)。
(4)反対性 Opposition
類似していると思われていたもの同士が実は正反対の性質を持っていた、あるいはその逆だと、面白い(例:政治学において、極右と極左は「自己の真理に対する絶対的信仰」という意味で、同じ根源にある)。
(5)共変動 Co-variation
ある特定の二つの要因は「正の共変関係(同方向)」と思われていたのが、「負の共変関係(逆方向)」あるいは「非線形(U字や逆U字)」であると、面白い(例:不確実性が高くなるほど、組織は今までとは違う「新しいこと」を仕掛けていくようになると思われているが、むしろ、組織に「慣性のロック」がかかって硬直的になる)。
(6)共存性 Co-existence
共存しないと思われていたものが共存しうる、あるいは、共存すると思われていたものが相容れない場合があると、面白い(例:愛と憎しみは表裏一体である)。
(7)相関関係 Co-relation
相互に独立していると思われていたもの同士の間に関係がある、あるいは相互に依存していると思われていたもの同士の間に実は関係がないと、面白い(例:風が吹けば桶屋が儲かる)。
(8)機能性 Function
ある目的を達成するために、まったく意図しないものが実は重要な機能を果たしていると、面白い(例:一見無駄と思われた会議が、実はメンバー間の知識共有を重層化し、コミュニケーションを活性化する機能があった)。
(9)抽象 Abstraction
個別事由と思われていたことが、実は社会全体の問題だった、あるいはその逆だと、おもしろい(例:街中で落ちているゴミを拾うかどうかは、その人が「善人」であるかどうかだけではなく、その地域の人間関係の良好さやコミュニティの親密さなど、より社会的な要因にもよる)。
(10)複合 Composition
単一と思われていたものが複数の異質なものから構成されている、あるいは異質なものの集積が、実は同一のものの集積であると、おもしろい(例:「企業文化」とは一つの企業に一つの文化があまねく共有されているものだとされているが、実は、年代や部門、職種によって異なっている)。
(11)評価 Evaluation
否とされていたものが可だった、あるいはその逆だと、おもしろい(例:過度の飲酒は健康を害するが、適度ならストレス解消効果や血行促進効果があるため、健康に良い)。
(12)安定性 Stabilization
不安定なものの中に安定性を見いだす、あるいは安定しているものに不安定性を見出すと、おもしろい(例:経営学者のチェスター・バーナードによれば、一見安定している組織には、1. 共通目標、2. コミュニケーション、3. 貢献意欲の三つの条件が揃わなければ成立しない。そのため、組織は不安定である)。
この論文では便宜上12パターンを明確に分けていますが、厳密的には2つ以上がセットになっていたり、密接に関係していたりします。そして、先ほどは「Fun」と「Interesting」を明確に切り分けましたが、実は根底のところでつながっていると思います。
例えば、落語家で人間国宝の桂枝雀さんはかつて、笑いは「緊張の緩和」によって起こると定義していて、なかでも、私たちが常識だと思っていることが意外な展開で不安定になると、そのギャップによって笑いが起きる、と言っています。それはまさに「Fun」に通じるところがあります。
しかもそれは、ギャップが大きすぎても面白くなくなってしまう。日常と地続きのことを話しているから面白いのであって、SFやファンタジーのように日常とかけ離れてしまうと、「そんなことありえない」と感じる人もいるでしょう。社内のレクリエーション活動が、あまりに日常と離れすぎてしまうと、面白くなくなるのもそういったことです。
実生活で「面白い」と感じる9種類
以下は、エリアブルー上で「生活を面白いものへ変えるために応用することができる」と紹介されたものです。
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「面白い」というのは、人間にとって本質的な感情です。「面白がる力」はありますか?
「面白がる力」というのは、
「あらゆる物事の中に、自分にとっての面白さを発見し、エネルギーや行動力や満足感に変える力」だそうです。
イオンの専務であり「プロボカティブ・シンキング(面白がる思考)」の著者、山梨広一氏は、「解答はないし、前提そのものが変わる現代では、まず主体的に面白がるマインドセットと、不可能や前例に諦めない鈍感力が必要です」と語っています。
以上、エゴレジ研究所から、「面白い」に注目したお話をご紹介しました。皆さんには「面白がる力」はありますか? 面白いことがあって面白がるのではなく、まず何に対しても面白がるようにしたい。新鮮な刺激を喜ぶことです。面白がると、心が躍り始め、わくわくする気持ちが高まります。感性が刺激され、どんなことでもポジティブな刺激に変わります。面白がると、感性を豊かにする材料にできます。異物を取り込むから、クリエイティブな力が強くなります。世の中には、不思議なことがたくさんあります。平凡な日常生活にも非凡なもので溢れかえっています。それらすべてを、怖がるのではなく、面白がりましょう。
面白がる力は、自分の知らないことを学び、「まずはやってみよう」という行動の原動力になります。さらに勉強意欲や好奇心を生み、今まで漫然と見過ごしていた中からも何かを得ようとアンテナを張るようになります。 一方面白がる力がなくなると、目の前の課題以外に興味がなくなり、なにごとも決まりきったルーティーンでやりすごすようになります。面白がる力に必要なのは創造力と頭の柔らかさです。固定観念をなくし、様々な角度から物事を見る訓練をすれば頭も柔らかくなります。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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