代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
WHOの”Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak(コロナウィルス蔓延中のストレスへの対処)”と題するパンフレットには、十分な睡眠や適度な運動、人とのつながり、COVID-19関連の情報に触れすぎないなどの対策があげられています。今回は、長期化するコロナ災禍でのメンタルヘルス対策として、セルフ・ケアをとりあげてみました。
セルフ・ケアとエゴレジ
メンタルケアの基本は、「セルフ・ケア」、つまり自分を大切にしていく生活習慣です。早稲田大学准教授で精神科医でもある西多昌規先生も指摘されているように、これからは、新しい生活様式にのっとった、持続可能な自分なりの「楽しみ」「安らぎ」を積極的に見つけていかなければなりません。いつまで続くかわからない自粛生活では、こういう癒やしがなければ精神的 なバランスは保てないでしょう。節度ある楽しみや癒しを批判する差別や誹謗中傷、「自粛警察」のような行動は、メンタルヘルスの敵です。
楽しみや安らぎを見出す、といったコロナ禍のストレスを前向きに考えることは、重要なセルフ・ケアです。前向きに何かを進めようとするとき、何より必要なのは「柔軟性」です。エゴ・レジリエンス(エゴレジ)は、状況に応じて柔軟な調整、選択ができる力です。エゴレジを発揮することで、日々の生活に楽しみや安らぎを見つけることができるでしょう。日々の散策や読書、ベランダや庭のある人は草花の手入れでもいいのです。まずは行動してみること。運動にからめたものであればなお良いでしょう。
今日のエゴレジ力チェックリスト
※エゴレジ力は、ちょっとした日常の行動やものの見方によって変化します。
14項目の一つでも1点高められるようチャレンジしてみましょう。
答えのない事態につきあっていく力とエゴレジ
コロナ禍の今こそ必要なのは、「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない状況に耐え、受け止める力:ネガティブ・ケイパビリティ」です。これは、精神科医で作家の帚木蓬生さんが2017年4月に上梓した、『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)で紹介されています。もともと詩人のジョン・キーツが作った言葉で、それを精神科医ビオンが再発見し、論文の中で記述したことで、今のように知られることとなりました。私たちは、答えがないと、答えを求めようと不安になります。不確定で答えがわからない問題に、安直にハウツーを求めようとうせず、つき合っていく能力がネガティブ・ケイパビリティと言えます。「宙ぶらりんの状態をそのまま保持し、間に合わせの解決で帳尻を合わせず、じっと耐え続けていくしかありません。耐えるとき、これこそがネガティブ・ケイパビリティだと、自分に言いきかせます。すると、耐える力が増すのです」と帚木さんは書いています。心理学でいう「曖昧さ耐性」とも共通するものです。曖昧さ耐性の低さは,精神的不健康に繋がりやすい傾向があることが示唆されています。専門家でも意見が分裂しており何が正解かわからないコロナ禍の状況では、まさに必要な能力であることは間違いないでしょう。エゴ・レジリエンス(エゴレジ)の高い人は、粘り強さもその特徴の一つです。エゴレジの力を高めることが曖昧さ耐性を高めることに結びつくと考えられています。
帚木さんは今の状況を「“巣ごもり状態”という、私たちに与えられた稀な時間がある今だからこそ、じっくり考える時間を持って、理性(知的体力)を研ぎ澄まし、夫婦、親子、そして関わりのある人との共感を取り戻して欲しいです。寛容さも養ってください。私たちは、(答えのない事態で)ネガティブ・ケイパビリティと出会ういい機会を与えられたのです」と語っています。
「ユーモア」「笑い」とエゴレジ
先の西多昌規先生も推奨されているように、ユーモア、それに笑いのある生活を送ることも「セルフ・ケア」の一つです。
エゴ・レジリエンス(エゴレジ)の高い人は、面白アンテナの感度が高いのです。ユーモアや笑いのセンスがあります。笑いは免疫力をアップすることも既に周知の事実です。エゴレジ力を発揮することで、日常生活にユーモアや笑いを取り戻しましょう。
ユーモアが苦手であれば、せめて不機嫌にはならないようにしたいものです。不機嫌も感染性が強く、自分も含めて周囲を病ませる可能性があります。ユーモアには、物事のネガティブな側面にポジティブ要素が含まれています。ユーモアどころではないという人がいるのも理解できますが、メディアやSNSに見られる不愉快なニュースや誹謗中傷などネガティブに染まりやすい現代だからこそ、ユーモアや笑いの重要性を強調したい、という西多先生の指摘は的を射ていると思います。
ヴィクトル. E. フランクルによるナチス強制収容所生活を描いた「夜と霧」では、「ユーモアは自己保存のための戦いでの、魂の武器の一つである」と書かれています。
予想できないほど大きな外部環境の変化に、日々、不安と閉塞感に苛まれている人々が多いようです。なかには、抑うつ状態に陥っている人もいるでしょう。自分のエゴレジ力を高めるための試みは、変化に柔軟に対応してしなやかに生き抜くために役立つはずです。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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