新しいことへの挑戦とアンチエイジング

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

新年の抱負や新年度の始まり、何か大きな変化が起きた時など、節目の時には多くの人が「何か新しいことをはじめよう」という気持ちになります。とはいえ、若いうちはエネルギッシュで「何でも来い」状態だったのが、年をとるにつれて保守的になり、「新しいことにチャレンジするのは億劫」になり、「ワクワク」「ドキドキ」することも少ない生活になってきます。基本的に人間は変化を嫌うものなので、抵抗があるとは思いますが、できることなら、いくつになっても新しいことに挑戦するパワーは持ちたいものです。そこで今回は、アンチエイジングに関連する新しいことへの挑戦についてのお話です。

40歳代から始まる感情の老化

コロナ禍の影響もあり、外出するのが億劫になっていませんか。新しい発見で「なるほど!」と感心する出来事はありましたか。学びたい、どこかに出かけたいという意欲はありますか。昔に比べ、感動することが少なくなった、アイデアが湧かなくなった、頑固になった…というような自覚症状はありませんか。それは感情老化のサインかもしれません。

精神科医で『「感情の老化」を防ぐ本』(朝日新聞出版)の著者、和田秀樹先生は同書の中で次のように指摘されています。

“40歳代から始まる感情老化をくい止めるには、萎縮し始めた前頭葉に「活」を入れ、脳を甘やかさないのが一番。そのためには、マンネリ化した生活を見直し、積極的に驚きや感動と出会うのが早道です”

“年をとると「最近は何を見ても昔ほど感動しない」という声をよく聞きますが、これは前頭葉の働きが衰えて、少しの刺激では感情が動かなくなったからでしょう。詳しく言うと前頭葉の中の「前頭前野」という部分が感情をつかさどる中枢なのですが、実はこの前頭前野の大好物は「ときめき」なのです。ドキドキ、ワクワク、ときめく心があれば、いつまでも老化と無縁でいることも夢ではありません。「胸がワクワクワクするようなことを見つける」「楽しいと思えることはなんでもやってみる」。そんな単純なことで前頭葉の老化を防げるなら、やってみない理由はないでしょう。”

前頭葉は、記憶や意欲など感情の働きとも深く関係しています。実は前頭葉は脳の中で最も老化が早いといわれています。個人差はあるものの、前頭葉の萎縮は40代から見られ始め、さらに60代、70代でさらに進むようです。前頭葉が萎縮すると、相手の感情を推し量ったり、共感したり、感動するといった感情の働きが鈍化し、意欲も低下します。感情の平板化(喜怒哀楽の表現が乏しくなる)がおこり、外の世界に関心がなくなります。また外出しないと、運動の機会も人との交流も減り、体と脳の機能もさらに弱るようです。

最近の研究によると、「それまで馴染みのないスキル」を学ぶことで、記憶力が大幅に向上することがわかっています。この研究では、被験者を3つのグループに分け、1つ目のグループにはキルトや写真などの新しいスキルを学んでもらいました。2つ目のグループには、ゲームなど、人とのコミュニケーションが必要で、新しい要素はまったくない活動を、3つ目のグループには、クラシック音楽の鑑賞やクロスワードパズルのような1人でできる活動を行ってもらいました。
その結果、記憶力の向上が見られたのは1つ目のグループでした。このことは、中年期以降にも頭を使う必要性があることを示しています。研究に示されたように、新しいスキルを身につけて記憶力を向上させる方法は誰にとっても有効ですが、年齢が上がるにつれ、新しいことへの挑戦は頭脳の健康を保つうえで欠かせない要素になるようです。

トキメキで「前頭前野」の活性化

40歳代から始まると言われる前頭葉の萎縮の進行をくいとめるには、前頭葉の血流をふやすことや刺激を与えることが有効なようです。
その前頭葉を活性化させるシンプルな方法があります。それはトキメキを感じることです。恋愛で人を好きになることだけが、トキメキではありません。前頭葉は、展開がどうなるかわからないことや、思いもよらないことなど先が読めない事が起こると血流が増加し、活発に動くようです。また初めて会う人対面して会話する時は、その人を理解しようと前頭葉が活発に動くようです。

意外性や非日常に対応することで前頭葉を活性化させる

・いつもと違う新しい通勤コースや散歩ルートを開拓する
・行ったことのないお店で美味しいものを食べる、買い物をする
・行ったことのない場所の景色を見に行く
・使ったことのない珍しい食材を探して料理をする    など

考えを固定化しない、新しい分野を理解しようとすることで前頭葉を活性化させる

・普段読まないジャンルや作家の本を読む、映画を見る
・先の読めない大どんでん返しの映画やドラマを見る
・今、興味を持っている事について調べる
・新しい趣味をみつけたり、サークルやボランティアに参加して、人と交流する   など

新しいことへの挑戦と失敗の恐れ

新しいことに挑戦しようとすると「失敗した時のことを考えてしまい、なかなか勇気が出ない」という人もいるでしょう。失敗した時のことを予め想像しておくことは、リスク回避のために確かに必要です。しかし、失敗を恐れるあまり、刺激のない生活を続けるのは危険です。それが感情の劣化を促進させることになってしまうからです。大切なのは、多少の失敗があったとしても前に向かって進むこと。そんなチャレンジ精神と意欲が感情の老化をくい止める特効薬になると先述の和田先生は指摘されています。刺激のないマンネリ生活が続くほど感情の老化は進みます。

「失敗することはダメなこと」と思っていませんか? たとえ失敗したり、期待した結果が得られなかったりしても、そこから学ぶことができれば失敗にはなりません。
今までやったことないことを行うので、完璧にできないほうが当たり前です。「完璧なんて無理!」という気持ちを念頭に置いて、「なんとなくできそう」という根拠のない自信があれば、ハードルは越えられます。自分の可能性を信じましょう。

もし失敗した時、それを周囲に知られるのが恥ずかしいという人もいるでしょう。しかし、他人はあなたが思っているほどあなたのことに興味がないものです。意識を周囲に向けるのではなく、自分そのものに向けましょう。挑戦する時には、他人の目を気にしないことも重要です。何もやらなかったときの自分より、失敗しても挑戦した自分のことを評価し、頑張った自分を好きになるきっかけにしてください。

毎日、仕事だけの日々では、なかなか自分の成長をいつも感じることはできないものです。新しく何かに挑戦し、現状から脱してみることで、知識やスキルが身につき自身の成長を感じられるでしょう。また、その成功体験を重ねることでより着実に自分に自信がつきます。柔軟性も養われるはずです。

はじめの一歩が肝心

新しいことに挑戦するのは、最初が一番大変です。今の状態が変わることでの、身体的・精神的な負担が大きいからです。そして、挑戦したての頃は、慣れないことから変化の速度も遅いので、実感としてなかなか変化を感じることができず「なんだ、結局無駄骨?」と感じるかもしれません。しかし、そうしたトライを一日一日と積み重ねて、数日でも、数週間でも続けているうちには、自分の中になんらかの変化が起きているはずです。最初が一番大変ですが、成果よりも変化を楽しみつつ、乗り越えましょう。

男女を比較すると、やはり女性の方が若々しく感じられる。それは女性のほうが好奇心旺盛で、楽しいことを見つけるのがうまいからではないか、と和田先生は記しています。だからこそ、はじめの一歩が肝心です。ほんの少し勇気を出して一歩を踏み出せば、意外とスムーズにできるかもしれません。失敗を恐れず、やりたいことには自由に挑戦していきましょう。

以上、エゴレジ研究所から、新しいことへの挑戦とアンチエイジングについてのお話をご紹介しました。新しいことに挑戦することで、今までの自分で気づけなかった、日々の過ごし方、自分自身、日々の違いを知ることができ、そこに新しい気づきやポジティブな感情に繋がるメリットを得ることができます。新しいことに挑戦し、いろいろなことに興味をもって生きている人は、外見までエネルギッシュで若々しく見えるものです。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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