ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
体と同じように、メンタルにも「体力」があります。それがストレス耐性(メンタルタフネス)。ストレス耐性とは、ストレスを感じた個人が心理的・精神的に受けたストレスに耐えられる程度を意味します。ストレス耐性が高ければ高いほど、受けたストレスに対する耐久性を有していることになるのです。いわば、ストレスを受けた際に気分を元に戻す作用とその力で、エゴレジの力と共通するものです。今回は、環境ストレスに負けないストレス耐性について、精神保健福祉士 遠藤美紗先生の「ルーチンとサイキングアアップ」のお話をご紹介します。
🔴集中するスイッチ・ルーチン
遠藤美紗先生によれば、ストレス耐性は、体と同じように「負荷」と「休憩」を繰り返すことで鍛えることができますが、そのために必要なのが「切り替え」です!
「毎日ずっと悩み続けている」あるいは「息を抜く暇がない」……というメリハリのなさがメンタルには一番の大敵ですが、「気分が乗らなくて、だらだらと仕事している」「明日のことで緊張して今から焦る」というシーンは、ビジネスでも日常でもよくあることです。そんな「環境からのストレス」を振り切って、自分の集中できるゾーン(理想的な心理状態)に切り返るメソッドが『ルーチン』と『サイキングアップ』です。
【リラクセーションとサイキングアップ、ゾーンに関する説明図】
※自分の能力を十分に発揮できる心の状態を思い出し、「ゾーン」に近づけるように「対処」する方法を考えていく。
だらだらと仕事をしてしまう原因の一つに「仕事に集中できない」「気持ちが切り替えられない」などがあげられると思います。朝起きたときや、休み明けは誰だって気分が乗らないものです。また、特に最近のテレワークでもメリハリのなさが気になります。そんなとき「集中するスイッチ」があれば、もっとサクサク効率よくできるのではないでしょうか。
私たちの体や心は、とても複雑な認識や理解を日々行わなければならないため、「決まった動作」と「感情や集中力」を結び付け、脳内を整理しようとするシステムを持っています。この機能を活用して、集中・やる気・リラックスのスイッチ・ルーチンを作りましょう。
◆ルーチンで心の準備運動を。
スムーズなオンオフは「習慣化」がポイント
ルーチンの作り方は簡単。「仕事を始める前にすること」を順番に書き出しておき、毎日その通り実行した後、仕事を始める(集中する)だけです。注意しなければならないのは、「その手順をした後、短時間でも必ず仕事に着手すること」と「スイッチになるまで続ける」の2つだけ。
最初のうちは仕事に手を付けても、ずっと集中する必要はありません、始めて15分で気がそれてしまっても大丈夫。ルーチンをした直後にスマホを見たりしないで、ちゃんと「仕事」をする習慣をつければ、またルーチンをしたときによりスムーズに集中できるようになっているはずです。むしろ気がそれてしまったらルーチンを繰り返すチャンスです。休憩をはさんでルーチンを行い、また集中しましょう。
ルーチンとして脳が覚えるまで、早い人で2週間、だいたい3カ月はかかります。なるべくなら毎日、できるだけ3日は空けずに繰り返せれば習得は目前です。
◆やる気を上げるだけじゃない!
リラックスのスイッチにもなるルーチン
ルーチンのレシピを決めておくことは、プライベートでも役に立ちます。例えば気になるタスクを残したままで週末になってしまうと、ずっとそのことを考えてしまう……という人にこそルーチンが役立ちます。「仕事終わり」用のルーチンを決めておけば、集中と同じようにリラックスモードにもすんなり入ることができます。しっかり休んでこそのメリハリ。ルーチンは自分でやりやすいように順番を変えることもできるので、日々の行動をルーチンにしてしまえば安心感があります。
長く続かせるコツは、「ルーチンの中に一つ楽しみを入れる」こと。ハンドクリームを塗ったり、お気に入りの文具を使ったりなど、デスクでもできる工夫はいっぱいあります。
◆プレッシャーに感じたら逆効果、一度離れて考えよう
ルーチン行動で注意してほしいのが「プレッシャー化」。「これをやらなかったから失敗した……」「絶対やらなきゃダメ!」と思っている自分に気がついたら、その時点でストップしましょう。
ルーチンはあくまで「自分をその気にさせる」スイッチ。義務でも仕事でもないのですから、自分でストレスを増やすことはありません。ストップしたら1週間ほど、ルーチンにした行動から離れて過ごし、改めてレシピを見直してみてください。
🔴サイキングアップで「クリアな思考」
一方、「ここ一番!」というときに緊張しすぎや考えすぎでナイーブになってしまう……。よく聞く実力を発揮できない原因に「緊張」を上げる方も多いでしょう。悪者にされがちな緊張ですが、実は落ち込み気味の気分を引き上げ、思考をクリアにしてくれる「圧力(テンション)」にもなるのです。
●緊張は悪ではない!
思考をクリアにするのは脳の状態がカギ
良い緊張がかかると「体」と「頭」のエンジンが起きだして、一番能力を発揮できる「ゾーン」まで自動的に運んでくれます。緊張をプラスに変える分け目は「気分」。集中できる精神状態(ゾーン)に入る原動力を得るには、緊張を「楽しい!」と受け取る必要があるのです。
この「ドキドキ」を「ウキウキ・ワクワク」に変えるのに使えるのが、緊張感と気分のスイッチを作る『 サイキングアップ 』というメソッドです。リラックスの反対の意味で、興奮・緊張を高めることです。サイキングアップ用の音楽を聴く、大きな声を出したりする、体の各部を叩くなどの方法がありますが、ルーチンと同じように、自分の気分を上向きにする「刺激」と「動き」を組み合わせたプロセスを作って、普段から繰り返しましょう。その際に「うまくいく」イメージと組み合わせることで、脳内が盛り上がると思考がクリアになる・ポジティブになるといったプラスの効果もあります。
気分と体の状態はかなり密接なので、「これをするとテンションが上がる!」というプロセスを一つ持つだけでも自信が持てたり、体調に左右される不安感が軽くなったりします。自分なりの「好き」を組み合わせて、サイキングアップ・プロセスを作ってみましょう。
◆コツは「アップテンポ」。
五感を駆使してゾーンに入ろう
上手なサイキングアップ・プロセスの作り方は、「アップテンポ」に注目すること。体を動かしたり五感への刺激があったりすると、体は起きだす準備をします。特に心拍は自分で意識して調節しやすく、脳への影響力が強いので、軽い運動などをプロセスに取り込むと効果的。プレゼンや面接といった緊張するスケジュールがある日は、ビートが速くノリのいい曲を聴きながら、少し早足で出社してみるなどはどうでしょう。緊張のドキドキを「自分でコントロールしたワクワク」にすり替えることができます。
また、「仲間との挨拶」「ちょっとした雑談」なども実用的です。「人とコミュニケーションをとる」というのは、頭を素早く起こす重要なポイント。「ハイタッチ」や「円陣を組んで声をかける」といったスポーツでよく見られる光景は、このメソッドを使用していると考えられます。
いかがでしょう?だらだら生活もここ一番の緊張も、実力を発揮するうえでの大敵です。日常生活でルーチンができていれば、嫌なことを引きずらずにすみます。気持ちのスイッチングでメンタルをセルフコントロールして、ストレスをメリハリに変えていきましょう。もちろん、これは、ストレス耐性を高める方法であり、エゴレジ力のアップにも結びつくことは、いうまでもありません。環境ストレスに負けない力をつけましょう。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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