スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
加齢とともに、これまでの価値観が変わっていくことがあります。心の豊かさがあると、物質的な豊かさが少なくても満足感を感じやすくなりますし、物の豊かさがあると、心の豊かさを追求するための余裕が生まれることもあります。あなたはどちらの豊かさをより重視していますか。そこで今回は、人生後半戦の「心の健康」についてのお話です。
「国民生活に関する世論調査」から
ドコモコーポレーション社が「心の豊かさと物の豊かさ」について、内閣府の調査結果から分析しています。以下、同社のサイトから引用してご紹介します。
昭和61年ころに、物の豊かさを求めるよりも心の豊かさを求める傾向に逆転し、それ以降はずっとその傾向で「心の豊かさ」を求める比率が高くなっています。
コロナ禍で国民の意識の変化に着目してみると、令和3年の総数の比率では、
心の豊かさ 53.4
物の豊かさ 45.1
この比率はここ20年のデータからみると、急激な変化を感じます。コロナ禍で、経済的に困窮した層が相当程度いるのかもしれません。
年齢別(下図)に見ると、
49歳以下では「物の豊かさ」を求めるほうが多いということがわかります。
50歳以上では「心の豊かさ」を求めるほうが多くなっています。
全体の数値としては「心の豊かさ」を求めるほうが多い、という調査結果ですが、よくデータをみると70歳以上の回答数が532人と最大であり、50歳以上を合計すると1177人になります。この分析データの回答合計数は1895人なので、全体の62%が50歳以上ということです。そこで、仮に60歳以上は年金をもらっていると仮定し、59歳以下は勤労世帯層としてデータを見直すと以下のようになります。
勤労世帯層 1051人 55.46% 物の豊かさを求める方が多い
年金生活者層 844人 44.54% 心の豊かさを求める方が多い
概算ですが、おそらくこのようになるでしょう。
このことから、働き盛りの現役勤労世帯では、心のゆとりがあまりなくなってきており、物の豊かさのほうを切望しているというような推測ができます。
人生を豊かにするものは?
アメリカの心理学者、ロバート・ウォールディンガ―氏が行った講演「人生を豊かにするものは何か?―幸せに関する最も長い研究から得られたこと―」では、彼を含めた歴代のハーバード大学の研究者たちが行った成人発達研究の追跡調査が紹介されていました。
この研究のすごいところは、ハーバード大学卒の男性たちとボストン育ちの貧しい男性たち、この2つのグループ(約700人)を75年にわたって追跡し、対象者の幸福度と要因について調べていったことです。この長い研究の結論は—-
「私たちの幸福と健康を高めてくれるのはいい人間関係である」
家柄、学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無といったことではなく、人間の幸福度、健康と直接的に関係があったのは人間関係だったという結果になったのです。
しかも、友人の人数は関係なく、たった一人でも心から信頼できる人がいるかどうかが重要だということがわかりました。
対人関係がうまくいっている(信頼できる人がそばにいる)状況では、緊張がほどけて脳が健康に保たれる、心身の苦痛がやわらげられる効果が見られた一方、孤独を感じる人は病気になる確率が高く、寿命が短くなる傾向も見られました。もちろん例外はあるとは思いますが、75年間実際に同一人物を追って調べているので、かなり説得力がある研究結果と言えそうです。
人生後半戦の「心の健康術」
著書を多数もつブロガーの中道あんさん、「アラフィフの生き方ブロ」グでご存じの方も多いのではないでしょうか。あんさんが、ESSE-onlineで人生後半戦の「心の健康術」を語っています。(以下、引用)
更年期以降のゆらぎ世代では、これまでとは違った視点から「心の健康」を見つめ直すことが大切だと感じるようになりました。(中略)そんな中で、私が実践している「心の健康術」を紹介したいと思います。
◆「こうあるべき」を手放す
40代の頃の私は、なにかと人や自分に対して「こうあるべきだ」という決めつけをしていました。会社のために自分より仕事を優先すべき、親なら子どもに不便をかけてはいけない—そんなふうに。
でも、「あるべき」が過剰になると、それはもう期待を通り越して支配になってしまいます。自分ががんばるのだから、あなたもがんばって当然というような考えになるからです。今は自分に無理させないように、ありのままを受け入れています。期待を手放すことで、結果として自分の心にゆとりが生まれ、他者への寛容さも増します。少し肩の力を抜いて、まぁええやん。そうすると、心のバランスが戻ってくるのです。
◆ささやかな喜びを見つける
自分の外側に結果を求めていた頃は、だれかから認められたいという承認欲求が大きかったと思います。それが、SNSでの影響力をもつという結果になったとも言えるので、目標に向かってまい進するのは悪くはありません。でもそれが、だれかとの比較になっていたら、自分を責めることにもなりかねないのです。
今では、もっと身近な小さな幸せに目を向けるようにしています。朝のコーヒーの香り、散歩中に見かける季節の花、小さな成功体験――こうした「日常の小さな喜び」を大切にすることが、心を豊かにしてくれます。歳を重ねると、体力の低下やライフスタイルの変化に直面します。でも、それに悲観的になるのではなく、日々の小さな感動を積み重ねていくことが心の栄養になると思っています。
◆人とのつながりをさらに大切にする
人生の後半になると、人間関係も大きく変化します。子どもの自立、親の介護や見送り、定年退職など…。そんな中でも、だれかと新しいつながりをつくるなど、関係を深めることが重要です。人との交流は、心の活力を与えてくれるものだからです。
私は、定期的に友人と集まって食事をしたり、趣味の時間を共有したりすることで、自分の心をリフレッシュしています。とはいえ、悩みを打ち明けあったり、深い話をすることはありません。歳を重ねたおかげで、自分のコアな部分は、セルフケアできるようになりました。それよりも、楽しい時間を過ごせることの方が大事です。私の夢は友人を招いて自分の家でホームパーティをすること。想像するだけでワクワクしますね。
◆未来に対する好奇心を持ち続ける
「今さら新しいことなんて」と思ってしまいがちな年齢になっても、私は常に新しいことに対してオープンでいたいと思っています。旅行先で見知らぬ風景を楽しんだり、新しい本を手に取ったり、インターネットで調べ物をしたり。こうした小さな冒険心や好奇心は、年齢に関係なく私たちの心を活性化させてくれるのです。
心の健康を保つためには、「未知」に対する怖れよりも、好奇心を大切にすることがカギなのかもしれません。美術鑑賞なんて、まったく無縁だと思っていたのに、「楽しい」と感じる自分に驚いています。60歳でも「新しい好き」と出合えるんですから、好奇心は失ってはもったいないと思っています。
◆自分を許す
私たちは、知らず知らずのうちに自分自身に対して厳しくなりすぎるところがあります。たとえば、過去の失敗を繰り返し思い出し、「あのときもっとこうしていれば」と後悔の念に駆られること。失敗したことに対して、長い間自分を責め続けてしまう。そんなこと、だれしも経験があるのではないでしょうか。
でも、ここで気づくべきは「許せない自分」が、じつはいちばん苦しんでいるということです。自分を責め続けることで、過去の失敗が今現在の自分に重くのしかかり、前に進む力を奪ってしまいます。そんなときには、すんでしまった過去を「しゃーないな」という言葉でリセットしましょう。
人生の後半は、過去に蓄えた体験と知恵をもとに、無理せず、焦らず、自分らしく、心豊かに過ごすことができる時間です。とくにせっかちな私には、焦らずという言葉がピッタリ。そんなふうに生きることが、なによりも心の健康を保つための秘訣なのかもしれません。
以上、エゴレジ研究所から人生後半戦の「心の健康」についてご紹介しました。最近目にするJTのCMは、「心の豊かさ」の存在を知らない鬼が、様々な人間に出会い、それぞれの価値観に触れ、自分自身に「心の豊かさ」を問い続け、少しずついろいろな「心の豊かさ」に気づいていく、というストーリーです。「心の豊かさ」は、時代や、社会背景、個人によって様々であり、絶えず変化していき、この先の未来においても、さらに多様化していくでしょう。この先の社会に求められる「心の豊かさ」とは何か、ちょっと考えてみませんか。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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