こんにちは。サステナビリティ・アドバイザー、日本サステナブル・ラベル協会 代表理事の山口真奈美です。第1回ではサステナブルとは何か?という基本的なお話を日常の生活からイメージしてもらえればと、その入り口のお話をさせて頂きました。今回は、サステナブル・ライフスタイルに向けた、選択の基準のヒントとして、衣食住の中から、まず衣の繊維製品やアパレルにかかわるサステナビリティについて、少し見てみましょう。
衣食住から考えてみる
毎日着る洋服。みなさんはどのようなファッションがお好きですか?そして、服を選ぶ時には、
おしゃれ、かわいい、素敵な装い、上質な素材、品質、デザイン、価格、体型や色彩、流行、そして自分に似合うかどうか、ときめくかなど、様々な視点で選択することでしょう。
私たちが着ている服は、自分で仕立てる方もおられるかも知れませんが、多くはお店などで購入しますよね。では、その店頭に並ぶまでに、どんな旅路を辿ってきたのでしょうか。
そもそも、その生地などの素材は、どこかで作っていたり、原材料を調達しています。例えば、コットン(綿)は、農地で栽培されて育った綿花を摘み、糸にして、織り、生地となり染色や縫製などを経て、服やタオル、ハンカチなど身近な製品に完成していきます。
つまり、製品が出来るまでの長い旅路の中で、どんなストーリーを持ち合わせているか、誰がどのように作ってくれているのか、その産地での環境は?などが最近注目されています。その背景には、様々な課題が潜んでいることが危ぶまれているからです。
ファッション、繊維製品をめぐる課題
まず、今着ている服のブランドは認識しているかも知れませんが、どこで誰が製造にかかわり、私たちの手に渡ってきたのでしょうか。そもそも、製品が出来るまでには、長いサプライチェーンがあります。
例えば、私も訪れたことがある、インドのとある地域では、綿花を栽培していました。そこでは、子供たちが働いており、いわゆる児童労働が日常的に行われていました。小学生から中高生ぐらいの子供たちが、学校にも通うことなく、日が昇り暮れるまで、長時間炎天下の中で作業をしています。子供たちの表情が明るくないのは言うまでもありません。夢や希望を見出せないような表情で淡々と作業をしていました。とある女の子は一度は学校に通っていたものの、弟を通わせるために、自分が働きに出ているといいます。
一方、学校が建設された地域では、子供たちが生き生きと学習に励んでいました。表情は明るく「学校の先生になりたい!」など、夢を語ってくれます。
2021年6月に発表された、国際労働機関(ILO)と、UNICEFの共同報告書「児童労働:2020年の世界推計〜傾向と今後の課題〜」(Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward) によると、世界で児童労働に従事する児童は、1億6,000万人に上り、世界の子ども人口(5〜17歳)のおよそ10人に1人が児童労働をしていることになると言われています。
※ 児童労働とは、子どもの教育機会や健全な成長を妨げる労働のことを指します。(ILOは、義務教育を妨げる15歳未満の子どもの労働と、18歳未満の危険で有害な労働を児童労働と定義)
サステナブルファッションに向けて
日本では環境省も動き出し、サステナブルファッションへの取り組みが進みつつあります。日本はファッション業界において、多くを輸入に依存してきました(小売り市場で約98%)。さらに廃棄も多く、環境や人権の課題が少なからず存在します。先ほどの児童労働だけではなく、サプライチェーンの途中で強制的に労働を強いられていたり、バングラデシュなどで2013年にラナプラザのビルが崩落する事故がありましたが、そこでは多くの縫製工場で働く人々が犠牲になりました。つまり、どこかで私たちが身に纏う製品がサステナブルであるために、私たちも企業も政府もみんなで課題に向けて取り組む必要があると言えるでしょう。
出典:環境省_サステナブルファッション (env.go.jp)
海外で進むサステナビリティ対応
海外では、サステナビリティ対応について、国や国際的にも進みつつあります。
フランスでは、世界で初の衣類廃棄禁止法が施行されました。(2022年1月)
企業が売れ残った新品の衣類について、廃棄が禁止されています。具体的には、焼却や埋め立てによる廃棄禁止のほか、リサイクルや寄付などの処理が義務づけられました。この法律により、違反した場合は罰金が科せれるなど、法規制が進んでいます。
EUでもエコデザイン規則案では、耐久性、再利用可能性、改良・修理可能性、エネルギー効率性等の基本要件及び消費者のための情報開示を義務づけ、また、2022年3月「持続可能な循環型繊維戦略」を公表。2030年までにEU域内で販売される繊維製品を、耐久性があり、リサイクル可能で、リサイクル済み繊維を大幅に使用し、危険な物質を含まず、労働者の権利などの社会権や環境に配慮したものにする、との目標を掲げています。
このように、グローバルに規制や政策のサステナビリティ対応が進みつつあります。
ほかにも、グローバルでは様々な規制や対応が進みつつありますが、私たち消費者向けにもグリーンウォッシュに対する規制や、エシカル消費の推進などもあり、一人一人が及ぼす影響力にも注目が集まっています。
同じこの時代に生まれ、育つ環境によって、日常は違ってしまいます。なかなか私たちのライフスタイルと世界の課題の繋がりは見えづらい世界でもありますが、それは遠い地域の関係のない話ではありません。私たちが安く良いものを買いたい、という消費者の要求も一因ですし、利益を追求するあまり、人権への配慮が不十分なまま成り立っているビジネスの企業側にも重大な責任があると言えます。
素敵な服やアイテムを選ぶ基準に、オーガニック、フェアトレード、リサイクル、動物福祉、環境配慮など、サステナブルライフスタイルに向けてできることはたくさんあります。是非興味のある分野から、ストーリーに想いを馳せてみたり、少しずつ選択肢に加えてみるなど、楽しみながら取り組んでみるのはいかがでしょうか。
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山口真奈美 プロフィール
一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会 代表理事 サステナビリティーアドバイザー研究所勤務などを経て2003年に独立。持続可能な原材料調達やサプライチェーンにおける環境社会的配慮に向けた基準策定・環境・CSR・生物多様性・国際認証&ラベルの研修・教育事業を行う。 外資系認証機関の日本法人代表を兼任後、日本サステナブル・ラベル協会(JSL)を設立。環境や社会に配慮した持続可能な国際認証を軸に、多岐にわたる認証も支援。企業活動やライフスタイルを「よりエシカル&サステナブルに転換すること」を目指し、コンサルティングのほか、さまざまな活動にも従事。 一般社団法人日本エシカル推進協議会副会長、オーガニック関連団体の役員、FEM代表、環境ビジネスプラス理事長などを兼任。一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会 https://jsl.life/ |