おはようございます。
人生、上手に寝たもん勝ち!2分間コラム。
さて、今年は、50代女性がこの先の50年も輝くための睡眠というテーマでお届けしています☆
今回は、『漢方薬から考える不眠』というお話です。
ただ、漢方薬といっても、日本の場合、医療用漢方製剤148処方678製品(お医者さんからの処方箋で使われる保険適応の漢方薬)、一般用漢方製剤294処方2367製品(保険の漢方以外)※2015年時点 と、ものすごくたくさんあります。
オリジナルブレンドなもの、食品として考えるもの、なども入れると数限りありません。
なので、私が普段、調剤薬局で薬剤師として扱う、医療用漢方製剤から考えてみます。
【漢方は、どちらかといえば無神経ではなく神経質で、不眠以外にも不具合があるかもと思い当たる人に向いている。】
【漢方薬は、女性病は得意分野!大人女性の不眠は試す価値あり!】
どういうことか?
そもそも不眠に使う漢方薬は、西洋薬のいわゆる「眠剤」の様に、夜寝る前に飲み、眠気が来てとりあえず寝かせる!緊急用・対処療法用の薬ではありません。
一回一包飲んだから眠れるわけではない。
1日1~3回を、継続して服用することで、原因や体調体質が改善し、気づいたら気持ちよく眠れるようになった!を目指すもの。
そして、効能効果に「不眠」の記載があるものは、10種類。
(※ツムラ医療用漢方エキス顆粒製剤138種のうち)
そのほとんどは、精神神経的なものか婦人病関連に対応しています。
- 大柴胡湯 ⇒体力があって、便秘がち上腹部が張って苦しく、耳鳴り・肩こりを伴う人
- 柴胡桂枝乾姜湯 ⇒体力弱く、冷え・貧血気味で動悸・息切れがあり、神経過敏な人
- 黄連解毒湯 ⇒体力あり、のぼせで顔赤く、イライラする人
- 半夏厚朴湯 ⇒気分がふさいで咽喉・食道に異物感があり、動機・めまい・嘔気を伴う人
- 抑肝散&抑肝散加陳皮半夏 ⇒虚弱な体質で神経が昂る人
- 帰脾湯&加味帰脾湯 ⇒虚弱体質で血色の悪い人
- 酸棗仁湯 ⇒心身が疲れ弱って眠れない人
- 温経湯 ⇒手足がほてり、口が乾く人
これらのタイプの人の不眠に効能効果がある。
実際は、不眠と書かれていないものを用いることも少なくありません。
何故なら、その不眠の原因が実は、年齢・体力の低下・不安や抑うつ・イライラ・冷え・のぼせ・排尿障害・胃腸障害・便秘・高血圧・痛み・鼻炎・痒みなどにあるからと考えるから。
原因となる症状を改善しないと不眠は治らないよね。という考え方。
そしてもちろん、薬だけでなく生活改善が大前提。
漢方薬はその人の
①体質。例えば虚実(簡単にいうと体力あるなしとか)
②上記のようなその他の症状。
③そして不眠の種類。(寝つきが悪いのか、中途覚醒が多いのか、早朝覚醒が困るのかなど)
を考えて、処方を選ぶわけです。
例えば、細く弱々しく体力がなくて疲れすぎて眠れない人に、体力があってのぼせて眠れないタイプの人の薬を出したら効果が見込めません。強すぎてさらに体力を奪われる場合もあります。
自分にハマッたピッタリの漢方薬が見つかると、ぐんぐん体調や体質が改善されて、
結果良い眠りが得られます。
以下は、不眠に対する一般的な処方時の判断例です。(参考:「漢方相談ガイド」南山堂)
体力なし ⇒ 疲れすぎて中々眠れない ⇒ 酸棗仁湯
⇒ 抑うつ傾向、朝の頭重感 ⇒ 釣藤散
⇒ 易疲労・食欲不振・寝ても寝足りない ⇒ 加味帰脾湯
体力中間 ⇒ 不安・焦燥感・神経過敏で眠れない ⇒ 抑肝散
⇒ 腰痛・冷え性・排尿問題で起きちゃう ⇒ 八味地黄丸
⇒ 腰痛・ほてり・排尿問題で起きちゃう ⇒ 六味丸
⇒ 抑うつ・冷え・更年期で起きちゃう ⇒ 加味逍遙散
体力あり ⇒ 不安・焦燥・心窩部膨満で眠れない ⇒ 黄連解毒湯
⇒ 抑うつ・焦燥・上腹部膨満で寝足りない ⇒ 柴胡加竜骨牡蛎湯
⇒ のぼせ・不安・焦燥・便秘で眠れない ⇒ 三黄瀉心湯
と、このように見てみると、実は不眠にはその人のメンタルが関わっていることが多いのではないか?ということが良くわかります。
私個人の臨床現場感覚としても、環境や体調の他に、精神状態が大きく影響していると実感しています。
これは、ある意味当然。
睡眠は脳が支配しています。精神状態の悪化も不眠も脳内物質の分泌バランスが崩れて起こります。
さらに、「性格・タイプ」が不眠には大きく関わっているとも思っています。
眠剤を長く飲んでいる患者さん達の特徴です。※すべての人が当てはまるわけではない
例えば、神経質、ネガティブ思考、依存的、思い込みが強く頭が固い、悩みが止まらない、胸の内に溜める etc・・・
一時のその時だけの精神状態の悪化ならば、トンネル抜ければ元通りです。
でも、性格とか性質はそうそう変わらない。しかも、もともと持っている個性であり長所でもある。
例えば、神経質というと聞こえはイマイチですが、細部に気が届くと言えば、大雑把な私にはひっくり返っても手に入れることのできないうらやましい長所です。変える必要もないでしょう。
ただしやはり、神経質で気にしすぎたり、不安抑うつ傾向だったり、イライラ興奮が収まらないタイプでは、寝付けない、眠りが浅いなどに陥りやすい傾向であるのは事実。
事実は事実として認識すると、次にではどうしたら良いか?が考えられます。
お気楽極楽。寝たら忘れるから大丈夫!と思っているような人は、たまに眠れない夜があっても長期的に眠れない状態に陥ることは少ないはず。
寝るよりなにより仕事が楽しい!寝るなんてもったいない自分には使命がある!と覚悟を決められるタイプは、睡眠時間が短いことを不眠症だから困ったとは悩まない。
寝付けない・眠りが浅いなど、思い当たる人・悩んでいる人は、
自分の今の心の状態は? 自分の性格・タイプは? をちょっと分析してみてください。
そしてそんな不眠になりやすいタイプの人は、寝る前の過ごし方&思考を変える工夫をしてみてください。
①寝室は、自分が心身ともにリラックスできる環境を作ること。
②布団に入る1時間前からは
- マイナスの言葉は口に出さない。
- 反省はしない。
- 悩みは棚上げ!明日起きてから悩むと決める。
- 思考が堂々巡りするときは、全く別の無害なことを想像しぶった切る!
- 今日一日を感謝で締めくくる。
- 寝なくちゃいけない× 眠いから寝たいから寝る〇 ~ねばならない思考をやめる。
そしてさらに、周辺症状(冷えやのぼせ、痛みや胃腸症状、更年期症状など)と
気分(不安や抑うつ、イライラなど)を改善してくれる漢方薬を、睡眠改善を加速させる手助けとして使用してみるのも良いかもしれません。
漢方薬から不眠を見ても、『体の症状改善と心の状態改善が、良い睡眠をもたらすカギ』だということがわかります。
今晩は、体は冷やさず、余計なことは考えず脳をゆるめて布団に入ってくださいね☆
それでは、今夜も良い眠りを・・・「人生、上手に寝たもん勝ち!」
プロフィール
Sleep Performance Company (スリープ パフォーマンス カンパニー)
代表:小林 瑞穂 (こばやし みずほ)
研修講師/薬剤師/睡眠改善シニアインストラクター(日本睡眠改善協議会)
埼玉県出身。薬科大学卒業後、営業職に従事。医療の現場で心を病む人が増加している現状を目の当たりにし、心理カウンセラー資格を取得。その後、睡眠問題を深く掘り下げるためメンタル専門の薬剤師となり、延べ5万人以上の「眠りの悩み」に関わる中で、睡眠は心と体を元気にし、目の前のあなたに笑顔をもたらす!と確信を得る。
日本にわずか10名ほどしか存在しない『睡眠改善シニア指導員資格』を取得(H29年3月現在)。睡眠活用の専門家として、社会人が今よりもっと輝くための『ハイパフォーマンス睡眠法』に関するセミナーや、講演活動、『生産性向上のためのセルフリーダーシップ睡眠研修』など、企業研修・安全大会講演を実施。体感型ワークを多く取り入れた講座は、「すぐに実践できる」「スッキリ起きられるようになった」「仕事の効率化が計れた」「働き方改革に繋がった」など、好評を博している。
新聞連載・各種メディアでのコラム執筆や、TV出演等も行っている。
*著書:『できる大人の9割がやっている 得する睡眠法』(宝島社)
この記事へのコメントはありません。