さて今回から考える「老後」、こちらは内容がてんこ盛り。介護保険制度が8月に改正になりますし、老齢年金の受給開始年齢繰り下げは今国会で注目の的。相続の話もしたいし、さあさあどれから話しましょうか、てことで直近で改正が決まっている介護保険制度から。
介護保険制度の1号被保険者と2号被保険者の違い等基本事項は外のサイトにお任せするとして、8月の改正の中身について触れていきたいと思います。今回の改正も色々あるのですが、その中で押さえておかなければならないのは「3割負担」と「地域格差」だと思います。
まず「3割負担」ですが、これは介護保険サービス利用料の自己負担割合が、現役所得並のおじいちゃんやおばあちゃんの場合、1割ではなく3割になりますよ、という事です。「現役所得並」とは合計所得金額が220万以上で、単身なら年金とその他の所得の合計が340万以上、2人以上の世帯なら年金とその他の所得の合計が463万円以上のことを指します。この3割負担に該当するおじいちゃんおばあちゃんは全体の約3%に当たる、と聞けば「自分には関係ないや」と思っちゃいますよね。
実は2015年の改正で「2割負担」が導入されました。合計所得金額が160万円以上で、単身なら年金とその他の所得の合計が280万円以上、2人以上の世帯なら年金とその他の所得の合計が346万円以上。これ、そんなに高い金額ではないです。この時対象になったのは約40万人で全体の約20%。このうち利用していたサービスを減らした人が約16万7,000人、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設からの退所を余儀なくされた方は1,600人以上。
介護保険制度にも高額療養費制度と似た月額44,000円の負担上限はありますが、こちらも申請しないとオーバーした費用は戻ってきません。またいくら上限があるとは言え、介護の平均期間は4年11ヶ月、単純計算で2,596,000円。これは水道光熱費や食費、家賃などの生活費や住宅改修、福祉用具購入費とは別にかかる費用です。夫婦2人分なら倍の5,192,000円。万一老々介護になると、この2人分が一気にかかります。
老後は老齢年金があるものの、基本的には限られた蓄えの中でやりくりしなければなりません。ですから利用料の負担増は、サービスの諦めに直結します。これは、身体機能が急速に低下したり、認知障害が進んだりなどして要介護度が上がってしまう要因になります。要介護度が上がれば上がるほどサービスを受ける必要があるのに受けることができない。書いていて非常に切ないですが、団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を考えると、「3割負担」が今後所得の壁を超える可能性は十分あると考えていて間違いない。介護のお金のリスクは、直面してしまうと本当に如何ともしがたい。今回の改正を「明日は我が身」と考える事が、リスクヘッジの第一歩です。
水原 曜(みずはら ひかる)
2014年 住友生命保険相互会社東京本社入社。
「人生最後の転職先に保険会社を選んでしまう」という大ポカを犯してしまうもどうにか乗り越え、2017年4月より指導職に。部下に踊らされる毎日。
個人、法人問わず、フローとストックのバランスを重視した中長期的「無理しない」リスク対策のコンサルティングが最も得意です。
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