ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
SNSを見てモヤモヤ、他者から言われた言葉に必要以上に傷つく、仕事が予定通りに進まなくてイライラ――世の中も自分も「不寛容」だと感じていませんか。小さなことに目くじらを立てたり、腹を立てたりするのは、自分にストレスをかけていることでもあるのです。
元陸上自衛隊メンタル教官で、心理カウンセラーの下園壮太先生(『寛容力のコツ』の著者)が、自分を追い込まずに寛容力を育てていくコツとして「不寛容」が気になるときほど意識したい「疲れ」について説明されていますので、以下にご紹介します。
目次
🔴「疲労」の原因は「エネルギー量」?!
「人は、悩み事で悩むのではなく、エネルギー低下で悩む」のです。日々直面するストレスは、あなたの寛容力を奪っていきます。ストレスの大きさはさまざまでしょう。しかし、これらのストレスがどのぐらい自分にダメージを及ぼしているのか、目には見えないだけに想像しにくいものです。実はここで鍵を握っているのが、あなたの「エネルギー量」なのです。
現代人の疲れは、下の図のように「第1段階」「第2段階」「第3段階」に分けてとらえられます。第1段階から第3段階に進むにつれ、疲れは深くなっていきます。同時に減少していくのが、あなたのエネルギー量。エネルギーとは、物事に対処し切り抜ける力、苦しいことがあっても復活する力と言い換えてもいい。段階が進むにつれ、それだけエネルギー量も失われていくので、同じストレスに直面しても、現れる体や心の反応が変わっていきます。エネルギー量が低下すると、感情や身体症状も変化するのです。
例えば、あなたの同僚や後輩がささいなミスをしてそのフォローをあなたが頼まれたとします。
エネルギー量が第1段階のときであれば、「仕方ないな。面倒だけど手伝ってあげよう」と寛容に対応できていたのに、第2段階のときに同じ出来事があると「どうして私ばっかりフォローさせられるの?」「はーっ、こんなミスするなんて信じられない」とイライラするように。さらに第3段階になると、あなたは自分自身を責めるようになり「どうしてこんなささいなことに私はイライラするんだろう。ダメだ!」と思うようにもなります。
人はこのようなとき、「自分の性格がゆがんでいるから」「寛容力が足りないから」と決めつけてしまいがちですが、それよりも、エネルギーの低下そのものが人の価値観まで変える重要な要因になることをぜひ理解していただきたいと思います。
🔴「ストレスに対処する技術」を持っているデキる人ほど・・・
エネルギー量を低下させないためには、疲労レベルが深まる前に、うまく対処し、休憩することが必要です。しかし、最近特にキャリア女性で目にするのは、「ストレスに対処する技術を持っているほど深刻なうつになりやすい」という事実なのです。
ストレスに対処する技術とは、言うなれば「人に相談する」「人に援助を求める」といったスキルのことです。自分にかかる負荷を抱え込みっ放しにしないで、誰かに助けを求めることは、ストレス値を下げるために有効です。しかし、今多くなっているのは、「デキる人がちょこちょこ人に援助を求めながら頑張り続け、ある日突然ポキッと折れてしまう」ケースなのです。
デキる人は、苦しさに気付かないわけではありません。すごく苦しい。でも、慢性的な肩凝りの人が、肩凝りがだんだん気にならなくなるように、苦しみや疲れへの感受性を鈍らせ、麻痺させるのが得意なのがデキる人の特徴です。これまでも頑張ることで乗り越えてきた、だからもっと努力すれば今回も大丈夫なんだ、という「努力へのしがみつき」で対処しようとしてしまいます。
でも、やっぱり苦しいものです。そういうときこそ、「人に援助を求める力」よりも「ギブアップする力」の出番となります。
🔴ギブアップを阻む要因
これまで誰かに援助してもらって「諦めないで続けよう」と思っていたあなたも、誰かに頼ることで「ギブアップしよう」という発想に切り替えるべきなのです。
ところが、ギブアップを阻む要因となるのが「断る理由がない」という呪縛です。
○ 役職に就いている(私は周囲に期待されている)
○ やりがいがある(こんな仕事がしたい、と常々思っていた)
○ 仲間と一緒にやる仕事である(迷惑を掛けたくない)
○ 上司がいい人だ(理解がある人だけに、失望させたくない)
○ お祭り系の勢いがある(勢いで乗り切れそうな気がする)
上記のような条件がそろうと、「断る理由などない」と思ってしまうものです。一見恵まれた環境だからこそ、「降りたい」とは言いにくい。しかし、そこでギブアップできずに頑張り続けると、いい環境にいるにもかかわらず、周囲の人たちを嫌いになってきます。いつもイライラして誰かを攻撃したくなるという寛容力の低下が起こり、そんな自分に嫌気が差してくる、という悪循環が起こります。こうなったら、「ギブアップする」ことが必要です。誰かに頼ることで「ギブアップしよう」という発想に切り替えるべきなのです。
疲れが第3段階にまで進行すると、思考が全体的にネガティブになるので、「ここで休んだら人に迷惑を掛ける」「自分の居場所がなくなるに違いない」と切羽詰まった答えしか出てきません。普段は何の問題もなく人とコミュニケーションができている人も、疲労度が高まると、途端に他人を許す、自分を許すということが難しくなり、ささいなことでキレるようになるのです。それよりも、疲れの第2段階のうちに「私は今、心身にこんなサインが出ている。ここで誰かに頼って休まないともっと判断が難しくなる」と切り替えることが大事なのです。
🔴睡眠が5時間を切ったら危険!
疲労を蓄積しないために、皆さんに覚えておいてほしいフレーズです。さまざまな研究によって、睡眠時間が5時間以下になると、心身の不調が起こる確率が一気に上がることが分かっています。
仕事をして帰宅して、食事をしたり入浴したり、さらにSNSをチェックしたりしていると、あっという間に夜中の2時に。そんな人は睡眠時間がすぐに5時間以下になってしまいますよね。そんな人は、要注意です。
5時間以下の睡眠が4日間続くと、脳の働きは深酒をして酩酊した状態と同じレベルになる、という研究もあります。当然、仕事の能率も下がる。人とのイザコザも増える。さらに残業時間が増えて睡眠量が減っていく――という負のスパイラルにはまります。
さらに、あなたが本気で疲労回復したいのであれば、必要睡眠時間は8時間です。平日は無理、という人も、お休みの日にとにかく寝て、寝て、寝まくる。掃除も洗濯もしなくていい。メールも見ない、ネットも見ない。睡眠を最優先にする。しっかり睡眠を取ることによる心身の回復はお墨付きです。
下園壮太先生の「不寛容と疲れ」のお話はいかがでしたか。あなたがエゴレジさんなら、頑張りすぎて折れてしまう前に、誰かに頼って「ギブアップする力」を発揮しましょう。心に余裕ができいつの間にか寛容力が育っているはずです。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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