《健康》年齢、状況でズレる「心の時計」

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

少し前に年末のカウントダウンをTVで見たと思っていたら、すでに暦は2月。なんとなく齢を取るにつれ、時が早く過ぎるように感じませんか。また、同じ時間でも、時と場合によって、短く感じたり長く感じたり・・・。時計の時間は一定なのに、なぜ私たちの感じ方は一定ではないのでしょうか?

時間学の研究に取り組み、「大人の時間はなぜ短いのか」などの著書もある千葉大文学部教授、一川(イチカワ)誠先生によれば、そのようなズレは、『心の時計』と『実際の時計』の進み方の違いとして考えることができるそうです。

時間学/哲学や物理学などで別々に行われてきた「時間」に関する研究を、文系理系の枠を取り払い総合的に捉えようとする新しい学問。生活リズムと病気の関係、時間感覚を踏まえた社会政策なども対象。2009年に設立された日本時間学会には、理、工、医、文など様々な学部から研究者が参加。山口大には一川先生は客員教授を務める「時間学研究所」があります。

🔴一川先生の実験

4歳~82歳の約3500人を対象とした一川先生の実験では、自分が「3分」と感じた時点でボタンを押してもらったところ、年齢が高くなるほど、実際の3分より長くなる傾向が出ました。分析によると、2~4歳年齢が上がるごとに1秒長くなり、70歳代では1割増しになったそうです。つまり、年をとるほど「実際の時計」より「心の時計」の進み方が遅くなるため、時がたつのを早く感じる、というわけです。

🔴「心の時計」に影響を与える要因

どうして「心の時計」の進み方が違うのでしょう。様々な実験研究から分かってきた「心の時計」に影響を与える要因をご紹介します。

1.代謝  有力視されているのは、代謝が良いほど、心の時計が早く進み、時間を長く感じる、という仮説です。一川先生の研究室の実験でも、運動した後の方が、運動していない時より、時間を長く感じる傾向が出た。年とともに時間の経過を早く感じるのは、代謝が落ちるから、とも説明できるわけです。

2.感情  恐怖を伴う時間は長く感じるという仮設です。英国の実験で、ガラス箱の中のクモを一定の時間(実際は45秒)凝視させ、どのぐらいの時間に感じたか尋ねたところ、クモに恐怖感のある35人の平均は56秒で、恐怖感のない18人の平均(33秒)より大幅に長かったそうです。

3.時間に注意を向ける頻度  頻繁に時計を気にすると、時間を多くの部分に分節化して認識し、長く感じる、との仮説もあります。つまらない時間は、時間に注意が向きやすいので長く、逆に何かに集中すると短い。車の運転では、直進中に比べ、作業が複雑で集中が必要な右折時の方が、かかった時間を短く感じる、との研究もあるようです。

4.印象に残る出来事の数  印象に残る出来事が多い時間の方が、長く感じられる傾向があるというものです。子どもはささいな事も、新鮮に感じ印象に残りやすい。一方、大人は多くの事をしても、慣れていると印象に残らない。これも、加齢に伴って時間を早く感じる理由になるようです。

5.刺激  大きい物・音に接するなど、強い刺激を受けた時間の方が長く感じる、との研究もあります。

6.新鮮な体験/思い出の濃さ  4.と似ていますが、もう一つ注目したい要因を、ニューロサイエンスで輝かしい業績を持つDavid Eagleman氏が、ニューヨーカー誌で述べています。Eagleman氏によると、記憶が詳細なほど、その瞬間は長く感じられ、(中略)周りの世界が見慣れたものになってくると脳が取り込む情報量は少なくて済み、時間が速く過ぎ去っていくように感じるからといものです。

🔴自力で時の流れを遅くすることはできるのか

6.新鮮な体験/思い出の濃さという要因に関してbuffer blogでは5つの提案をしています。いずれも「時の流れを遅くするには、脳が理解するのに時間を要するような新しい刺激を与えることという根本的な考え方に基づいています。

学び続ける:読書を続ける、新しい活動を始める、技術を学ぶために学校に通うなど。学び続けると新しい経験を得られ、時間感覚が遅くなります。

新しい場所を訪ねる:新しい環境では、香り、音、人、色、肌触りなど、多量な情報が脳に流れ込みます。脳はこれらを処理するのに忙しく働き始めます。定期的に新しい環境に脳をさらすと、活発に活動してくれます。1日が長く感じられるようになるでしょう。決して海外旅行に限ったことではありません。行ったことのないカフェや新しいオフィスで仕事をするのも良いでしょう。

新しい人に会う:他人とのコミュニケーションにはどれほどエネルギーが必要か、ご存知のとおりです。ものと違って、人間は複雑でそれを理解するために脳内ではより多くのエネルギーが必要になります。新しい人に会うと、脳を刺激してくれます。

新しいことを始めてみる:新しい活動に挑戦すると、注意力が必要になります。脳は敏感になり、五感が研ぎ澄まされます。とても速いペースで感覚や感情を処理しているからです。

自発的になる:驚きには新しい活動を始めたときと同じ効用があります。感覚や注意力を研ぎ澄ましてくれます。

新たな経験をしている時は、時間がゆっくりと流れるように感じられるということです。

新しい発見にたくさん出合う若い時代に比べて、
人生が長くなればなるほど「絶対的に新しい刺激」に出会う可能性が減っていくため、時間の密度がどんどん薄くなってしまいます。そうなると、いつの間にか、1年が一瞬で過ぎ去るようになってしまうので、意識的に新しい環境や全く知らないものに挑戦するのがよいかと思います!

新しい発見や経験はエゴレジアップにもつながります。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP