ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
よしやるぞ!と決めたのに、どうしても忘れてしまう。途中でやる気をなくしてしまう。良い習慣として続けたい気持ちはあるけれど、やっぱり続けられない・・・どうしたらスムーズに習慣にできるのか。
実は、「行動習慣」は1ヶ月で改善できると言われています。
行動習慣:1カ月(習慣化への期間) 片づけ、英語の学習、日記、節約などの習慣。身体習慣:3カ月 ダイエット、運動、早起き、コミュニケーション、禁煙、筋トレなど身体のリズムに関わる習慣。 思考習慣:6カ月 |
今回はモチベーションや自制心に頼っていてはうまくいかない理由と、それを克服するための方法をご紹介します。
🔴モチベーションや自制心はアテにならない?
自分磨きのための新しい活動を始めたばかりのころは、あふれる熱意があって、「こうなりたい」という希望や、「こうはなりたくない」という危機感に駆り立てられています。でも、そうしたモチベーションは、たいてい時とともにしぼんでしまいます。
モチベーションが下がると、今度は自制心に頼ろうとします。でも、以前「何かと誘惑に溢れるこの時代、自分に鞭打って、本当はしたくないことを無理やり頑張るたびに、自制心は少しずつ消費されていきます。誘惑を退けるたびに、自制心のたくわえは減っていくのです。夜になるころには、すっかり尽きてしまうかもしれません。1日中ヘルシーな食事をしていたのに、夜になってダイエットをあきらめてしまうケースが多いのは、そのためです。
🔴「潜在意識」に働きかける
人間の生活の95%は、潜在意識に支配されています。いってみれば、潜在意識を司る脳の領域が、私たちの生活を「自動運転」しているわけです。そのおかげで私たちは、歯磨きからクルマの運転にいたるまで、さまざまな活動をほとんど無意識にこなすことができるのです。
意識的に新しい習慣をつくろうとすることで、無意識の力をうまく操って、新しい神経経路を生み出すことができます。新しい習慣が確立すれば、それを実行するのは簡単です。モチベーションも自制心も、もはや必要ありません。
ここで、新しく身につけたい行動を習慣に変える7つのステップを紹介しましょう。習慣がついてしまえば、難なく実行することができるはずです。このテクニックは、あなたが「身につけたい」「変えたい」と思っているどんな習慣にも使えます。
1.目標は小さく立てる
大きな目標を立てると、ワクワクするものです。けれど、まずは小さくて退屈な目標を立てたほうが、成功する可能性は高くなります。たとえば、「10分だけ瞑想する」「不健康なスナック1回分を生野菜に変える」「1日15分歩く」といった小さな目標を立ててみましょう。小さな行動なら、脳をごまかすことができます。人の無意識は、コントロールされた状態を好み、変化を嫌います。大きな変化は無意識の抵抗を生みがちですが、小さな変化なら、こっそり紛れ込ませても気づかれないというわけです。
2.「トリガー」を利用する
トリガーとは、反射的にほかの行動を起こすきっかけになる何かのことです。たとえば喫煙者の場合、食事がトリガーとなって、食後に煙草を吸うケースがしばしば見られます。そうしたトリガーをうまく利用してみましょう。
朝食後に決まって瞑想するようにすれば、数週間後には、朝食を終えたら反射的に瞑想しようと思うようになるはずです。すでにある習慣にくっつける行動トリガー、時間トリガー、場所トリガーもおすすめです。
視覚的なトリガーも効果があります。朝のうちにスポーツウェアをベッドの上にでも置いておけば、仕事から帰った時に、運動しようという気が起こりやすくなるでしょう。一番フィット感のある時間帯や内容・場所に設定するといいでしょう。
3.早め早めを心がける
運動や瞑想は、自制心がたっぷりある朝のうちにするようにしましょう。早い時間の運動や瞑想は、その日一日に良い影響を及ぼします。また、ヘルシーな夕飯を早めにつくっておくようにしましょう。そうすれば、帰宅しておなかがぺこぺこなのに食べるものが何もない、などの事態は避けられます。
加えて、急な予定や決めたとおりに行動できない場合には、「例外ルールを設けること」が有効です。「続ける仕組みを作ること」を目指してください。
4.準備を整える
成功するために必要なものを、すべて用意しておきましょう。ウォーキングを始めたい場合は、歩きやすいウォーキングシューズと歩数計を手に入れましょう(歩数計を身につけている人は、身につけていない人より27%も多く歩くそうです)。
5.実行しやすい環境をつくる
なんらかの行動を起こそうとする場合、それが難しくて時間のかかるものであればあるほど、実行に移す可能性は低くなります。スポーツジムに入会したのに行かなくなってしまう人が多いのも、それが理由です。要するに、あまり便利ではないからです。必要なものを前もってすべて用意して、行動を起こす時が来たら、「Just Do It」(とにかくやるだけ)と言えるようにしておきましょう。
6.楽しむ
何をするにしても、楽しめないことは長続きはしません。できるだけ楽しみながらライフスタイルを変える方法を見つけましょう。友だちと運動をしたり、ヘルシーだけどおいしい料理のレシピを覚えたり、自分の心に深く響く瞑想プログラムを見つけたりするなど、「楽しみの要素」を取り入れるといいでしょう。お気に入りのファッションや道具を揃えて形から始めてみるのもいいでしょう。
即効性のある報酬(ごほうび)の設定をしておくことも継続の手助けになります。
7.鎖を断ち切らない
俳優で脚本家のジェリー・サインフェルド氏は、まだ無名だったころ、壁掛けカレンダーと赤ペンを使って、毎日新しいネタを書くという習慣を身につけました。どうにか書くことができた日には、カレンダーに大きな赤い「☓」印をつけました。なんの印もついていない「鎖が断ち切られた」日を目にしたくないがために、毎日書くという習慣が身についたそうです。自分の行動を見える化すると、行動を自己管理できるようになります。よく記録するのが「面倒くさい」と言われますが、「☓」印をつけるなどシンプルで簡単なものにすれば楽しく、楽に続けられるはず。
ここで紹介したステップを実践すれば、脳をうまくだまして新しい神経経路をつくり、望みの習慣を身につけることができるようになります。
🔴脳を騙す
脳には「新しい変化に抵抗し、いつも通りを維持しよう」とする性質があります。脳にとって変化は脅威で、いつも通りが安全で安心。だからこそ、いつも通りを無意識に維持することであなたを守ってくれているのです。習慣化とは「自分が続けたいと思っていることを、意志や根性に頼らず、毎日のハミガキのように当たり前に続く状態に導くこと」です。つまり、続けたいことがいつも通りになってしまえば、今度はいい意味で続いている状態を維持してくれるのです。いったん習慣ができあがれば、それはあなたの人生を本当の意味で変える、さらに大きな変化への入り口になります。
University of Southern Californiaの社会心理学教授であるWendy Woodによると、毎日の行動の40%が、ほぼ同じ状況下で行われていることだそう。何をしているか深く考えず、無意識のうちにやっている習慣化した動作が、半分近くも占めているのです。7時間睡眠だとすると、1日で起きている間の17時間中、6.8時間も習慣に支配されていることになります。習慣は反復行動により、後天的に身についたものです。言い換えれば、反復によって習得し、少ない心的努力で繰り返せる、固定した行動が習慣なのです。また脳科学の研究によると、行動の習慣化には200回以上の繰り返しが必要だそうです。「千里の道も一歩から」です。エゴレジさんは、自分流の続ける仕組みを工夫してチャレンジしてみてください。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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