ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
先日行われた日本健康心理学会での話題から早稲田大学応用健康科学研究室の竹中晃二先生の「こころのメタボ」と「ABC活動」についてご紹介します。
🔴こころのメタボ!?
現代社会では、多くの人がストレスを抱えやすい環境の中で暮らしています。そのため、憂うつになったり、不安になったり、イライラしたりといった「イヤな気持ち」でいる時間が増えています。生活習慣病などでメタボがあるように、こころの不調が習慣化すると「こころのメタボ」があらわれます。これはいわゆる、うつ状態(やる気が出ない、くよくよする、落ち込む、マイナス思考が多い)や不安(先のことが気になる、心配性である、嫌なことを避ける、他人の目が気になる)などの気分の落ち込みや症状のことです。
【メ】面倒くさい
【タ】ため息をつく
【ボ】ボーッと足を引きずる
こころのメタボが大きくなってくると、何となくからだがだるくなって、何もやる気がしなくなります。
こころの不調が大きくなる前に、日常生活で気軽にできる「こころのABC活動」を実践して、気持ちをポジティブな状態にしておきましょう!
🔴こころのABC活動
「こころのABC活動」は、早稲田大学の応用健康科学研究室 竹中晃二先生が進めておられる予防のための推奨活動です。こころのメタボに目が向かないように無理なくできるポジティブな行動をしていくことでメンタルな問題を予防します。
この活動は、うつ病治療に効果があるとされている行動活性化療法の考え方が理論的なベースになっています。
行動活性化療法では、その人が行う自発的な行動が「正(プラス)の強化」をもたらし、その人と環境との相互作用を改善する働きか
けを行います。
行動活性化療法では、「やる気がしないから行動できない」のではなく、行動することでプラスの強化をもたらす、つまり心理的な報酬を得ることでやる気を生み出します。その結果、「こころのメタボ」を小さくしていくという、逆転の仕組みを強調しています。たとえば、「落ち込んでいるから朝起きれない」ではなく、できるだけ決まった時間に起きるようにして「すがすがしさ」を味わったり、「落ち込んでいるから食欲がない」ではなく、家族と一緒に朝夕の食事をとることで「おいしい」「会話が楽しい」という感情が高まっていきます。
『こころのABC活動』では、心理的な報酬を得やすい行動に注目しています。ABC活動を行うことで楽しいことに没頭し、人との関係が強まり、自信につながり、その結果ポジティブな気持ちがわいてきます。ABC活動を行っていくと、ポジティブな気持ちでいる時間が増え、ネガティブな気持ちでいる時間が少なくなっていきます。
🔴ABC活動の内容
『こころのABC活動』は、メンタルヘルスが良好な人、つまり「こころのメタボ」を日頃から小さくできている人が、日常生活において、意識して行っている行動に注目しています。それらは大きく、A(Act)、B(Belong)、C(Challenge)の3要素に分割できます。
A(Act:アクト)は、こころもからだも人とも活動的になる行動を指します。こころのアクトとは、好きな趣味や音楽に興じたり、好きな本を 読むこと、からだのアクトとは、運動やスポーツだけでなく庭仕事や家事を積極的に行ってからだを動かすこと、最後に、人とのアクトとは、友人や家族とおしゃべりしたり、長電話することなどです。これら、こころ、からだ、人それぞれのアクトは、多くの人にとって、よい感情、つまり「よいことがあった」という報酬を得やすい行動なのです。
B(Belong:ビロング)は、趣味の会、食事会、友人との会、スポーツの会など、何かの組織や同好会など、正式な会でなくても集まりやクラブに加入し、そこに自分のアイデンティティを意識したり、帰属感を持ったりすることです。また、組織や会に参加すると、周囲の人からサポートを得やすくなります。B(ビロング)の内容は、 A(アクト)の人とのアクトの内容と似ているかもしれません。
C(Challenge:チャレンジ)は、は、困っている友人の相談にのる、ボラン ティア活動をする、動植物の世話をするなど、何かに献身すること、また目の前でできる新しい挑戦、たとえば、ウクレレなど初めての楽器を習い始めたり、新しい勉強を始めるなど、無理のない チャレンジを行うことです。
『こころのABC活動』の特徴として、①行動を行うことそのものが重要であること、②他者や集団と積極的に関わること、③すべての対象者に対応していること、最後に、④普段から先を見越して行うこと、があげられます。
皆さんにも、何かを行っているとリラックスできたり、夢中になれることがあるはずです。ABC活動を行っていると、明るい気持ちが増えていき、自分自身を肯定的に捉えることができます。
こころのABC活動は、ストレスから自分を守る、回復する力を育てるスモールチェンジの活動です。エゴレジ力のUPにもつながるものです。特別なことではなく、できることから積極的に行ってみましょう。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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