《健康》エゴレジと脱“面倒くさい”!

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

最近なんとなく気力が落ちているような気がする・・・そんなことはありませんか?

  • やらなければ…と思っても、やる気がでない
  • 何かを始めても集中力が続かない
  • 動くことがおっくうで、ついつい先送りしてしまう
  • 新しいことを始めるのが面倒くさい
  • じっくりと取り組む意欲がない

こうしたことに共通する「気力」「やる気」のメカニズムを調べてみました。

🔴気力の源泉は「感情の脳」

脳科学者の篠原菊紀先生によれば、大きく分けると脳は3層構造になっていて、気力の源泉は2階部分の働きにあるということです。

1階部分→「生命の脳」脳幹 生命活動
脳と身体を繋いでいる重要な部分です。脳で処理した情報は脳幹から脊髄を通って、身体の各部分へ伝わっていきます。生命の維持に必要な呼吸中枢、心臓中枢、体温調節などを行う自律神経の中枢もここにあります。

2階部分→「感情の脳」大脳辺縁系 気力の源泉
大脳辺縁系は大脳新皮質のすぐ下にある部分で、ここでさまざまな情報をキャッチして大脳新皮質に伝えています。大脳新皮質がその情報を処理することで行動に繋がります。
大脳辺縁系では外から入ってきた情報を、2つの方法で処理します。

  • 感情的に処理する方法 … 粗くても、短時間で処理される
  • 理性的に処理する方法 … ゆっくりと、緻密に処理される

本能的な行動に対して生じた感情が、次の行動を選別している動物的な脳です。特に何かを行い、快感を覚えると強く働いて、気力を生む場所「線条体」がここにあります。

3階部分→「理性の脳」大脳新皮質 知的活動
「前頭葉」、「頭頂葉」、「側頭葉」、「後頭葉」などの思考の中枢と呼ばれる部分が多く集まっています。特に前頭葉系では、私たちが「うまく生きていくための」情報の選択、判断、系列化を行っています。いわば「司令塔」の役割を果たしている部分です。

🔴「面倒くさい」は脳のせい!

「感情は速く、理性は遅く伝わる」ようです。たとえば、目の前の空のペットボトルに気づきました。疲れた体を休めたいあなたはまず「面倒くさいな」と感じ、次に「でも捨てなきゃ」と感じます。この順序が逆になることは決してありません。気づいた直後、睡魔が襲ってきたり、目の前のテレビで面白いことが起こるとどうでしょう。ペットボトルをゆすぎ、ラベルを剥がし、資源ごみのゴミ箱へ捨てるという理性的に行われていた段取りのイメージは一瞬で忘れ去られてしまうでしょう。「感情の脳」から「理性の脳」へとうまくバトンが繋がらなかったのです。理性よりも感情が真っ先に立ち上がる脳の特性により、その行動が面倒くさく感じられるのです。

健康的なアクティブ回路

株式会社脳の学校の代表で医師・医学博士でもある加藤俊徳先生によれば、“面倒くさい”の原因は、実は「人の脳がもともと面倒くさがりだから」と説明されています。だから「不慣れなこと、不得意なことを求められたとき」に、人の脳は“面倒くさい”のメッセージを発することが多いのだそうです。「面倒くさい」という気持ちは、脳科学の見方では、「これから脳に負担がかかりそうだ」という危機メッセージなのだそうです。そして、これを漠然とした感覚のまま放置するのではなく、きちんと対処すれば克服できる問題だと加藤先生は説明されています。

脳は、理解、思考、感情、運動など、特定の役割を与えられた8つの神経細胞の集まり(脳番地)からなっていて、どの脳番地が発達していて、どの脳番地があまり発達していないかは、「人それぞれ」の個性です。自分にとって不得手な脳番地に刺激が入ってくると瞬時に処理ができず、それが“面倒くさい”につながりやすいそうです。

※8つの脳番地に対応する、8つの“面倒くさい”の例
理解系…人の話やそのときの状況を理解するのが“面倒くさい”
思考系…手順の多い仕事が“面倒くさい”
記憶系…あのときの大変な作業をまたやるのが“面倒くさい”
伝達系…人との密なコミュニケーションが“面倒くさい”
運動系…外出や地方出張が“面倒くさい”
視覚系…目で見た情報を正確に処理するのが“面倒くさい”
聴覚系…耳で聞いたことを正確に処理するのが“面倒くさい”
感情系…人の感情に配慮するのが“面倒くさい”

例えば『聞くのと見るの、どっちの方がラクだと感じるか』といったことが分かれば、“面倒くさい”と感じる対象のあなたの特性が見えてきます。また、仮に上記の『理解系』『思考系』に該当する脳番地から“面倒くさい”を感じたら、ちょっとした気分転換、階段を上り下りしたり(運動系)、音楽を聴いたり(聴覚系)して別の脳番地を適度に刺激してみる。そうすれば、その間、理解系や思考系が休まり、同じ作業に対しても“面倒くさい”が起こりにくくなるそうです。

🔴“面倒くさい”をやる気スイッチに!

“面倒くさい”は目前のシチュエーションに対する、脳からの『できません』『やりたくありません』というメッセージ。いわば心のブレーキです。しかし、なかには『あ~。面倒くさい、面倒くさい』と言いながら、やるべきことをさっさとやり始める人もいます。さっさと始められる人は何が違うのかというと、脳がそのシチュエーションを自分なりに咀嚼(そしゃく)し、その作業を『したい!』『やりたい!』へ切り替え、すぐにやり始める環境を整えているのです。

「する脳・したい脳」へと切り替えるためには――その要因の1つは「作業の手順化」だと言う加藤先生は指摘されています。先の8つの脳番地の中でも、理解系・運動系がうまく働けば「キビキビと動く」という行動につながりますが、とりわけ、次の行動につなげるには理解系脳番地の「理解」をうながすことが効果的なのです。

理解系脳番地に仕事の内容や自分の役割を理解させるには、手順の明確化が必要です。例えば、お手玉が上達するコツは、お手玉の作業を『①投げ上げる』と『②片方の手からもう片方の手に渡す』というプロセスに分けて考えてみることです。それと同様で、誰かから丸投げされてどこから手をつけてよいか分からない、すなわち理解系脳番地が働かずに“面倒くさい”と思えるような仕事も、『最初は①、①が決まれば②、次は③……』と、作業をプロセスごとに細切れに切り出して、手順の視覚化をすることが大切です。

自分の脳番地の得意・不得意が分かると、仕事のやり方から準備の仕方まで、いろいろな改善方法やアプローチの方法が発見できそうです。そうすることで「面倒くさい」がなくなれば、大成功です。

まずは自分の得意・不得意とする「脳番地」を見つけることから始めてみませんか?

🔴一番最初の感情を「やりたい!」に!

脳の特性で感情が真っ先に処理されるとしたら、最初に起こる感情は「面倒くさい」ではなくて、もっとそれをしたくなる楽しい感情にすることも一つの方法です。ポジティブな感情を誘導するには、以下の2つのヒントがあります。
「小さな達成感」
「疲れていたけれど、洗い物を置きっぱなしにせず片付けた!」など、どんなに些細なことでも良いので、できたら自分を褒めてみる
そして次のレベルを目指して…
「習慣にしてしまう」
どんな小さなことでも良いので続けてみて、何も考えずに手足が動くレベルの習慣にする。
「面倒くさい」VS「やらなきゃ」の対決ではどうしても「面倒くさい」が勝ちます。「面倒くさい」より先にポジティブな感情が呼び起こすには、小さなことでも行動を起こしてみて、できたら自分を褒め、小さくても達成感を得ることが大切です。それが脳の快感となりポジティブな感情を生み出します。

とにかく身体を動かす(行動する)ことで、運動系脳番地のスイッチを入れると、つられるように他の脳番地も働きだす。これは、脳の感じる「面倒くさい」を解消させる特効薬です。「面倒くさい」気分は、適切に取り扱うことで「自分の可能性を伸ばす成長スイッチ」にもなり得るのです。

「自分で自分をもっと幸せにできるチャンスと考えれば、”面倒くさい”も前向きにとらえられると加藤先生は指摘されています。気力の生まれる脳のメカニズムを知り、脳の2階部分「感情の脳」を上手く喜ばせることができれば、前向きな意欲が行動に結びつくアクティブ回路が回ります。モヤモヤしたら、あれこれ考えず、とにかく動いて見る、始めて見ることです。そうすれば必ずエゴレジもアップすることでしょう。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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