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小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
エゴレジと好奇心
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
🔴経験への開放性
「エゴレジ力」アップのキーワードの一つは「好奇心」です。心理学では、『好奇心が強くて、新しい経験に挑戦することが好き!』という心のもちかたのことを、「経験への開放性」と呼んでいます。近年、この「経験への開放性」が高いことが、より良く年を重ねるための重要な秘訣であることが、明らかになってきています。そして、エゴレジは、この「経験への開放性」と非常に強い関係があることが証明されています。
40~82歳の方々2,205名を対象にした国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究では、「経験への開放性」が、知的な能力とどのように関係するかを調べています。「経験への開放性」の高さは、12個の質問項目によって評価され、知的な能力は、「知識力」検査や「情報処理のスピード」検査などを用いて、約10年間にわたって繰り返し測定されました。その結果、年齢に関係なく、「経験への開放性」の高い人は、低い人に比べて、知的な能力が高いことが分かりました。すなわち、好奇心が強くて、新しい経験に挑戦することが好きな人は、知的な能力も高い傾向があったのです。
さらに重要な発見は、高齢の方ほど、「経験への開放性」という心のもちかたが、その後10年間の知的な能力の‘変化’に好ましい影響を与えていたことです。「経験への開放性」が高い75歳の方は、もともとの「知識力」の得点が高いだけでなく、10年後、85歳になってもなお、高得点を維持することができています。一方で、「経験への開放性」が低い75歳の方は、もともと「知識力」の得点が低いのですが、10年後には、さらに得点が低下していました。
🔴好奇心の正体は「自分を幸せにしてくれるもの」
『脳が目覚めるたった1つの習慣』の著者、東北大学脳科学センターの瀧靖之教授によれば、好奇心は「脳のごちそう」なのだそうです。なぜなら、脳が好奇心を示すまだ見たことのないものや、未知の世界には、今まで以上に自分たちをよりよくいかしてくれるものが潜んでいるかもしれないからです。私たちは進化の過程で、過酷な自然環境を生き延びるために、快適で安全な環境や、食べても害にならないものを常に探し求めてきました。この洞窟は雨に濡れなくて済むから快適そうだ」とか、「この草原は肉食獣がいないから安全じゃないか」「この果物は食べても安心そう」など、「好奇心」を発揮することで自分をよりよく生かしてくれるものを探し続けてきたのです。そのようにして見つけた「快適」「安全」「安心」といった情報に、脳の扁桃体は「快・好き」というタグ付けをします。そうなると、快楽物質であるドーパミンが放出されるので、脳は気持ちよさを感じて幸せになるのです。
この幸せを味わいたくて、「もっと自分を幸せにしてくれるものを探しに行きたい!」と、脳は常々思っているのです。これが「好奇心」の正体のようです。つまり、好奇心をもって生きることこそ、脳を喜ばせて、脳力を目覚めさせる鍵なのです。「見たい」「聞きたい」「知りたい」「やりたい」とあなたが感じる時、脳は自分が今よりよく生き延びられる可能性を感じてワクワクしています。
美味しいものを食べにいくとき、大好きな仲間と話しているとき、趣味に夢中になっているとき、やりたい仕事に携わっているときなど、積極的に自分にとっての楽しみを追い求めようとするとき、あっという間に時間が過ぎていくのは、脳がとてつもない集中力を発揮しているからです。
このようなとき、私たちはほとんど疲れを感じることがありません。ドーパミンにはストレスを和らげる働きもあるので肉体的な疲労を感じることはあっても、充足感や喜びのおかげで、むしろ元気がみなぎってきます。だから「明日も頑張ろう!」という気持ちになれるのです。
🔴好奇心のもたらす健康効果
他人との絆が深まる
米ペンシルベニア大学のBen Dean博士によれば、「好奇心の強い人は良い聞き手であり、会話が上手な人が多い」そうです。知り合って間もない人同士、挨拶代わりに興味のあることや趣味について尋ねたりしますが、これは相手の興味に対する、自らの“興味”に他ならないものです。人間関係を築く上で、好奇心は欠かせない要素だということです。
認知症を予防
「生涯にわたり“積極性”を忘れず、脳に知的な刺激を与え続けるべき」と指摘しているのは、米メイヨ・クリニックのDavid Knopman教授。そうすることで将来認知症になるリスクが減ることが、約2,000人を対象にした調査で明らかになりました。
学習効果が高まる
それほど興味のないことでも、ふとしたきっかけで好奇心が湧き起これば、スルスルと頭に入ってくるようになることが、米カリフォルニア大学デービス校のMatthias J. Gruber氏らの調べで明らかになりました。その“ふとしたきっかけ”は、それほど興味がなくても好奇心を目覚めさせる、自分なりの方法を見つけておくのがいいそうです。例えば学習の合間に10分ほど休憩して自分の好きなことをすれば、脳の快楽中枢が刺激を受け、つまらないと思えた内容でも興味を持って取り組めるようになるそうです。
最近、新しく始めたことはありますか? 今、関心があることや、チャレンジしてみたいことはありませんか?好奇心旺盛に過ごすことの重要性はご理解いただけましたか?好奇心は「エゴレジ力」アップのキーワードです。小さな行動でいいのです。いつもと違う道を通ってみるだけで新しい経験ができ、発見があるでしょう。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
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