《健康》エゴレジと自分サポート

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。

エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

🔴プレゼンティズム 

近年、出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により十分にパフォーマンスが上がらない「Presenteeism(プレゼンティズム)」状態の従業員が注目されています。

病気や体調不良などにより従業員が会社をたびたび、あるいは無断で欠勤することを「アブセンティズム」(absenteeism)と言います。あまり聞きなれない言葉ですが、英語のabsent、欠席、欠勤から来ている言葉で、欠勤や早退などで職場に出勤せず、業務につけないことを指します。

一方、プレゼンティズムは、このアブセンティズムに「プレゼント(present)=出席している」を組み合わせて考案された造語です。これまで企業では伝統的にアブセンティズムによる生産性の低下が問題視されてきましたが、最近は、従業員が出社していても、何らかの不調のせいで頭や体が思うように働かず、本来発揮されるべきパフォーマンス(職務遂行能力)が低下している状態であるプレゼンティズムのほうが、組織全体としての損失の大きいことがわかってきました。風邪や二日酔い、頭痛や胃腸の不調、花粉症のアレルギー症状などつらくても無理をすれば出社できる程度の疾病が原因で発生するのがプレゼンティズムです。

🔴休まない日本人

日本のビジネスパーソンにとって「勤勉は美徳」であり、多少の風邪なら体調不良を押して出社するという人は、決して珍しくありません。現に、気象情報会社のウェザーニューズが行った「日本の風邪事情」調査によると、日本人が風邪で熱が出て会社や学校を欠席するボーダーラインは平均で37.9度。38度まで上がらなければ、休もうとはしないことがわかっています。

あなたはどうですか?仕事やプライベートに追われ、プレゼンティズム–「熱があるけど、頑張って出勤しよう」「今日は花粉症がヒドイ。でも休めない」「二日酔いで頭が痛い。でも会社には行かなくちゃ」など–で日々を過ごしていませんか?

🔴「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒

ドラッカースクールのジェレミー・ハンター准教授は、「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒。自己犠牲で頑張りすぎるのはあまりに非健康的であり、心身をもっと大切にしなければ、21世紀で成功できない、と語っています。

また准教授によれば、休むことに罪悪感を覚える人は米国にも多く、特にエグゼクティブワーカーや、それを目指す学生たちなのだそうです。ハンター准教授は、そういう人たちにどうすればゾーン・オブ・レジリエンスの内側に戻れるのか、を教えているそうです。

🔴ゾーン・オブ・レジリエンス

ひとには転んでも立ち上がっていける、神経系の「ゾーン」があり、このゾーンの内にいると、しんどい時もしなやかに回復できます。疲れても、折れてしまわずに気力を回復できる。いわゆるレジリエンスのある状態を、自ら実現できます。しかし、頑張りすぎてしまうと、ゾーンを超えてしまいます。このことを“過覚醒”といいます。たとえば仕事で徹夜したとしましょう。ハイになると、無理をしても乗り切れるときもありますが、長くは続きません。あるときに、気持ちも身体もガクンと落ちてしまいます。すると今度は、どうしても身体に力が入らなかったり、やる気がなくなったりして、出社できなくなってしまう。このことを“無覚醒”と呼びます。

頑張れば頑張るほどパフォーマンスが上がるように思いがちですが、果たして本当にそうでしょうか?過労で倒れてはじめて、自分が無理をしていたことに気づく人は少なくありません。

自分の心と身体の無理に気づくことで初めて、自分をサポートできます。例えばしんどいと気づいたらしっかり寝る、誰かに電話して話をする、とかゾーン・オブ・レジリエンスの内側に戻ることが必要です。

🔴サポートの基本は、十分かつ質のいい睡眠

プレゼンティズムが発生すると、結果として本人自身がストレスを増加させてしまうのです。これを避けるためには、ゾーン・オブ・レジリエンスの内側に戻るためにゆっくりと休むリフレッシュすることが必要です。仕事中にリフレッシュができればいいのですが、それが難しい場合はやはり休みをとるようにしましょう。そして、我慢して働くという選択肢はなるべく消しておいて、どうやったら効率良くケアできるのかということを考えてみましょう。

一つは、質のいい睡眠です。睡眠に関して先のハンター准教授は5つの提案をされています。

  1. 午後2時以降はなるべくカフェインを摂取しない
  2. できればお酒も飲まない。お酒には睡眠導入の効果もありますが、半面、睡眠の質を下げてしまいます。
  3. パソコンのブルーライトを浴びるのも、寝る前は避けた方がいい
  4. お風呂に入る
  5. 朝のエクササイズ

とにかく、よく眠れて、ゆったりとした朝を迎えること。これが基本です、とハンター准教授は勧めています。

朝起きたときに「疲れが取れていないなぁ」と感じる日が続く場合は、要注意です。

🔴良好な人間関係

もう一つは「良好な人間関係の存在」です。これは、誰とでも良好な関係を築くという意味ではなく、「話したいと思える人がいる」ということです。一人で十分です。会社の内外に関係なく、家族だって良いのです。

悩みを相談するとか、辛いことをあえて話すことでもありません。どんな話題であっても「心置きなく話せる人がいる」ということが大事なのです。自分にとって「話をちゃんと聞いてくれる」と思える人がいると、心理的なショック・アブソーバーになります(緩衝効果)。「分かち合える人の存在」がエネルギーを与えてくれるのです。

「なにかあれば休める」と思うことが、自分の心の余裕になります。逆に「休みなくがんばろう!」と張り切りすぎると、急に何もかもがイヤになって「とにかく休みたいから、会社やめるしかない!」と極端な結論になりがちです。エゴレジの高い人は、休むこと、リフレッシュすることが上手です。やらないといけないことは山積み、けれど今は体調を治すことが先決!と優先順位を変えることもときには必要ではないでしょうか。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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