スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
締め切りが近い、やることもやるべきことも明確なのに「やる気」がでない…というような経験はありませんか。モチベーションとやる気に関する心理学的な考察は、人間の行動や目標達成における重要なテーマです。そこで今回は、モチベーションとやる気についてのお話です。
心理学の観点から
モチベーションもやる気も行動の原動力とする考え方があります。
心理学的には、モチベーションとは「行動を起こさせ、目標に向かって維持する心理的機能のこと」とされています。つまり、心理学的に見た場合、まず行動を起こさせる要因があること、さらにその行動を持続させることができるものであることの二つが重要であることが分かります。
モチベーションとやる気、この二つの違いは、「行動をする前の気持ちか、行動をしはじめてからの気持ちか」です。
・モチベーションは行動する前の動機付け
・やる気は行動を継続していく力
ともいえます。
このモチベーションとやる気に関しては、心理学の観点からいくつかの理論や要素があります。
1.モチベーションの種類
- 内発的動機付け: 内的な興味や楽しさ、自己満足感によって動かされる動機。たとえば、趣味や学びへの純粋な関心がこれに該当します。
- 外発的動機付け: 外部からの報酬や期待(例: 給与、賞、称賛)がモチベーションになるもの。短期的な結果を求める場合に有効です。
2.やる気を高める要因
- 自己効力感(Self-Efficacy): 自分が目標を達成できるという自信や信念。この感覚が高いほど、やる気が持続しやすいとされます。
- 目標設定理論(Goal-Setting Theory): 目標が具体的で、達成可能でありながら挑戦的であるほど、モチベーションが向上します。
- 報酬とフィードバック: 適切な報酬や肯定的なフィードバックは、やる気を維持する力になります。
3.自己決定理論(Self-Determination Theory)
デシとライアンによる理論で、モチベーションが以下の3つの基本的な心理的ニーズによって駆動されるというものです。
- 自律性(Autonomy): 自分で選び、自分で決める感覚。
- 有能感(Competence): 自分がうまくできるという感覚。
- 関係性(Relatedness): 他者とのつながりや社会的な関係を感じること。
4.やる気が低下する原因
- 倦怠感: 同じ活動が繰り返されることによるマンネリ化。
- 過剰なプレッシャー: 過度の期待や責任感が、やる気を削ぐことがあります。
- 失敗体験: 過去の失敗が自己効力感を低下させる可能性があります。
モチベーションとやる気の関係
モチベーションは行動を起こすための「動機」や「理由」であり、やる気はその動機に基づいて生じる「感情的エネルギー」や「実際の行動力」といえます。それぞれがどのように影響し合うのでしょうか。
1.モチベーションがやる気を生む
- モチベーションが高まると、それがやる気を直接引き起こす要因になります。たとえば、明確な目標(モチベーション)が設定されていれば、その目標を達成するために前向きな感情や行動(やる気)が生まれやすくなります。
- 内発的モチベーション(興味や楽しさ)を感じるときは、やる気も持続しやすいです。
2.やる気がモチベーションを強化
- 逆に、やる気に満ちた状態で行動することで、成果や成功体験が得られると、さらにモチベーションが高まるという相乗効果が生まれます。これを「成功体験のループ」と呼ぶこともあります。
- たとえば、運動を始めたときに最初は少し無理してでもやる気を出し、結果として体調がよくなると、その成果がさらなるモチベーションとなります。
3.悪循環の可能性
- モチベーションが低い場合、やる気も湧きにくく、行動が起こせないことでさらにモチベーションが低下するという負のスパイラルに陥ることもあります。
- やる気が起きないときに、小さな成功を積み重ねてモチベーションを再燃させることが有効です。
やる気の出し方
最新の研究によると、人の「やる気」を引き出すにはいくつかの法則があることがわかっています。
1.「やる気があるから行動する」のではなく、「行動するからやる気が出る」。
- 「たった5分だけ」ルール(まずは5分だけ何か–運動、読書、片付けをする)
- 習慣化のコツ:「歯磨きの後にスクワット」「コーヒーを淹れたらストレッチ」など、既存の習慣にくっつける
▶ エビデンス
研究では、「5分だけでも行動を始めると、その後続けたくなる確率が高まる」ことが確認されています(行動活性化の理論)。
2.2種類のモチベーション(動機付け)ををバランスよく使う。
内発的動機づけ:「自分がやりたいからやる」(楽しい・達成感) 外発的動機づけ:「報酬があるからやる」(お金・ポイント・罰則) |
• 運動を続けたいなら → 最初は「報酬(お金・アプリのポイント)」を活用し、習慣化したら「楽しさ」にシフト。
• 仕事のモチベーションを上げるなら → 短期の目標に個人的ボーナスを設定しつつ、達成感を味わえる仕組みを作る。
▶ エビデンス
• 「金銭報酬を使うと短期的に運動量が増えるが、やめると戻りやすい」(報酬依存のリスク)
• 「楽しくて続けられる仕組みを作ると、長期的な継続率が上がる」
3.ゲーミフィケーション(ポイントやランキング、バッジなどゲーム感覚)を取り入れる。
• 歩数アプリで毎日の記録をつける(見える化で効果UP)
• 「○日連続で続けたらご褒美」ルールを作る
• タスクをレベルアップ方式にする(「3日続いたら次のステージ」)
▶ エビデンス
ゲーム要素を取り入れると、運動の継続率が約15%上がることが研究で示されています。
4.セルフモニタリング(自分の行動を記録する)
• 体重・食事・運動・仕事の進捗を記録するだけで、達成感が得られやすい
• スマートウォッチやアプリなどを活用すると効果UP
▶ エビデンス
記録をつけた人は、運動や健康習慣を継続する確率が30%高まることが確認されています。
5.目標設定の科学
• 「1日30分歩く」「週3回ジムに行く」 など、具体的な目標を決める
• 仕事なら 「1時間ごとに15分休憩を入れる」「毎朝タスクリストを書く」
▶ エビデンス
「明確な目標を設定すると、達成率が平均30〜50%向上する」ことが実証されています。
メンタルケアとやる気
またメンタルケアもやる気を出すために大切な要素です。
1.やったあとの自分を想像する
やらなきゃいけないことを、やり遂げたあとの自分を想像しましょう。
今のどんよりした気持ちから解放されて、スッキリした表情の自分が想像できるかと思います。また、やり遂げた自分へのご褒美を設けるのも良いでしょう。
2.やれることからやってみる
やる気が起きないときは、とりあえず少しやってみることもおすすめです。とりあえず始めてみると、気分がのってくることもあります。気分がのらなかったら、別の対処法を試してみればいいのです。
3.全く別のことをする
「あぁ~~~やりたくない!!」と机やパソコンの前で悩んでいるなら、いっそのこと、やらなきゃいけないことを放置して、全く別のことしてみましょう。「やりたくない…」と悩んでいる時間を使って気分転換をします。すると、気分が変わってやる気が出てくるかもしれません。
4.環境をかえる
いつもの環境でマンネリ化して、やる気が出ない場合もあります。やらなきゃいけないことを行う環境を変えてみましょう。環境を変えると気分転換になり、やる気が出てくることがあります。
5.人と話す
ひとりで悩んでいるなら、気分転換に人と話してみるのもいいでしょう。もし、やらなきゃいけないことより考えてしまう悩みがあるならば、先に解決しましょう。ぐるぐると悩んでいたのが、誰かに話すことで考えが整理されてスッキリすることもあります。
以上、エゴレジ研究所からモチベーションとやる気についてご紹介しました。気になる対処法があったら、ひとまず試してみましょう。それが今のあなたのやる気スイッチになるかもしれません。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
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代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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