科学的に幸せになる脳の働き

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

最新の研究では、幸せになるためには脳の働きを鍛えることが必要といわれ、世界の脳科学者たちは「島皮質」という脳の部位に注目しています。そこで今回は、そんな脳の島皮質の働きについてのお話です。

体と心をつなぐ「島皮質」

島皮質は、意思決定、認知的・感情的プロセス、注意のレベルに関与している可能性があるとして神経科学で注目されている領域です。

島皮質は、図に示すとおり、見た目ではあたかも島のごとく存在しています。しかし「島」という孤立したイメージを持つ名前とはうらはらに、他の脳領域と神経的なつながりを多く持っていることが知られています。
例えば、島皮質は、前頭葉(認知)、頭頂葉(注意)、側頭葉(言語・聴覚)や帯状回(感情・認知)、扁桃体(感情)、視床(情報伝達)など幅広い脳領域と双方向的な神経連絡を持っています。島皮質は幅広いネットワークを持っているため、その機能も豊富であり、自分の体の状態の意識化から、運動・認知プロセス、意思決定、知覚・情動など非常に多くの機能に関与しているのです。

中でも、島皮質の最も大きな特徴は脳のなかで「ハブ(中継地点)」のような役割をしている点です。
✓自分の外側から来る感覚と内側の感覚を繫つなぐ、
✓他人の気持ちと自分の気持ちを繫げる
✓過去の自分といまの自分や、いまの自分と未来の自分のイメージを繫げる  
といった時間的なハブの役割もします。
このハブの働きによって、私たちは他者のことを理解したり、他者に共感したりすることができます。

この島皮質を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせることが、その人の人生を豊かに幸せにすると科学的にわかってきたのです。つまり島皮質の機能を高めれば、他の人と心の繫がりを持ちやすくなり、たとえどんな過去を持っていようと、過去の自分を受け入れやすくなります。それだけでなく、島皮質は脳のいろいろな箇所を繫いでいるため、脳全体が活性化され、脳が本来持っている力が引き出されるのです。

イギリス・スターリング大学のルイス博士らの研究では「ウェルビーイングと島皮質の厚みは正の関係にある」という結果を出しています。ウェルビーイングとは幸福の概念を指します。つまり、幸せな人というのは島皮質が厚いのです。
これは逆に考えると、島皮質が厚くなるような脳の使い方をすれば私たちは幸せになれるということです。

島皮質を鍛える

この分野の第一人者、脳科学者の岩崎一郎先生は、25年以上にわたり、ノースウェスタン大学医学部神経科学研究所など、米国を中心に最先端の医学脳研究に従事。最新の研究結果も含めて250以上の論文を新たに読み込んだそうです。
その著書には、最新の脳科学で導き出された『科学的に幸せになれる 脳磨き』(サンマーク出版)、『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』(クロスメディア・パブリッシング)、『30日で人生がうまくいきだす脳の習慣』(サンマーク出版)など多数あります。

岩崎先生は、研究の過程で「幸せ」の概念に着目し、科学的に証明された「幸せにつながる行動」を研究者の目線で抽出し、日々の生活の中で実践。自らの心身の変化を実感し、人が豊かにかつ幸せに生きるための脳の使い方を体系立てたということです。

岩崎先生は、エビデンスにもとづいた島皮質を鍛える脳の使い方を「脳磨き」と呼んでいます。そして「島皮質を鍛えるような脳の使い方、ひいては脳全体をバランスよく協調的に働かせるような使い方をすることが、人生を幸せに豊かにするポイントだ」とされています。「脳磨き」の最大のポイントは、誰もが歯磨きのように自然にできる脳の使い方だということです。
島皮質を鍛えることで、他人との理解や共感が深まり、幸せに生きる力が引き出されると言われています。島皮質を鍛える「方法は至ってシンプルで、誰でも簡単に取り組める」と岩崎先生はコメントされています。そのポイントは6つあります。

① 感謝の気持ちを持つ
誰かに何かをしてもらったときの感謝だけでなく、常に感謝の気持ちを抱くことが脳の活性化には有効です。
韓国・ヨンセ大学のキョン博士らの研究では、被験者に「感謝のワーク」を行ってもらい、そのときの脳の状態を調べました。
その結果、感謝しているときには脳内で複数の領域がプラスに繫がり、脳の活動が活発化しました。

② 前向きになる
気持ちが前向きだと、脳は活性化され、脳全体が働きやすくなります。
スペイン・マドリード大学のマーチン・ローチ博士らの研究では、「ポジティブな言葉」と「ネガティブな言葉」を投げかけられたときの人の脳波を測定しました。
その結果、ポジティブな言葉を投げかけられた場合には、脳全体が活性化したのに対して、ネガティブな言葉の場合、脳のアクセルはあまり活性化が起こりませんでした。

③ 気の合う仲間や家族と過ごす
孤独は人の脳にとって「毒」になります。アメリカ・シカゴ大学のカチオポーロ博士らの研究によると、孤独の状態が続くと、新しく脳細胞を生み出す脳内ホルモンの生産が減り、また、他の脳内ホルモンや神経伝達物質も減少することがわかりました。
このように人が豊かに生きていくためには、豊かな人間関係が欠かせないと脳科学的にもわかっているのです。

④ 利他の心を持つ
「まずは自分」と考えるのではなく、まずは他者のことを考える。これが「利他の心を持つこと」です。
スイス・チューリッヒ大学のハイン博士らの研究では、利他行動をした人は、脳内で島皮質と前帯状回、線条体という3つの部位がうまく繫がって活動したことが確認されています。

⑤ マインドフルネスを行う
ビジネス界でも注目を集めるマインドフルネスも、脳にいい効果をもたらします。マインドフルネスが脳の老化の防止に繫がるのです。アメリカ・ハーバード大学のガード博士の研究では、普段から、マインドフルネスを実践している人たちは、70歳になっても45歳のときの脳機能のままでストップしていたことがわかりました。

⑥ Awe(オウ)体験をする
大草原や大海原、あるいは星空など、自然を前にして圧倒される経験を、Awe体験といいます。カナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかりました。

一見、巷の自己啓発本や有名経営者の本にも書かれている内容で、考え方や行動そのものはオーソドックスなものが多いと思われたかもしれません。
岩崎先生は、従来型の脳の使い方を変えるには、段階を追ったトレーニングが必要だとも指摘されています。なぜなら「普段の生活の中で、従来型の脳のパターンを無意識のうちにたどりがち」だからとのこと。豊かで幸せに生きるには、まずこの従来の脳の使い方を意識して変えていく必要があるのです。「スポーツでトレーニングして実力を上げていくように、順を追って取り組み、従来型の脳の使い方を変えていくのがよい」と助言されています。

以上、エゴレジ研究所から脳の島皮質の働きについてご紹介しました。心から楽しいと言える人生が送ることができる、「幸せ習慣」は数多くありますが、今回は科学的に根拠のあるものを体系化された岩関一郎先生の説を紹介しました。「幸せ習慣」が身につけば、加齢とともに起こる体の衰えや悲しい現実に直面しても、たくましく乗り越えられるでしょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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