代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
子どもの頃はみんな好奇心の塊でいろいろなことに挑戦していましたが、大人になるにつれて新しいものへの関心もなくなっていき、好奇心が薄れていく傾向にあります。みなさんの日常も新しい発見の喜びや感動を実感しない単調な生活になっていませんか?今回は、好奇心についてのいろいろな研究をご紹介します。
目次
あなたは好奇心があるほうですか?
子どもたちの周りで時間を過ごしたことがある人なら誰でも、彼らの若い心が好奇心によって動かされていることを知っています。平均的な子供は10分で、おそらく平均的な大人が10日間で行うよりも多くの質問をします。
しかし、人々が歳をとるにつれて、好奇心の貯水池は枯渇する傾向があります。研究によると、平均して、新しい経験や新しい感覚に対する人の開放性は、年齢とともに着実に低下します。同時に、無関心が増加します。
女子のリアルな本音や意外なデータを届けているウェブメディア『fumumu(フムム)』が全国20〜60代の男女1,357名を対象に「自分は好奇心旺盛なほうだと思うか」という調査を実施した2018年の結果があります。それによると「好奇心旺盛だと思う」と答えた人は、全体で44.1%もいることが判明しました。年代男女別では20代女性の割合だけが男性より高く、30代以上では男性の方が多いという結果になっています。
好奇心の研究
心理学の分野では1950年代以降から様々な理論が発表され、好奇心をより深く理解する取り組みがなされてきました。
◆バーラインの拡散的好奇心と特殊的好奇心
1950年代に心理学者のバーライン氏によって発表された理論では、人の心理状況には「刺激が足りない状況」と「刺激がありすぎる状況」の2つの両極端な性質があり、好奇心はその間にあるバランスが取れた心地よい状況を探すためにあると考えられていました。
この理論の中で、好奇心には二つのタイプがあると発表されました。
一つは、退屈な状況を変えるために、色々なことを知りたいと思う「拡散的好奇心」で、
一つは、興奮を落ち着かせるために状況の理解を深め、一つの目的を持ってより深く物事を掘り下げる「特殊的好奇心」です。
◆ローウェンスタイン教授の好奇心
バーライン氏の理論に加える形で、1994年にはカーネギーメロン大学のローウェンスタイン教授が好奇心が生まれるのは「情報不足」や「知識不足」であると論じました。知識不足や情報不足の不快感を消去するために好奇心が発動するという理論です。
◆デシ教授の好奇心
一方、1970年代にはロチェスター大学のデシ教授は不快な状況を避けるためではなく、探求したい、自分の能力をさらに伸ばしたいなどの「内在的な欲求」こそが好奇心に繋がっていると論じました。
◆カシュダン教授の好奇心
異なる視点から好奇心を紐解いてきた上記の理論ですが、これらを統合するかたちで、ジョージ・メイソン大学のカシュダン教授は、好奇心には5つの側面とその側面から導かれる4つの好奇心タイプがあると論じました。
好奇心の5つの側面
「ポジティブ心理学」の第一人者であり、米ジョージ・メイソン大学心理学助教授のトッド・カシュダン教授によれば、好奇心には5つの側面があります。
5つの側面から出てくる4つの好奇心タイプ
5つの側面のうちどれか一つしか持っていない人はおらず、誰しも5つの側面を異なる割合で持ち合わせていると論じられています。カシュダン教授は3000人を対象に5つの側面を分析しました。
研究の中では3000人に「あなたはどのように好奇心を体験していますか?またはどのように好奇心は現れますか?」という質問を行っており、その回答を分析した結果、それぞれの組み合わせによって4つの好奇心タイプが存在すると発表しています。
1.魅了タイプ 心躍る探究 / 社会的好奇心 / 高揚感の追求・高、欠落感・低
このタイプは心躍る探求、ストレス耐性、社会的好奇心、高揚感の追求が他のグループと比較しても高く、欠落感が他のグループに比べて低いグループです。
研究の28%の対象者がこのタイプに属しており、人物像としては興味関心が広く、人生を冒険として捉えています。4つのタイプの中でも最も教育水準が高く、経済的にも裕福な傾向があり、社会的な課題に取り組んだり、快楽などにも価値を感じているグループです。
2.問題解決タイプ 欠落感/ストレス耐性・高
このタイプは欠落感とストレス耐性が他のグループと比較して高い水準にあります。
研究の28%の対象者がこのタイプに属しており、人物像としては努力家で、解くべき課題に取り組みながら学ぶのが大好きです。周りと関わるソーシャルメディアや他人への興味は強くなく、贅沢品などにも関心が薄いグループです。
3.共感タイプ 社会的好奇心・高、ストレス耐性/高揚感の追究・低
このタイプは社会的好奇心が高く、ストレス耐性と高揚感の追求が他のグループに比べて低めという特徴を持っています。
研究の25%の対象者がこのタイプに属しており、人物像としては自らを内向的と思っており、人には興味があるものの、直接関わるよりも観察することを好みます。4つのグループのうちストレスを感じていると答えた人が2番目に多いグループであり、物事が計画されていないと不安を感じやすいグループです。
4.回避タイプ 全ての側面・低
このタイプは全ての側面において他のグループと比べて低い傾向があるグループです。
研究の19%の対象者がこのタイプに属しており、人物像としては最も好奇心が薄く、自信がなく、学歴も収入も4つのグループの中で低い傾向があります。どのタイプの人物よりもストレスを感じており、困難な状況やわからないことを避ける傾向があるため、他のグループに比べても興味関心の分野が狭く、専門知識も限られるグループです。
好奇心を心理学の点から紐解いて5つの側面とそれらを組み合わせた4つの人物像タイプを紹介しましたが、皆さんはどの傾向が強く出るでしょうか。上記の4つのタイプからも見える通り、好奇心を持つことが人生においても大きなプラスにつながる傾向が読み取れます。
好奇心が連鎖するプロセス
『頭のいい人が「脳のため」に毎日していること』トッド・カシュダン・著、茂木 健一郎(翻訳)では、好奇心が連鎖するプロセスが示されています。
- 好奇心をもつことで、冒険する
- 冒険することで、発見をする
- 1と2のサイクルに満足すれば、それをくり返すようになる
- くり返すことで、ある特定の分野に精通し、能力が身につく
- 一定の能力を身につけることで、知識やスキルが伸びる
翻訳者である茂木先生は次のように述べています。
どんな世界においても、抜きんでる人の共通点を挙げるとしたら、何よりも「好奇心があること」です。人生は、「うれしいサプライズ」の頻度によって充実度が違ってきます。「好奇心」がきちんと働かなければ、物事をぼんやりと見過ごしてしまい、せっかくのチャンスを活かせないでしょう。安全であろうとすればするほど、私たちの行動は「したいこと」より、「したくないこと」に左右されてしまいます。プラスの経験を長引かせたい、より満ち足りた生活を送りたいと思うのであれば、あえて「新しいこと」や「不確実なこと」に目を向けることです。
以上、エゴレジ研究所から好奇心についての研究をご紹介しました。エゴレジ研のテーマ「エゴ・レジリエンス」のキーワードの一つが「好奇心」です。エゴレジ力の高さは好奇心の高さと連動します。年齢に関係なく、好奇心の一貫した高いレベルが精神的幸福や人生の満足度と相関していることも判明しています。好奇心とそれを養う斬新な体験が、より有意義で充実した人生への道を開いてくれるようです。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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