代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
40~60代は一般的に「ミドル世代」、「シニア世代」とも呼ばれています。しかし価値観やライフスタイルが多様化した現在、年齢を感じさせないほどに若々しく意欲的に人生を楽しむ女性が増え、一昔前の「中高年のイメージ」とは異なる印象を持つ方も多いのではないでしょうか。40~50代の女性たちは【マチュア世代】とも一部で呼ばれ、大人文化を創り出す年代としても注目が集まっています。そこで今回は、そんな大人女子のウェルビーイングについてのお話です。
人生100年時代!40~60代女性の調査
人生100年時代と言われる今、中高年と言っても人生はまだ折り返し地点。「人生終盤にきたのでそろそろ終活を…」と余生や死に備える女性がいる一方で、「人生中盤。この先何十年もある人生をより良くしたい」とQOLを追求する女性もいます。
後者の意識に注目すれば、いわゆる”ウェルビーイング”の状態になるために、中高年女性が人生に必要だと思っているのはどんなことなのでしょうか?
医療脱毛専門院のリゼクリニックが、自分の年齢(老い)を受入れつつも意欲的に人生を楽しむ現代の40~60代女性たちへ意識調査を実施(2021年11月)し、公表しています。
なかでも「今後の人生を充実させるために必要なことは?」の質問への回答結果が注目されています。
40~60代女性のウェルビーイングのトップ3は「健康・体力」「ひとりの時間」「貯金」という結果です。
●「健康・体力」
充実した人生のために最も必要なことは「健康・体力」という認識は、各年齢層で共通しています。
●「ひとりの時間」と回答した女性は6割超え
一般的にひとりの時間を欲しているのは育児中の女性、家庭と仕事を両立している女性、介護をしている女性などケアワークのタスクに常に追われている女性ですが、あらゆる人・情報・コトに囲まれている現代は、そうしたクラスター関係なく多くの人にあてはまる共通項になっているとの見方もできるようです。
●「パートナー」より「友人」
年齢とともに、求める人間関係は変化。人生をより良くするために必要な人間関係として、40代は「友人」よりも「パートナー」を挙げる女性の方が多いが、50代・60代は逆転。「パートナー」より「友人」を挙げる人が多いようです。
●「美容」の人生の充実度への影響
40代・50代で「美容」を挙げた女性は3割越えの一方で60代は1.8割ほどで、60歳を境に低下傾向にあるようです。
「ウェルビーイング」の認知度
ビジネス界では「ウェルビーイング」はすでに広く知られた言葉ですが、まだ生活者一般には浸透していないようです。
朝日広告社が実施した調査(全国20〜60代の男女2,000名;2021年12月)でウェルビーイング の言葉の認知状況について聞いたところ、男女合わせて認知度は21.5%(「内容まで知っている」「聞いたことがある」の計)という結果でした。
興味深いのは男女別の集計結果(以下表)です。認知度は男性より女性が低いのですが、ウェルビーイングの意味に対する共感度(「共感できる」)については女性の方が高く、女性の方がウェルビーイングに関する感受性が強い様子がうかがえます。
言葉の認知率と共感度
女性 | 男性 | |
認知度 | 20.0% | 23.0% |
共感度 | 61.1% | 52.8% |
※調査における「ウェルビーイング」の定義:幸福(な状態)、健康(な状態)という意味。また、心身がともに健康で、社会的にも満たされた状態を表す概念。
ウェルビーイングの指標
「ウェルビーイング」をより理解するために、朝日広告社が独自に開発した多角的に生活者のウェルビーイングを分析するための指標があります。
OECD(経済協力開発機構)の「より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)」等を参考に、「自分自身」「自身の経済・成長」「生活環境」「周囲との関わり」の4領域と、各領域で3要素を設定。さらに生活者インタビューを重ね、各要素に5つの指標を紐づけています。以下が、その指標60項目です。【出典 朝日広告社】
【指標における略語の説明】
・ストレスは無い…日常生活の中で過剰なストレスが無い
・気分転換…日常生活の中で適度に息抜きや気分転換が出来ている
・自分の時間…日常生活の中で自分の時間が取れている
・生活の充実…日頃の生活が充実している
・自分が好き….今の自分が好きである
・良好な健康状態…健康状態は良好である
・不調は無い…身体に不調を感じるところが無い
・健康的な食事…健康的な食事が摂れている
・運動…定期的に運動をしたり、身体を動かしたりしている
・睡眠…普段の睡眠で休養が十分に取れている
・望む生き方…自分の望む生き方が出来ている
・打ち込めるもの…趣味など、打ち込めるものがある
・生きがい…生きがいを感じている
・将来の目標…将来の目標がある
・歳を取ること…歳を取ることに対して悲観的ではない
上図の4領域のうち「自分自身」に関する調査結果(以下グラフ:女性)は下図のとおり。グラフ線が外側にあるほど、充足度が高い状態を示しています。
女性の場合は、「自分の時間(日常生活の中で自分の時間が取れている)」「気分転換(日常生活の中で適度に息抜きや気分転換ができている)」は全体的に高い傾向があり、多くの女性がこの項目については充足感を得られていることがわかります。
一方で、「不調は無い(身体に不調を感じるところが無い)」「望む生き方(自分の望む生き方が出来ている)」に関しては全体的に低く、女性たちの充足感を押し下げている要因であることがわかります。
【出典 朝日広告社】
朝日広告社が開発したフレームは、感覚的な理解が先行して広がっていたウェルビーイングの概念を的確でわかりやすい言葉で整理整頓されています。
ウェルビーイングというフワッとした概念を細かい項目に分解して捉えることで、生活者の充足度を上げているコトと下げているコトを具体的に把握できるので、便利でわかりやすい指標と言えるでしょう。
Withコロナ時代の働く女性の「ウェルビーイング実感」55点
HER-SELF女性の健康プロジェクトが、2020年11月に、20歳~65歳の有職女性1,000人と、20歳~65歳の現職で人事部担当の男女400人を対象に、「働く女性のウェルビーイング」調査をしています。
働く女性の「ウェルビーイング実感」の平均点は、100点満点中55点という結果でした。
柔軟な働き方がウェルビーイングの向上につながっているとしながらも、働き方以外の制度やサポート体制が必要だとまとめられています。
現代特有の健康問題の一つがメンタルヘルス。ネット・SNSの普及、爆発的に増えた情報量、日常的なタスクの増加、所得の二極化、生き方の多様化、核家族化・単身者の増加・平均寿命延伸による孤独・孤立などを背景に、精神的に疲れ切っている人は多いと考えられます。モノ余り時代ということもあり、今の人々は物質的豊かさよりも精神的豊かさを求めており、いわゆるウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)のニーズが高まっていると言えるでしょう。
以上、エゴレジ研究所から、大人女子のウェルビーイングについてのお話をご紹介しました。自身のウェルビーイングの実感を高めるためには、まず現在の自分がどのような状況に置かれていて、どの程度の幸福度であるかを知ることが必要だと考えられています。 あなたが最後に、自分の健康や幸福に関して考えたのはいつでしょうか?
身体の健康に関しては、健康診断や人間ドックを受ける前後に意識する方が多いかもしれません。ですが、よほど診断結果が悪い場合を除き、多少注意が必要な程度であればそのままにしてしまう方もいるのではないでしょうか。このように健康については意識する機会があるかもしれませんが、慌ただしい日常で精神面の健康や幸福について考えることはほとんどないという方も多いでしょう。先に示した60の指標などを参考に、自身のウェルビーイングを考えてみませんか。自分を知ることはウェルビーイングを向上させるための第一歩です。そこから本当は自分がどうしていきたいかなどを考えるヒントを見つけることができます。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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