ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、不安やストレスを感じる方も多いと思います。NHKが3月9日に発表した世論調査では、新型コロナウイルスに自分や家族が感染する不安をどの程度感じるかについて、「大いに不安を感じる」が24%、「ある程度不安を感じる」が50%、と回答するなど、新型コロナウイルス感染への不安を抱く人が7割を超えています。
脳科学者の篠原菊紀先生によると、「ストレスが生じるメカニズムは、心理的なストレスも環境によるストレスも同じです。何かに対して「イヤだな」と感じると、脳の扁桃体(へんとうたい)が興奮し、自律神経のバランスを乱す信号を送るため、胃が痛くなったり眠れなくなったり、疲れが回復しなくなったりする。また、扁桃体が興奮したままだと、脳の働きが鈍って、物事を理解・判断したり人とコミュニケーションを取ったりする、認知機能が低下してしまう」そうです。
今の状況では誰でも不調が起こって当たり前です。その不調を少しでも防ぐために、何ができるか考え、生活していくことが大切です。今回は、こうした不安からくるストレスにどう対処すればいいか、ストレス対策とメンタルヘルスの専門家、東邦大学医療センターの小山文彦教授のお話を中心にご紹介します。
目次
🔴まずは 生活習慣をととのえる!
睡眠、食事、運動3つを見直しましょう。
睡眠覚醒のリズムを保つことが大切です。良質な睡眠をとることがストレスの緩和につながります。毎朝一定の時刻に起きることで、体内時計のリズムをととのえましょう。また良質な睡眠をとるために、ぬるめのお湯につかって体を温めると、副交感神経が有意になってリラックスして寝つきがよくなり深い睡眠が得られます。
食事バランスも重要です。ビタミン・たんぱく質をしっかりとりましょう。ストレスがたまるとストレスホルモンが増えて、血糖値があがりやすくなります。糖質をむやみに増やさないようにしましょう。(疲れやすさや肥満にもつながります)
適度な運動も大切です。からだを動かすと、骨格筋の緊張がとれてリラックスします。有酸素運動をとりいれて笑顔ですごしましょう!幸いなことに、「密集地でなく換気の良い所」「風通しの良い屋外」はOKとのこと。心身共にも良い有酸素運動の「ウオーキング」「ジョギング」を始めましょう。
太陽の光を浴びることもストレス解消法の一つです。太陽の光を浴びることでストレスによって乱れた自律神経のバランスを整える効果が期待できます。また太陽の光は交感神経を刺激して、セロトニン神経を活性化させる働きがあります。セロトニンはドーパミン、ノルアドレナリンと並び『三大神経伝達物質』とも呼ばれており主に精神の安定を保つ効果があります。つまり体内のセロトニンが増えることで不安やイライラといった感情を抑えることが可能になるわけです。ちなみにこのセロトニンですが、夜になると先ほども取り上げたメラトニンという物質に変化して快適な睡眠を促してくれます。
🔴情報にふりまわされない!
新型コロナウイルスについては、特に興味をひきそうな情報、不確定情報、意見の割れている知識が、さまざまなメディアでとりあげられています。多方面に新しい情報を求め過ぎてこうした情報にふりまわされないようにすることがストレスの解消のためには大切です。不安を解消したいと思うあまり、ほしい情報に行きつくまで情報を検索しつづけたりすることもあります。知らないうちにこうした行動にかなりの時間をとられ、結果的に心理的な視野が狭くなるとストレスがたまります。正常性または悲観的なバイアスにも注意が必要です。正常性のバイアスとは、「自分だけは少々なら大丈夫だ」などと思い込むこと。君子でなくても「君子危うきに近寄らず」がいいでしょう。悲観的なバイアスとは、逆に恐怖や不安をあおるような新説(見解が一致していない傾向があります)に影響されることです。こうした情報に接する時間を減らしましょう。わからないことは、わからないままにしておくこと(専門用語では「不安耐性」といいます)が要(かなめ)になります。SNSなどでの議論や私見発信の機会にむやみに参加したりシェアしたり、そこで見聞きした極端な情報を鵜呑みにしないようにしましょう。正確な根拠のある情報源を見つけ時間を決めてそれを見る。それ以外の時間はスマホやテレビで情報の垂れ流しをしない習慣を作ることも必要でしょう。
🔴SOC(首尾一貫の感覚)をもとう!
SOC とは「Sence of conherence」の略。直訳すると「首尾一貫感覚」となり、ストレス対処の研究で知られるユダヤ系アメリカ人の医療社会学者アーロン・アントノフスキー博士により提唱された考え方です。心の折れやすさを握るカギとも言われ、エゴレジ力とも共通するものです。
有意味感をもつ
日々の生活、すべての物事に意味ややりがいを感じることです。困難を乗り越えて生きようとする感覚により、意欲的になることができます。今実施している、手洗い励行のような基本的なセルフケアの意味、外出自粛などの目的をきちんと理解し、それによって感染の機会を減らせているんだ、ということをイメージしましょう。
把握可能感をもつ
先を見通しながら、今の現状を見ることです。身の回りのできごとを正確に把握し、将来に起こる展開をある程度予測することで余裕をもって対応することができます。公的なコンセンサスの得られた方針、情報を正しく知っておきましょう。
処理可能感をもつ
なんとかなる、なんとかやっていけるという感覚です。一人では難しいと思われることも、周囲とのつきあいをとおして「できる」という感覚を得られやすくなります。家族、同僚、友人など身近な人と困ったときの協力関係をもったり、かかりつけ医や身近な有識者に相談したり尋ねたりすることで、不安が解消します。行動制限がつづき、家庭でも仕事でも不安のつのる今こそ、互いにねぎらいあうこと、そして自分自身をも認めてねぎらうことがとても大事なことだと思います。できるだけ笑顔で過ごしましょう!
🔴最新AIツールを活用して不安を軽減する
それでも日々の不安が拭えないという方に、日本認知療法・認知行動療法学会理事長の大野裕先生のグループが開発中のAIによるツール「こころコンディショナー」(https://carechat-demo.kiku-hana.jp/)をご紹介します。このツールは不安やうつ気分を抱えちょっと相談したいなと感じている人向けに開発されました。認知行動療法を応用し、考え方や行動を変えていくプロセスでストレス対処できるように整えていくものです。新型コロナ感染拡大で不安を抱えている方が多いという状況を踏まえ、試運転期間として4月末頃まで無料公開される予定です。取り急ぎ公開されたので一部機能はまだ整ってはいないようですが、不安やうつ気分を認知行動療法で乗り切るプロセスを学ぶのに役立つはずです。治療ツールではありませんが試してみてはいかがでしょうか。
WHO(世界保健機関)も情報を掲載しています。
リンク先 「COVID-19流行によるストレスへの対処」
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相手は新型ウィルス、いつ収束・終息するかわからず、不安は消えず、ストレスもたまりがちです。でも、こんなときだからこそ、健康やストレスに対して防衛する知識を再認識する機会にしてみませんか。フェイクニュースに惑わされず、ウイルスのワクチンと治療薬が早くできることを期待して、新型コロナウイルスに負けずにエゴレジ力で乗り越えていきましょう!
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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