ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
いつも「やるべきこと」が溜まっていて、心安らぐ暇がない・・という苦しさを抱えていませんか。そのような方は、「やった方が良いこと」「人から頼まれたこと」を積極的に受け入れようとする、頑張り屋さんの【足し算】タイプかもしれません。
ゴールがない足し算思考を続けていると、心身の健康をキープできなくなる可能性があります。思い当たる方は、【足し算】から【引き算】へ考え方を転換してみませんか。今回はしなやかに生きるための【引き算思考】に着目します。
🔴「やるべきこと」も「やりたいこと」ができない・・
仕事や家事、育児など、“当たり前”にやるべきことをこなすだけで、かなりの時間をとられてしまうのが私たちの毎日です。朝からやるべきことの予定があっても、すべては完遂できず、気づけばあっという間に⼀⽇が終わってしまっていた・・という経験は、誰しもきっとあるはずです。そのように唯でさえ忙しい状況ですが、さらに「やった方が良いこと」「人から頼まれたこと」、そして何より「自分のやりたいこと」も、諦めるわけにはいかないことです。
実は、頑張り屋さんほど、そのような苦しさを抱えこんでしまう傾向があるようです。なぜなら、「やるべきこと」を諦めたり、見送ったりするという選択をすると、「やるべきことができない自分」を認めてしまうような感覚に陥るためです。それは、向上心があるという証でもあるため、素晴らしいことなのですが・・・。ストイックに頑張りすぎると、力の抜きどころが分からなくって、気持ちだけでなく、体までダウンしてしまいます。「やるべきこと」に追い詰められて、それを叶えることができないと、どんどんストレスがたまってしまいます。
🔴“丁度いい負荷”
今ある環境、今とれる時間の中で、自分が無理せず少しずつ成長できる“丁度いい負荷(≒キャパシティ)”を見極めてみませんか。もしも“丁度いい負荷”をオーバーしている状況ならば、思い切って「ToDoリスト」から、なにかしら「やらない(引き算)」選択をしてみましょう。まずは、自分に合ったペース配分です。他人と比較せず、自分に合った負担やペースを見つけられれば、日々のやるべきことを、しなやかに継続させていくことができます。
“丁度いい負荷”がオーバーしていることがあなたの現実ならば、勇気をだして、あえて「やらない(引き算)」選択をしてみましょう。そのヒントは・・
1.“迷ったら”・・お断りする
会社の懇親会や、気の置けない仲間での集まりであっても、ときには、誘われて迷うこと、ありますよね。そんなときは思い切ってお断りしてみませんか?「迷う」という心理は、「行った方が良い理由」と「行きたくない気持ち」を頭の中で比べている状態。そんなときは、自分の正直な気持ちを優先させましょう。
「丁度別の予定が入ってしまっていて・・・」「この曜日に新しい習い事を始めたので・・・」など、差し障りのない言葉で伝えれば、相手にも不快感を与えることなく、お断りすることができます。
2.苦手分野は人にお願いしてみる
苦手分野も、引き算を。自分がこなすと時間がかかってしまう苦手なことに直面したら、他の人に助けてもらうことは、適切な選択です。苦手なタスクだけれど人には頼みにくくて、自分で全て引き受けてしまっていることはありませんか?お願いできる人がいる場合は、少しでも周りに助けを求めましょう。
正直に「私、実は○○が苦手で・・・お願いできますか?」と伝えれば、代わりにできる人が助けてくれるはずです。そのとき、その人に負担をかけてしまって後ろめたいと思わずに、「今度自分の余裕があるときに、代わりに何かお手伝いしよう」と考えれば大丈夫。短期的に考えず、長い目で持ちつ持たれつの関係を築いていけば、信頼関係にもつながります。
3.周りのために頑張ることをお休みする
ToDoリストが増えてしまっている方の中には、優しくて思いやりがあるために、いろんなことを引き受けてしまう方もいます。周りのために・・と頑張りすぎていませんか?信頼関係のため、相手の負担を減らすために「自分が犠牲になっても頑張ればいい」と思っているのかもしれません。でも、もしかすると相手のためになっていないかもしれません。時には、「周りのために頑張ること」を引き算。自分のことだけを考えてみませんか?
自分にとって今大切にしたいことはどんなことか、それに対して丁寧に時間をかけることも、等身大の自分を大切にすることにつながるはずです。
4.自分に負荷がかかることをやめてみる
自分で決めて取り組んでいること――習い事やお弁当作りなどが、時には大きな負荷に感じることもあると思います。そんなときは、思い切ってやめてみませんか?これも、大切な引き算です。一旦手放してみると、他のことに時間が使えることを嬉しく感じたり、「継続しなくては」という義務感から解放されて気持ちが楽になるはずです。その間に、最初に目標を立てたときのモチベーションを振り返って、また時期が来るまで待てば良いのです。今の自分がストレスフリーでいられる過ごし方をときには優先してみませんか?
5.ときには、“省エネモード”になる
頑張った自分のために「省エネ」で動く日や、思い切って“省エネウィーク”を設定してみてはいかがでしょう。毎日とはいきませんが、疲れそうなことはやらない(引き算)日を意識的につくってみましょう。
例えば、早めに帰宅して夜は22時には寝たりと、普段よりも自分を労わって、省エネモードでエネルギーを蓄える日を作ってみるのです。アフター5を楽しんで、お買い物を楽しんだり、映画や本からインプットを得るのもOK。リラックスできる時間を過ごして充電できれば、翌週から心機一転、フレッシュな気持ちで過ごせるはずです。
6.一緒に居て楽な人とだけお付き合いする
友達との集まりやメールのやりとりは、楽しくホッとするものですが、なかには自分にとってプラスにならないと感じている人間関係も。この機会に見直してみませんか?これも、有意義な引き算になることです。
大人の友達関係は、子供の頃と違って、距離感を選びやすい付き合い方でもあります。もし、会ってもあまり楽しめていない自分を自覚できたら、少し距離を置いてみてください。その代わり、本当に気が合う友達や、信頼できるパートナー、ときには自分だけの時間を大切に、心癒されるひとときを増やしていけば、充足感が得られていくはずです。
時間と、その人ができる事柄には、限りがあるものです。そして、「やるべきこと」が溜まっていく日常は、避けようがありません。でも、「やるべきこと」を抱え込みすぎて、心や体が、折れてしまっては、本末転倒です。
「引き算思考」は、自分のひとつひとつの選択や決断を見直すきっかけになるだけでなく、本当に優先したいことを見極めて、自分を大切にする方法でもあるのです。代えのきかないたった一人の自分だからこそ、ときには【引き算思考】で日々を見直して、しなやかな心を育んでください。エゴレジ力もアップします。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
この記事へのコメントはありません。