《健康》エゴレジとキラーストレス

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。

エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

🔴キラーストレス 

キラーストレスとは、2016年6月に放送された『NHKスペシャル』で使用された新しい造語。番組内では、ストレス反応の暴走により脳細胞や血管を破壊して、人を死に追い込むようなストレスを「キラーストレス」と呼び、脳科学や分子生理学の研究から、過剰なストレスが人を死に至らしめるような病気を引き起こす例を紹介していました。

キラーストレスとは、何か特定の一因子を指すものではありません。一つ一つの影響度はそれほど大きくないものの、多くのストレスが重なることでとても危険な状態に陥ってしまうものを示しています。私たちは、日々のライフイベントに適応するために心身のエネルギーをかなり使います。それは悲しい出来事だけでなく、喜ばしい出来事であったとしても心身に多大な影響を及ぼします。

また、ライフイベントの内容によって、ストレスを感じる強さが異なります。1990年代に大阪樟蔭女子大学の夏目誠教授が、ライフイベント法について研究報告したチェックリストがあります。このスコアは、日本の勤労者や主婦、大学生、男女を対象に実施していることから、国の風習や宗教、社会的役割、性別によってストレスと感じる得点が異なることを考えれば、我々はこのスコアを目安にセルフチェックを行うのが妥当だと言えるわけです。

ライフイベントストレスチェック http://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html

🔴「ストレス=悪」ではない!

最近の研究によれば、ストレスの経験度と健康障害度は、図のようなU字になることがわかっています。当然ながらストレスを経験しすぎると健康障害度も高まり不健康になりますが、逆にストレスを経験しなさ過ぎても不健康になり、人生満足度も低くなることがわかります。

つまり、「キラーストレス」が意味しているのはストレス経験度高にあたる一番右側の状態で発生するものなのです。

人が社会で生きている限り、ストレスを避け続けて生きることは難しいことです。まして、働く世代が会社でストレスをゼロにすることは不可能といっても過言ではありません。「ストレス=悪」ではなく、ストレスはなさすぎても負荷がかかりすぎても人生満足度が低下するというのは、興味深い真実です。

🔴ストレスの種類

ストレスは大きく2種類に分けられます。
「頑張るストレス」主に「体」のストレス反応が強くなります。

□負けず嫌いである
 □せっかち・短気
 □いつも時間に追われている
 □完璧主義
 □理想が高い
 □なんでも「やればできる」と思う

売り上げ目標を達成しなければいけない営業マンや、厳しい納入スケジュールを守らなければいけない工員、1日のうちに掃除や洗濯、食事の準備など複数の家事をこなさなければならない主婦には、この種類のストレスがかかっていることが多いと言われます。

こうした状況にさらされると、複数あるストレスホルモンの中で、アドレナリンなどが過剰分泌されます。そのアドレナリンが絶え間なく大量に分泌されると、血圧の上昇などさまざまな身体的反応につながります。

「我慢するストレス」主に「心」のストレス反応が強くなります。

□周囲への気配りを忘れない
 □怒りや悲しみの感情を内に秘めやすい
 □多少のことなら、ついガマンしてしまう
 □細かいことが気になる
 □几帳面
 □まわりから「いい人」だと思われたい

仕事上の不満,家族への不満、ママ友付き合い、SNSなど慢性的に継続するストレス反応は、本来ならばわれわれを守るための重要な仕組みを暴走させ「毒性ストレス」化します。

ネガティブな場面を思い出し、また同じようなことが起こるかもしれないと想像するーーー目の前の現実についてではなく、過去や未来についてあれこれ考えを巡らせてしまう状態を「マインド・ワンダリング(心の迷走)」と呼び、慢性的にストレス反応が起きているこうした状況をさらに悪化させるのです。

🔴キラーストレレスに克つ!

銀座泰明クリニック院長 茅野 分先生はキラーストレス対処法として、あえてネガティブな姿勢を心がけるようアドバイスされています。

1.頑張らない 「やればできる」と信じていると、もう限界であることをなかなか認められません。でも、頑張ってもできないことはいくらでもあります。頑張り過ぎかなって気づいたら、自分の心と体を守るためにも、「頑張ることをやめる」選択をしてみてください。

2.あきらめる 自分は「こうあるべき」とこだわりがあると、目の前に起きたことがストレッサーになりやすいのです。いい人になることや、大きな成果を出すことや、こうありたいという理想などを思い切って諦めることで、ストレスは一気に軽減します。

3.空気を読まない 日本人は円滑な人間関係を大事にするので、空気を読むことが必須と考えがちです。真面目な人ほど自分の気持ちを抑えることは増えてしまいます。面と向かって反対意見が言えないような場合は、せめて同意の発言はしないことにするだけでも気持ちは軽くなります。

もちろん、何度かご紹介しているように自身にあった対処(コーピング)法を活用することも大切です。

そもそもエゴレジは、日々のストレスに直面したとき、自我egoを調整しバランスをとって元の元気な自分に戻ろうとする力、ストレスを跳ね返す力です。「ちょっと無理をしてるのかなぁ」と感じたら、あえて1~3のようなネガティブな姿勢で臨む勇気も必要です。

人生満足度を向上させるためには、自らをストレッチさせるような『適度なストレス』は必要なのです。エゴレジを鍛え、そうした適度なストレスを楽しみ、うまくつきあえるようになることで、自身は一回り成長し、次のステージで活躍することができるのです。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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