新型コロナと共生するまで②|オミクロン株・変異株との付き合い

平川幸子
(所属する組織ではなく、個人として発信しています)

新型コロナが発生して、3回目の夏を迎えます。日本では2022年の初頭から感染力が強い「オミクロン株(BA.2)」が感染拡大し、さらに6月には派生型の(BA.5)への置き換わりが進み、爆発的な感染者が発生しています。

このコラムでも何度かご指摘していますが、新型コロナは病原性が変異し、その対応も刻々と変わります。ある時点で最善であった対策が、一定の時期を過ぎると最善でなくなる可能性があるため、その時々の状況を見極めて行動する必要があります。

無償の検査キット配布

今年の夏は、気温の変動も大きく、体調を崩される方も多いと思います。夏風邪かコロナか、不明な状態では心もとないので、検査はしたくなるところです。すでに薬局では検査キットは品薄状態で手に入りにくいようです。また、発熱外来等、新型コロナ患者を受け入れている医療機関やクリニックも大行列です。

この状況に対応するため、一部の自治体では発熱等の症状がある方やその濃厚接触者等を対象に検査キットを無償配布する取組が進められています。

(自治体独自の抗原定性検査キットの無償配布の取組)

  • 沖縄県:症状のある小学生・中学生・高校生及びその同居家族対象
  • 千葉県:軽度の症状のある方又は濃厚接触者
  • 神奈川県:発熱等の症状がある方(重症化リスクのない方)又は濃厚接触者

これらは自治体が自ら検討した制度ですが、国においても同様の仕組みを検討しているようです。万一発熱等の症状が出た場合や、濃厚接触者になった場合、お住まいの自治体の取組や、国の取組について、予め把握しておくとよいでしょう。

軽症でも医療機関に行くべきか

現在、専門家の中でも意見が分かれているのは、健康な若年層が新型コロナに罹患したと思ったら、軽症でも医療機関に行くべきか否か、ということです。感染症学会等からは「軽症の方は医療機関に来ないでください」と呼びかけられています。一方、自分が軽症かどうか一般の方に判断を委ねるのは無責任ではないか、という意見もあります。

私見ですが、もし自分が感染したかもしれないと思ったとき(最近接触した方にコロナ陽性者が出た・・)軽症ならば(38℃程度の発熱)、医療機関に行かないのではないか、と思います。なぜなら、今現在(2022年8月7日)発熱外来に行ったとしても、高齢者でもない一般人は薬の投薬を受けられず、解熱剤を投与されて、安静にしているしかない可能性が高いためです。

新型コロナの治療薬としては、当初、重症者に用いられる点滴薬や注射薬の開発が先行していましたが、2021年12月に「ラゲブリオ(MSD社)」が国内で初めての経口薬(飲み薬)として特例承認されたのが記憶に新しいところです。しかし、毎年何千万人分の薬が準備されている抗インフルエンザウイルス薬のように潤沢に製造・備蓄されているわけではありません。厚労省からは、医療機関に対して「重症化リスク因子を有する人(61歳以上、がん、重篤な心疾患等)」に投与するよう、要請がなされています[1]。つまり、それ以外の一般人(60歳以下、がん等の持病なし)には投与しないように、と周知されているわけで、それならばクリニックの待合室で苦しい思いをするよりは、自宅療養しておいた方がいいかもしれない、と思うに至っています。この後すぐ方針が変わる可能性もありますので、最新情報を確認してから対応する必要はあります。

また、もちろん、入院が必要なくらい重症化した場合、重症化するリスクである基礎疾患をお持ちの方などは受診するべきです。

自宅療養の準備

今からでもできる事としては、医療機関に行かずに対処療法に備えることです。

まずは自宅でもできる症状緩和の準備です。発熱や咽頭痛などは市販の解熱剤や総合感冒薬等で効果があることが指摘されています。解熱剤の中でも、アセトアミノフェン入りのもの(タイノール、カロナール等)が勧められています。すでに薬局でアセトアミノフェンが入手しにくくなっているため、市販の総合感冒薬なども候補に挙げられております(パブロン50、改源かぜカプセル等)。

個人的には感染症専門家である沖縄中部病院の高山義浩先生の発信情報がわかりやすく、参考になるのでお勧めです[2]

収束まで道のり

自宅で検査をして、市販薬で対応して自宅療養する、というスタイルが身に付いたら、新型コロナがインフルエンザや風邪のように社会に定着していくのに近づいていると考えられています。

しかし、現時点では依然として高齢者にとっては重症リスクが高い、というのが、インフルエンザとの違いです。そして、この2年半、日本人は真面目に感染対策をしてきていた裏返しで、新型コロナ(オミクロン株)の免疫を有している方が少なく、まだ流行しやすい状況にある、ということでもあります。ここで急に対策をやめると、急激に感染者が増え、重症化しても入院できない方がでてしまいます。

繰り返しになりますが、オミクロン株がインフルエンザ並みの死亡数に収まっているのは、①ワクチン接種の効果、②国民の公衆衛生対応、③医療現場の対応、という複数の要因が組み合わされて実現された結果である点を認識する必要があるでしょう。

なお、直近の感染者・死亡者等のデータを含めて、以下のサイトで説明しておりますので、合わせてご覧ください。

(2022年8月7日時点の情報を基に記載しています)

 

新型コロナ(COVID-19)収束シナリオ 第4回:感染症の状況に適応した措置のための制度と技術活用を(https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20220803.html

[1] 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(ラゲブリオ®カプセル)の医療機関及び薬局への配分について(別紙及び質疑応答集の修正)https://www.mhlw.go.jp/content/000959636.pdf

[2] 「コロナ感染した高齢者の見守りとケア」、yahooニュース、高山義浩、2022年7月31日(https://news.yahoo.co.jp/byline/takayamayoshihiro/20220731-00308139

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