【専門家に聞いてみました!!】第2回

平川さんは政府の「コロナ対策本部」にもいらっしゃいました!私の大学院の時の同級生です。博士課程にも進学してちゃんとドクターの学位も持っている優秀な大人女子です!!

プロフィールは、株式会社三菱総合研究所 ヘルスケア・ウェルネス事業本部 主任研究員(元・内閣官房新型インフルエンザ等対策室内閣参事官)

<新型コロナはこれからどうなるのか、いつまでこの生活が続くのか>

11月に入り感染者が急増して、政府が推奨してきたGoToトラベル、GoToイートも方針転換されるなど、心配な状況が続いています。この先新型コロナはどうなるのか、いつまでこの状態が続くのか、というのが今、多くの方が関心を持っていることだと思います。

新型コロナはやっぱり弱毒化しているのでは?心配しすぎなのではないか?

前回(8月24日)の投稿の時に、日本での新型コロナの致死率(感染した方の死亡率)は大幅に低下している、というご説明をしました。全年齢層を平均すると、1~1.5%程度まで低下しているようです。この結果を以て、やはり「弱毒性だった」という方がいらっしゃいます。が、果たしてそうでしょうか。
現在、世界一の感染国となっているアメリカは感染者数1,223万人、死亡者数は約25万人(致死率2.1%)です。ロックダウンを再開した欧州でもフランスの感染者数は219万人、死亡者数約4.9万人(致死率2.2%)です。
同統計での日本の感染者数13万人、死亡者数約2千人(致死率1.5%)。
これを見ると、現在、日本で死亡者が2千人にとどまっているのは、感染者数が少ないためで、致死率は欧米とそれほど大きな違いはないと言えそうです。感染拡大を防止できているのは、まさに「自粛」やマスクなどの日本人の行動変容などが功を奏しているのではないかと思われます。アジア全般に感染者が少ないという現実もありますので、その要因はまだ不明ですが。
ちなみに日本では季節性インフルエンザの患者は、毎年1,000万人程度と考えられています。新型コロナは、無症状の人からも感染することから、インフルエンザよりも感染力が強いと考えられています。仮に、通常の生活に戻り1,000万人が感染し、その1.0~1.5%の約10~15万人が死亡するということが計算上は想定されます。
やはりもう少し、この自粛生活を続けなければならいのではないでしょうか。
(感染者数、死者数はいずれもJohnsHopkins大学の数値※1。2020年11月23日現在)

□海外のように日本もロックダウンするのか?

一方で、緊急事態宣言が発出された4月~5月の時点と比べると、新型コロナの特徴がだんだんわかってきました。緊急事態宣言では、多くの業態が休業し、街からは人影が減りました。
今の様々な研究から、感染が拡大する場面は特定されてきており、全面的な休業ではなく、特定のエリアや業種への対策が有効であることが確認されています。個人的には業種ごとの対策を強化することで、緊急事態宣言なしで乗り切ることを期待しています。感染リスクが高い場面やその対策については、以下のようなことが確認されています。
 飲食店:狭い空間に大人数が滞在すると、感染リスクが高まる。回し飲みや箸の共用は厳禁。
 例えば5人以上の飲食では大声になり飛まつが飛びやすくなるため、感染リスクが高まる。
 衝立等の感染対策は、飛まつ感染防止に一定の効果がある。(シミュレーションで検証中)
 職場:業務中よりは、マスクを外す喫煙や、ランチの場、休憩室、更衣室等での感染リスクが高まる。居場所が切り替わることで、気の緩みや環境の変化等もあり、感染している事例が確認されている。テレワークで出勤しない人が減ることは確実に有効。
 映画館・劇場等:マスクを着用し、会話が少ない劇場や映画館等での感染拡大事例は少ない。
ただし着席しているときではなく、売店やトイレ等、休憩時間に密集する場面での感染例が推察されている。イベント等でも同様、着席時ではなく、人が密集する特定の場所・場面での感染対策が必要。
 スーパー、食料品店:時間帯で顧客の数を平準化するよう、混雑している時間帯・空いている時間帯の情報を顧客に提供。平準化することで感染リスクが削減される。

□この生活をどのくらい続けなければならないのか?

ファイザー社やモデルナ社などの海外のワクチンの治験結果が発表され、緊急承認等の動きがあります。これらは喜ばしいニュースだと思います。しかしいずれも接種後、数か月(3か月程度)の結果であり、持続的な有効性や安全性に関しては、今後の検証が待たれます。特に新型コロナウイルスは、感染者でも抗体の持続性が明らかになっていませんので、ワクチンによりどの程度の効果が期待されるかは、もう少し様子を見る必要があるでしょう。
少なくともあと1年は現在のように、地域での感染が拡大したら様子をみて行動を縮小し、感染者が落ち着いてきたら、行動を再開する、等を繰り返す、注意深い行動が必要とされるでしょう。
先日、コロンビア大学から、社会活動の時間帯の分離や活動量の平準化をすることで、ロックダウン等の強い制限をせずに感染リスクを削減できることをシミュレーションで確認した、という研究が発表されました※2。まさに日本で実践されている「自粛」の効果が一部検証されたといえるでしょう。たとえば、スーパーマーケットでは、リスクのある個人(高齢者など)が買い物をする日時を指定することや、複数のスーパーマーケットの顧客数のバランスを取るために入場制限し、他の店舗に誘導すること等が挙げられています。

□治療薬は信頼できるのか?

なお、現在、日本で承認されている治療薬はレムデシビル(抗ウイルス薬)、デキサメタゾン(ステロイド剤)の2種類ですが、先日、WHOからレムデシビルの使用を推奨しない、という発言がありました。※3
これについては国立国際医療センターの忽那先生から、「重症者前に早期投与すれば効果が期待できる」こと、今後更なる検証が待たれること、が解説されています。※4
治療薬、ワクチンの開発を待ちつつ、楽しみを見つけながら「ウィズコロナ」の生活を送りましょう。

 

※1:JHU CSSE「2019 Novel Coronavirus COVID-19 (2019-nCoV) Data Repository by Johns Hopkins CSSE」地域別・時点別の感染者(Confirmed)・死亡者(Deaths)データ
(https://github.com/CSSEGISandData/COVID-19/tree/master/csse_covid_19_data/csse_covid_19_time_series(閲覧日:2020年11月23日)

※2:Network interventions for managing the COVID-19 pandemic and sustaining economy(https://www.pnas.org/content/early/2020/11/10/2014297117

※3:WHOによる新型コロナウイルス感染症の治療ガイダンス:

https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3379

※4:本当にレムデシビルは新型コロナに効かないのか WHOの推奨の背景は?(忽那賢志)

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201123-00209253/

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