《和文化》浮世絵で聴く日本情緒

こんにちは!
笛の福原百麗(ふくはら ひゃくれい・藤本博子)です。

前回は、舞台の隠れ小部屋、黒御簾、そこで演奏される下座音楽について書きました。

下座音楽は舞台の雰囲気づくりにも非常に重要な役割を担っています。

他にも歌舞伎や日本舞踊の舞台には効果を出すための様々な道具類もありますが、当然、背景画などのビジュアル演出は絶対欠かせません。

私は小さい頃ピアノを習っていたのですが、小学校5年生から大人になっても師事していた先生は、どのように曲をイメージして表現するかということに様々なアドバイスを下さいました。

例えば、

ピアノ曲で有名なショパン。

「子犬のワルツ」とかノクターンとか、素敵な曲が沢山ありますよね。
中には少々暗いイメージの曲もありますが、ある時先生が私に言いました。

「ショパンが生まれ育ったポーランドがどんな所かイメージできる?」

もちろんポーランドなんて行ったこともないので、北の寒い国としか分かりません。
寒さだって色々ある。ポーランドの冬と私が小さい頃住んでいた新潟のベタ雪の冬とは全く違う世界だというのです。

先生は暗いショパンの曲を表現するために、楽譜の余白の部分に絵を描いてみたらとアドバイス下さいました。ショパンの生まれ育ったポーランドの風景を調べて自分で絵を描き、それを眺めながら曲を弾きました。

曲が生まれた見知らぬ土地の季節、風、空気、その体感・感覚なくして音楽の表現はできないんだとその時はじめて認識したのでした。

では、日本人である私たちは日本のことは容易にイメージできて、音楽表現も簡単にできるのでしょうか?

いえいえ、そう簡単なものじゃありません。

能、狂言、長唄、端唄、小唄・・・現代に生きる私たちには、西洋の音楽・芸術の方が身近ですよね。

日本人であるのに音感やリズム感はほとんど西洋の感覚になってしまっています。
篠笛奏者でも全くフルートと同じ感覚え演奏されてる方も沢山いらっしゃいます。
目をつぶって聞くと篠笛なのかフルートなのか区別がつかないことも多々あります。
それでは和楽器を聞かせる意味がなくなってしまいます。

日本の音楽、芸能を嗜む時には、昔に遡ってみる必要があります。
その良い材料の一つが、浮世絵です。

江戸の風情を描かせたら右に出る者はいない、浮世絵の巨匠、歌川広重。
東海道五十三次で有名ですが、晩年「名所江戸百景」という江戸の風情を描いた傑作のシリーズがあります。
今は丁度梅雨のシーズンですが、シリーズ全120作のうち、雨を描いたのはたった4作。
そのうちの1作が、かの有名な「大はしあたけの夕立」。
あのゴッホが刺激を受けて模写したことでも知られる、土砂降りの橋の上を小走りで走る人々が描かれているものです。

ここにあげたのは「昌平橋聖堂神田川」。今のお茶の水駅周辺です。

さらっとした雨は静かな感じがします。
遠くの坂を登る人々も急ぐ様子もなく、ゆっくり歩んでいます。

何か音は聞こえてくるでしょうか?
もしここに何か効果音を入れるとしたら、笛か太鼓か、はたまた何か小道具を使うか。
(大体どの場面で、どの効果の時に何の楽器を入れるか決まってますが)

そのような想像をすると、色々な音が聞こえてくる気がします。

これが和楽器の独特な楽しみ、味わい。
風情を感じさせる画風が広重の特徴であり、それは長唄や端唄などの和の音楽にも通ずるものです。

藤本博子(福原百麗)

伊藤忠商事を皮切りに、転職8回、事務職から営業、大道芸人まで20の職種を経験。16年間、人材派遣・紹介会社にて営業、転職コンサルタントとして勤務後、独立。

これまでのべ1万人以上の就業・転職サポートを行い、2013年には人材大手転職サイト主催のスカウトコンテストにて1位(部門別)獲得。

現在、民間委託の求職者支援訓練指定校(セラピスト養成)にて就職支援講座(自己分析、就活実技、顧客サービス等)及びキャリアカウンセリングを担当。現在、京都造形芸術大学で芸術学を学びながら、アートを取り入れた「じぶん分解ワークショップ」を開発。訓練校やセミナー等で広く活用している。

一方、長唄囃子福原流笛方として演奏活動の他、洋楽(フルート)との比較やビジネスの視点から見た指導は非常にユニーク。

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