《健康》「メンタフダイアリー」のすすめ

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

「女性のエンパワーメント推進と社会活性化」を目的としているHAPPY WOMAN実行委員会は、エーザイ㈱との共同で、20~59歳の働く女性に新型コロナウイルス感染拡大前・後に調査を実施。感染拡大前は“仕事・妻・母親”など役割の多さが「疲れ」を感じる主な原因であったのに対し、感染拡大後には、“経済・健康・将来”への不安感による「こころの疲れ」が加わり、4人に3人が疲れの増加を感じるという結果を報告しています。

※HAPPY WOMAN実行委員会/新型コロナウイルス感染拡大「後」の調査(2020年4月)

『40代から伸びる人  40代で止まる人』(きずな出版)の著者、ライフバランスマネジメント研究所代表/帝京平成大学現代ライフ学部教授の渡部卓(わたなべ・たかし)先生は「メンタルヘルスを損ねて働けなくなってしまうのは、70歳まで働く時代に最大級のリスク要因となる」と懸念されています。「現役70歳時代に突入するからこそ、精神面の健康を保つスキルは、ビジネスパーソンの生命線になってくる」という指摘は軽視できないものです。

ストレスの多い現代社会では、まず何よりもストレス耐性の高さが強みとなリます。そんなストレスに強い人のことを「メンタフ」(メンタルタフネスなひと)と渡部先生は名付けられました。今回は、渡部先生が「メンタフ」になれる簡単な方法として提唱されている「メンタフダイアリー」の話をご紹介します。

🔴「メンタフダイアリー」の手順

ストレスには様々な種類がありますが、その受け止め方はひとつではありません、渡部先生によれば「例えば、尊敬できる上司から叱られた時は、一時的にはストレスを感じて落ち込むものの、すぐにその反省を活かして行動するでしょう。しかし、嫌いな上司から叱られた時には、多くの人が怒りや苦痛を感じたまま素直に反省できず、不眠やうつといったストレスの症状が出てしまうもの」です。このような怒りや不安について、日記のようなメモで残しておくのが『メンタフダイアリー』です。

ダイアリーの手順は簡単です。基本的には感情の変化の記録です。
「ストレスを感じる出来事が起きたら、筆記具を用意します。使い慣れてるノートや手帳、あるいはスマホでもOK!
準備できたら、次のように進めてください。

  1. タイトルをつける
    ストレスを感じた出来事にタイトルをつけます。
    『A部長の嫌味にまいった』のように簡単な一行でかまいません。日付も記しておきます。
  2. 状況を記述する
    簡単で構わないので、どんなストレスだったのかの状況を書き出します。
    『また今月も営業目標に未達だった。今日の営業会議でA部長に、○○君はのん気でうらやましい、少しは営業成績に本気になってくれよ。と嫌味を言われた』など。
    ここでは客観事実だけを記述します。メモは2~3行でよいです。
  3. 感情を3つのワードで表し採点する
    ここが最も大事なポイント。その出来事が起きた時に湧き上がった自分の感情を、3つ以内で書き出します。そして、その感情の度合いを10段階(あるいは100段階)で採点して記入します。
    例えば、『怒り=8点、落ち込み=7点、不安=7点』とか、『驚き20、むなしさ40、悲しみ40』といった具合に、悩みを整理・分解し感情を数値化します。難しく考えずに、主観で点数をつけてください。メンタフダイアリーの付け方は、これで一旦終了です。
  4. メンタフダイアリーを見直し修正する
    数日~1週間程度過ぎたら、第三者になったような冷静な気持ちでメンタフダイアリーを見直してみます。そこで自分が抱いた気持ち以外の考え方がないかどうかに、思いを巡らしてみます。上司の立場で考えてみるような、自分主語から離れた発想が効果的です。
    落としどころを探るのも、一方向に傾いた気持ちを整えるのに役立ちます。そして、自分が当時つけた3つの感情の数値を、赤のボールペンで修正してみます。大抵の場合、ネガティブな感情のスコアが7~8割程度に改善しているはずです。
  5. 修正した理由を記述する
    なぜ最終的にその点数になったのか、修正した理由を1~2行で簡単に記述します。
    例えば、『A部長自身もあの嫌味発言を気にしたのか、その後は何も言ってこない。あんな発言を繰り返していたらハラスメントと言われる時代なのを自覚しているのかもしれない。まあ、そんなに気にする必要は無い。こっちが損するだけだ』といったように・・。

各項目に沿って考えを綴っていくだけで、自然と気持ちの整理がついていくという「心理学の筆記療法を応用したメソッドです。「他人に見せるわけではない、真情の吐露なのだから、言葉を飾ったり、本音を偽ったりする必要はない。感じた通りに綴っていくのがダイアリーの効果を高めるコツ」だそうです。「文字に書き出すだけで、ストレスがやわらぎ、気持ちが落ち着きやすくなる」と渡部先生は効果を説明されています。

🔴ストレスの「原因」ではなく「捉え方」

メンタフダイアリーがストレスを軽減させるメカニズムについて、渡部先生は—-

「辛い出来事があった時、時が過ぎれば忘れるという、いわゆる『時薬(ときぐすり)』を頼りにする人も多いと思います。時薬は失恋などの単発のストレスにはよく効きますが、職場での失敗など比較的繰り返し発生するネガティブなストレスに対しては、処理が追いつかないのが実際のところです。つまり、メンタフになるためにはまず、ストレスの受け止め方の癖自体を変えることが必要。ある種のストレスに対しての捉え方が客観的であるということが、『ストレスに強いメンタルタフネスな人たち』の心理構造なのです。

ストレスを客観的に受け止められるようになるためには、怒りやうつといった『ストレスを感じた結果の感情』にばかり目を向けず、『ストレスを感じた事象』について自分の解釈が合理的かどうかをチェックする習慣が大切です。このチェックの作業こそが『メンタフダイアリー』なのです。ストレスを感じた出来事を単純化して記録に残すことで、ストレスの捉え方の癖を改善できます」と解説されています。

メンタフダイアリーはストックして時折見直しことが大事です。だから、スマホなら持ち歩いていることが多いので、思ったタイミングですぐに書き込めて、習慣化しやすいかもしれません。過去の悩みを読み返して今の悩みを相対化できる点でも、スマホは便利です。

※渡部先生の「メンタフダイアリー」は、心のつぶやきを日記に書いて、メンタフ(メンタルタフネス=ストレス耐性)をアップさせるヒントとして、日本実業出版社から書籍として出版もされています。

メンタフダイアリーは習慣付けることで、脳が自動的にストレスを溜め込むような解釈や認知を修正するようになってくるそうです。一度自動補正が効くようになれば、メンタフダイアリーをやめてしまってもそのメンタフ効果は持続するとされています。

『ストレスに感じた出来事をメモしておくなんて、読み返した時にますます落ち込んでしまうのでは?』と疑問に思われる方がほとんどでしょう。しかし、メンタフダイアリーを習慣づけて実行していくと、ストレスが軽減することが国際的な調査や研究でもわかっています。コーチングやカウンセリングでメンタフダイアリーを活用する事例も増えてきています。

ウィズコロナ、ポストコロナをしなやかに生きるために必要なスキルの一つは、想定外の困難や大きな失敗に直面しても「普段の心の機能を維持させること」です。エゴ・レジリエンス(略称エゴレジ)もその一つ。エゴレジは、日々のストレスに直面してメゲたとき、自我egoを調整しバランスをとって元の元気な自分、少しでも気分のいい感じの自分に戻ろうとする力です。渡部先生が独自に考案されたメンタルトレーニングツール「メンタフダイアリー」を活用することであなたのエゴレジもアップします。「日記の一種だから、自分一人ですぐに始められる」のが魅力です。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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